ザルビンツィ文化

ザルビンツィ文化：東ヨーロッパ古代社会の謎に迫る

ザルビンツィ文化は、紀元前3世紀から1世紀頃にかけて、現在のウクライナ北部とベラルーシ南部、ドニエプル川上流域に栄えた古代文化です。ウクライナのチェルカースィ州ザルービネツィ村の遺跡発掘にちなんで名付けられました。この文化は、同時期に西方に栄えたプシェヴォルスク文化と強い類似性を示し、いわばその東方版とも考えられています。地理的分布や文化様式から、ザルビンツィ文化はスラヴ人の祖先と関連付けられることが多いのです。

プシェヴォルスク文化との関連と独自性

ザルビンツィ文化は、プシェヴォルスク文化と多くの共通点を持っています。しかし、単なる複製ではなく、独自の進化を遂げました。例えば、集落の形態は多様で、防御施設を持たない開けた集落から、丘の上に築かれた防御強化された集落まで見られます。後者は、東方の遊牧民であるサルマタイ人の襲撃に対応した結果だと考えられています。集落は、10～15戸ほどの小規模な家屋から構成され、各戸の面積は12～16平方メートルほどでした。

経済と生活

ザルビンツィ文化の経済は、大規模な混合農業に依存していました。小麦、大麦、ライ麦などの穀物に加え、エンドウ豆、レンズ豆などの豆類、麻や亜麻なども栽培していました。狩猟も盛んに行われ、獲物の皮は黒海沿岸の都市部との交易に使われていたようです。この経済構造は、先行するチェルノレス文化から受け継がれたものです。

埋葬と信仰

ザルビンツィ文化の人々は火葬を行い、初期には遺灰を地面に直接埋葬していました。その後、骨壺を用いる埋葬方法が一般的になりました。信仰体系についてはまだ不明な点が多いものの、周辺文化との交流を通して、様々な信仰が混在していた可能性が示唆されています。

周辺文化との交流

ザルビンツィ文化は、周辺の様々な文化と交流していました。南方のステップ地帯に住んでいたスキタイ人やサルマタイ人の影響、さらには北方の森林地帯に住んでいたネウロイ人の影響も確認されています。特にネウロイ人の文化と関連付けられるミログラード文化（前7世紀～1世紀の東バルト系文化）とのつながりは注目すべき点です。これらの交流を通して、ザルビンツィ文化は独自の文化を形成していったと考えられます。

謎多き古代社会

500を超える集落や墓地が発見されているにもかかわらず、ザルビンツィ文化の全貌はまだ解明されていません。今後の発掘調査や研究を通して、その社会構造、生活様式、信仰、周辺文化との関係などがさらに明らかになることが期待されます。この文化の研究は、東ヨーロッパの古代史、特にスラヴ人の起源や初期社会の理解に大きく貢献するでしょう。

参考文献

J. P. Mallory and D. Q. Adams, Encyclopedia of Indo-European Culture, Fitzroy Dearborn Publishers, London and Chicago, 1997.

関連項目

農耕スキタイ
東スラヴ人
チェルノレス文化
プシェヴォルスク文化
ヴィェルバルク文化
* チェルニャコヴォ文化

もう一度検索