ザプルーダー・フィルム

ザプルーダー・フィルム：ケネディ暗殺の記録

ザプルーダー・フィルムは、1963年11月22日にエイブラハム・ザプルーダーが撮影した、ジョン・F・ケネディ大統領暗殺の瞬間を捉えた8mmフィルムです。このフィルムは、事件を最も鮮明に記録した映像として、歴史的に非常に重要な意味を持っています。

撮影の経緯

ザプルーダーは、ダラスのエルム通りで婦人服メーカーを経営していました。暗殺当日、彼は大統領の車列を撮影するため、エルム通りに面したパーゴラの上に立ちました。使用したカメラはベル&ハウエルの「ズーマチック」で、フィルムはコダックの「コダクロームII 8」でした。フィルムは、車列がヒューストン通りからエルム通りへ曲がり、陸橋下へ消えるまでを捉えています。特に、ケネディ大統領が頭部に致命的な銃撃を受けた瞬間が鮮明に記録されている点が、このフィルムの価値を高めています。

歴史

事件当日、ザプルーダーはフィルムのコピーを3本作製し、1本を自身で、2本をシークレットサービスに提出しました。その後、『ライフ』誌がフィルムの権利を15万ドルで購入し、分割払いでザプルーダーに支払われました。ザプルーダーはその一部を、オズワルドに殺害された警官の遺族に寄付しています。

『ライフ』誌は、フィルムの一部をモノクロやカラー写真として誌上で公開しました。1964年には、ウォーレン委員会がフィルムから158コマをモノクロ写真として報告書に掲載しましたが、一部コマが欠損していることも判明しました。

1966年、『ライフ』の記者ジョサイア・トンプソンが、フィルムの重要な部分を掲載許可を求めたものの拒否されたため、詳細な木炭画とオリジナルで失われたコマの複写写真を掲載した書籍を出版しました。タイム社は著作権侵害で訴訟を起こしましたが、裁判所はフェアユースの法理に基づき、著作権侵害には当たらないとの判断を下しました。

1969年、ジム・ギャリソン地方検事が暗殺陰謀に関与したとしてクレイ・ショーを起訴した際、法廷で使用するため、タイム社にフィルムのコピーの提出が命じられました。この公判でフィルムが動画として初めて公開され、多くのコピーが無断で作成、拡散されました。

1975年には、ABCの深夜番組でフィルムが初めてテレビ放映され、世間に大きな衝撃を与えました。これをきっかけに事件の再調査が行われ、「アメリカ合衆国下院暗殺特別調査委員会」は、ケネディ暗殺が「陰謀によるものだった可能性がある」と結論付けました。

ザプルーダー家はタイム社とフィルムの著作権を巡って争いましたが、和解により権利を取り戻し、1978年にフィルム自体をアメリカ国立公文書[[記録管理局]]に譲渡しました。1999年には、政府がフィルムをザプルーダー家から1600万ドルで購入しました。

現在、フィルムの権利は「ディーリー・プラザ6階博物館」が管理しています。

フィルムの信頼性

ザプルーダー・フィルム以外にも、暗殺の瞬間を捉えたフィルムや写真が存在しますが、フィルムに特殊効果や捏造が加えられているという主張も存在します。しかし、1998年に国立公文書記録管理局がコダックの技術者チームに調査させた結果、フィルムは「カメラで撮影されたままのオリジナル」であり、改変の痕跡は見られないという結論に至りました。

メディアへの影響

ザプルーダー・フィルムは、ウォーレン委員会の報告に対する世間の信用を揺るがし、暗殺が単独犯によるものではなく、複数の人間が関与したという見方を広めるきっかけとなりました。また、オリバー・ストーン監督の映画『JFK』をはじめ、多くの映画作品やメディアで取り上げられています。

フィルムに収められた暴力や衝撃性は、1970年代のアメリカ映画における新しい暴力表現の一因になったとも言われています。

ザプルーダー・フィルムは、ケネディ大統領暗殺事件の真相を解明するための重要な資料として、今後も保存され、研究されていくことでしょう。

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