ザルツブルク市街の歴史地区

ザルツブルク歴史地区：塩の道から音楽の都へ

オーストリア、ザルツブルク州の州都ザルツブルク。その歴史地区は、古くから塩の交易で栄え、中世には宗教都市として発展を遂げた、奥深い歴史を持つ都市です。1996年には、ウィーンのシェーンブルン宮殿と庭園群に次いで、オーストリアで2番目に世界遺産に登録されました。

塩の道と司教都市

紀元前から岩塩の交易で栄えたザルツブルクは、「ザルツ（塩）ブルク（城）」の名の通り、塩の生産と交易で豊かな歴史を築きました。中世において塩は「白い黄金」と呼ばれるほど貴重な資源であり、ザルツブルクの繁栄を支える重要な柱となりました。

696年、聖ルーペルトが聖ペーター僧院教会を創設したことがザルツブルクの都市としての歴史の始まりとされています。その後、8世紀には大聖堂が建設され、9世紀には司教座が置かれると、ザルツブルクは宗教都市としてさらに発展しました。ザルツァッハ川左岸の旧市街には、教会や歴史的建造物が立ち並び、「北のローマ」や「北のフィレンツェ」と呼ばれるまでに至ります。

13世紀後半からは大司教が世俗の領主を兼ねるようになり、宗教と政治の両面から都市を支配しました。市民たちは、商品中継地としての役割を嫌うこともありましたが、15世紀以降はバロック様式による都市整備が進み、現在の美しい街並みが形成されていきました。

歴史的建造物群

ザルツブルク歴史地区には、数多くの歴史的建造物が残されています。

ザルツブルク大聖堂: 774年に創建された大聖堂は、幾度かの改築を経て、現在のバロック様式の大聖堂は1628年に完成しました。壮麗な内装とヨーロッパ最大級のパイプオルガンが有名で、毎年ザルツブルク音楽祭のオープニングとなる『イェーダーマン』の上演会場となっています。
ホーエンザルツブルク城: 1077年、叙任権闘争の最中に建設された堅固な城塞です。ザルツブルクの町を見下ろすようにそびえ立ち、内部にはブルク博物館が設置されています。
聖ペーター僧院教会: 696年に聖ルーペルトが開いた、ドイツ語圏最古のベネディクト派修道院です。ロマネスク、ゴシック、バロック様式の建築様式が混在し、美しい内装と歴史的な墓地が魅力です。教会墓地には、ハイドンの弟であるミヒャエル・ハイドンの墓もあります。
ノンベルク修道院: ドイツ語圏最古の女子修道院で、1150年の壁画などが残されています。
レジデンツ: 歴代の大司教が居住し、政治を行った宮殿です。現在、ザルツブルク州立博物館として利用されており、ヨーロッパの美術品などが展示されています。モーツァルトが幼少期に音楽会を開催した場所としても知られています。
ミラベル宮殿: 大司教の愛人ザロメ・アルトのために建てられた宮殿で、現在はザルツブルク市長公邸です。美しいミラベル庭園があり、映画『サウンド・オブ・ミュージック』のロケ地として有名です。
* ヘルブルン宮殿: 大司教の夏の離宮で、いたるところに水の仕掛けが施された庭園が有名です。

モーツァルトと音楽の都

ザルツブルクは、モーツァルトの生誕地としても知られています。モーツァルト生家はゲトライデ通りにあり、現在はモーツァルト記念館となっています。モーツァルトの生涯と作品に関連する貴重な資料が展示されており、ザルツブルクが音楽の都として発展してきた歴史を感じることができます。モーツァルトゆかりの場所としては、レジデンツやミラベル宮殿も挙げられます。ザルツブルク音楽祭は世界的に有名な音楽イベントです。

中世の街並み

ザルツブルクの歴史地区は、中世の街並みをよく残しています。ゲトライデ通り、ユーデンガッセなど、中世の建物が立ち並ぶ細い路地は、独特の雰囲気を醸し出しています。これらの路地には、さまざまな建築様式が混在しており、歴史の深さを物語っています。

アクセス

ザルツブルクには、ウィーンからの飛行機で約1時間ほどでアクセスできます。ザルツブルク空港から市内へはバスが出ています。

ザルツブルク歴史地区は、塩の交易から始まった歴史、宗教都市としての発展、そしてモーツァルトを生んだ音楽の都としての側面など、多様な魅力を備えた世界遺産です。訪れる際には、歴史的な建造物だけでなく、中世の街並みや豊かな自然にも注目してみてください。

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