チェルニャコヴォ文化

チェルニャヒーウ文化

チェルニャヒーウ文化は、2世紀から5世紀にかけて、現在のウクライナ、モルドバ、ルーマニア、ポーランド南部にかけて広がっていた文化です。キエフ州のチェルニャヒーウ村で発見された遺跡にちなんで名付けられました。数千もの遺跡が発掘されており、当時の人々の生活や文化を知る上で重要な手がかりとなっています。

文化の特徴

チェルニャヒーウ文化の集落は、規模が様々で、平均的な集落は25戸から45戸程度の住居で構成されていました。住居の様式は、半地下式、地上式（編み垣構造に漆喰を使用）、石造りの3種類に大きく分けられます。

時代が進むにつれて、北部森林地帯を中心に、木の杭を壁材の骨格とするスラヴ人住居の様式が広まりました。大型の倉庫も建てられ、スペルト小麦や大麦などの穀物が貯蔵されました。各住居には、土を固めて作ったかまどが設置されていました。

集落は、城塞のような構造を持つものは少なく、開けた構造が一般的でした。一部に残った城塞も、以前の時代よりも堅固な造りになっていました。

主な家畜は牛で、羊、豚、馬、ロバなども飼育されていました。古代ローマ帝国をはじめとする各地との交易も盛んで、貨幣、陶器、琥珀製品、大理石、ガラス製のビーズ細工などが発掘されています。

埋葬様式は、土葬と火葬の2種類がありました。土葬の場合、遺体は頭を北か西に向けて埋葬されました。火葬では、骨壺が広く用いられました。どちらの形態の墓にも、陶器、道具、武器、装飾品、食物などが副葬品として納められていました。

住民構成

チェルニャヒーウ文化圏には、様々な言語・民族集団が暮らしていたと考えられています。主な集団は、南のステップ地帯から進出してきたサルマタイ人と、北の森林地帯から進出してきたスラヴ人です。

サルマタイ人は、イラン語群の言語を話す遊牧民で、土葬墓の主にでした。彼らは、ステップ地帯から森林地帯との境界地域にまで進出し、先住のスキタイ人に代わって政治的な主導権を握りました。

スラヴ人は、プシェヴォルスク文化やザルビンツィ文化の担い手であり、火葬墓の主にでした。彼らは南下してサルマタイ人の住むステップ地帯に進出し、農業を行いました。サルマタイ人とスラヴ人は、互いに排斥し合うことなく、社会を形成していったと考えられています。

その後、西からダキア人やゲタイ人が移住し、北方からはゴート人がやってきて定住しました。その結果、チェルニャヒーウ文化圏では、異なる言語を話す集団間で交流が行われるようになりました。ゴート人が定住した北部地域を中心に、スラヴ人との混合文化であるキエフ文化が生まれました。

フン族の襲来と終焉

4世紀になると、フン族の襲来によってチェルニャヒーウ文化は衰退に向かいます。キエフ文化の担い手たちはフン族によって滅ぼされ、チェルニャヒーウ文化の繁栄は終わりを迎えました。

ゴート人はフン族の侵攻を避けて西へ逃れ、ゲルマン民族の大移動を引き起こしました。チェルニャヒーウ文化の地では、荒廃からの復興の過程で、ペンコヴォ文化やコロチン文化といった新たなスラヴ文化が発展していきました。これらの文化は、後の東スラヴ人の文化へと繋がっていきます。

一方、フン族の襲来を逃れて西へ向かったスラヴ人の中には、プシェヴォルスク文化圏に定住する者もいました。彼らの影響を受け、プシェヴォルスク文化はプラハ・コルチャク文化へと発展し、西スラヴ人の文化を形成しました。プラハ・コルチャク文化は、フランク王国との交流を経て、サモ王国へと繋がっていきます。

チェルニャヒーウ文化は、短期間で終焉を迎えたものの、その後のスラヴ文化の発展に大きな影響を与えた文化として、歴史に名を残しています。

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