ローラン・カビラ

ローラン＝デジレ・カビラ：コンゴ民主共和国の激動の歴史を体現した大統領

ローラン＝デジレ・カビラ（1939年11月27日 - 2001年1月16日）は、コンゴ民主共和国の政治家であり、同国の大統領（第3代）を務めました。彼の生涯は、コンゴの独立、内戦、そして国家再建の試みと深く結びついています。

生い立ちと初期の活動

カビラは、ベルギー領コンゴのカタンガ州（現在のリカシ）で、ルバ族の父とルンダ族の母の間に生まれました。フランスで政治哲学を学び、ダルエスサラーム大学でも学んでいます。

コンゴが1960年に独立すると、コンゴ動乱が勃発。カビラは、パトリス・ルムンバを支持するカタンガ・ルバ人協会の青年団幹部として活動し、モイーズ・チョンベと戦いました。ルムンバが失脚後、カビラは北部カタンガの情報相となります。その後、ルムンバ主義組織を立ち上げ、東部コンゴでのオルグ活動に従事しました。

モブツ政権との対峙とゲバラとの出会い

1965年、カビラはチェ・ゲバラから短期間の支援を受けました。ゲバラはキューバ方式の革命を計画しコンゴに現れましたが、カビラとの協力関係は成立せず、革命は失敗に終わりました。ゲバラはカビラに対し、革命家としての資質に疑問を持ったとされています。

1967年、カビラは南キヴ州の山岳地帯に拠点を移し、人民革命党 (PRP) を結成しました。中国の支援を受け、毛沢東主義に傾倒し、南キヴに分離独立国家を樹立。しかし、この社会主義国家は集団農場や鉱物資源の密輸に依存し、安定した運営はできませんでした。

1970年代後半から1980年代前半にかけて、カビラは着実に富を蓄え、ダルエスサラームやカンパラに家を建てました。カンパラでは、後の大統領ヨウェリ・ムセベニと会っていたと伝えられています。ムセベニとタンザニア大統領ジュリウス・ニエレレは、後にルワンダ大統領となるポール・カガメをカビラに紹介。これらの人脈が、後の第一次コンゴ戦争におけるルワンダとウガンダの介入につながりました。

1988年、PRP国家は消滅し、カビラも姿を消しました。

コンゴ戦争と大統領就任

1996年10月、第一次コンゴ戦争が勃発。カビラは、フツの勢力を追ってツチの軍勢を率いてコンゴに帰還しました。ブルンジ、ウガンダ、ルワンダのツチ政権の支援を受け、コンゴ・ザイール解放民主勢力連合 (AFDL) を率いて反乱を開始。

1997年半ばまでに、カビラはモブツ・セセ・セコを国外追放し、5月17日にルブンバシで勝利を宣言。国名をザイールからコンゴ民主共和国に戻し、大統領に就任しました。

大統領としての政策と第二次コンゴ戦争

大統領就任後、カビラは資本主義と集団主義を混合した政策を推進しました。当初、西側諸国の一部は彼を「新世代のアフリカの指導者」と評価しましたが、モブツ政権の情報相の助言を受け個人崇拝を準備したため、「もう一人のモブツ」と批判されるようにもなりました。

1998年、かつての同盟国であったウガンダとルワンダがカビラに敵対し、コンゴ民主連合 (RCD) を支援。カビラは南部アフリカ開発共同体 (SADC) に軍事介入を要請し、ジンバブエ、ナミビア、アンゴラとともに第二次コンゴ戦争を戦いました。この戦争によって、コンゴは北部はウガンダ、東部はルワンダ、南部と西部はカビラ政権が支配するという分断状態に陥りました。

1999年7月、和平交渉が行われ、外国軍の撤退で合意しました。

暗殺とその後

2001年1月16日、カビラは護衛兵によって暗殺されました。犯人はその場で射殺され、カビラはジンバブエで治療を受けましたが、死亡が確認されました。カビラの死後、息子のジョゼフ・カビラが大統領に就任しました。

特別軍事法廷による捜査の結果、カビラの暗殺に関与したとして135人が裁判にかけられ、26人に死刑判決が下されました。

ローラン＝デジレ・カビラの生涯は、コンゴの独立から内戦、そして国家再建の試みという激動の時代を象徴しています。彼の死後も、コンゴは政治的混乱と紛争に苦しみましたが、彼の遺志は、コンゴの未来を担う人々に受け継がれています。

もう一度検索