ザ・インサイダー

ザ・インサイダー（The Insider）は、ロシアに焦点を当てた独立系メディアとして、2013年11月に連帯のメンバーで自由民主主義者であるロマン・ドブロホトフによって設立されました。編集長はアンドリス・ヤンソンズが務めています。

このメディアは、調査報道、ファクトチェック、特定を主な専門としており、イギリスの調査報道ウェブサイトであるベリングキャットやBBCなどと協力関係にあります。特に、フェイクニュースの暴露においてその名を広く知られています。

2021年7月23日、ロシア当局はザ・インサイダーを「外国エージェント」に指定し、その活動を制限しました。同月25日には、ベリングキャットとともにロシア国内での活動が禁止されました。当時、ドブロホトフは、ザ・インサイダーの活動拠点がリガにあり、ロシアには駐在員事務所がないと述べています。2022年時点では、プラハに編集部を置き、活動を継続しています。

主な調査と特定への貢献

ザ・インサイダーは、数々の重要な事件の調査に深く関与し、その真相解明に貢献してきました。以下に主な調査事例を挙げます。

2014年：マレーシア航空17便撃墜事件に関与したロシア連邦保安庁（FSB）の将軍を特定（ベリングキャット、BBCとの協力）。
2018年：元ロシア人二重スパイ、セルゲイ・スクリパリ暗殺未遂事件の容疑者を特定（ベリングキャット、BBCとの協力）。
2019年：ジョージア難民ゼリムハン・ハンゴシヴィリ暗殺に関与したFSBの特殊部隊と再犯殺人犯を特定（ドイツの週刊誌デア・シュピーゲルとの協力）。
2020年：反プーチン政治活動家アレクセイ・ナワリヌイ毒殺未遂事件に関与したFSB工作員チームを特定（ベリングキャット、BBC、デア・シュピーゲル、ラジオ・フリー・ヨーロッパとの協力）。
2022年：ロシアのウクライナ侵攻中に、ウクライナ人捕虜への残虐行為・処刑に関与した人物を特定（ベリングキャットとの調査）。
2022年：ウクライナの民間住宅・インフラに対する精密誘導ミサイル攻撃を管理するロシア軍部隊・隊員33人を特定（ベリングキャット、デア・シュピーゲルとの協力）。この調査結果に基づき、EUは29人に経済制裁を課しました。

その他にも、以下のような重要な調査結果を公表しています。

2014年にチェコで発生した兵器庫爆発事件に関与したロシア連邦軍参謀本部情報総局（GRU）将校2人について、チェコ当局が発表した調査内容の詳細な分析。
ナワリヌイ毒殺未遂に関与したFSBチームが、過去の反プーチン政治活動家、ウラジーミル・カラムルザの毒殺未遂事件や、作家ドミトリー・ビコフ毒殺未遂事件にも関与した可能性の指摘。
2015年に暗殺された政治家ボリス・ネムツォフが、FSBに追跡されていた事実。
ジュエリー・ブランド経営者「マリア・アデラ」の正体が、GRU将校の娘オルガ・コロボワであることの特定（ベリングキャット、デア・シュピーゲル、ラ・レプッブリカとの協力）。
「ホセ・アシス・ジャンマリア」という人物が、GRU大佐ミハイル・ヴァレリエヴィッチ・ミクシンであることの特定（ベリングキャットとの協力）。ミクシンは、2022年にノルウェーで拘束されています。
2024年パリオリンピック直前にフランス当局にスパイ容疑で逮捕されたロシア人シェフ、キリル・グリャズノフの詳細な調査。グリャズノフはGRU職員との関係が確認されています（デア・シュピーゲル、ル・モンドとの協力）。
2023年にパリでダビデの星の落書きを行ったモルドバ人2人の逮捕に関する調査。この落書きは、ミュンヘンオリンピック事件を連想させるものでした。

受賞歴

ザ・インサイダーは、その優れた調査報道活動が評価され、数々の賞を受賞しています。

2017年11月：欧州評議会世界民主主義フォーラム評議会賞
2017年5月：欧州報道賞（セルゲイ・スクリパリ暗殺未遂事件の容疑者割り出し、ベリングキャットと共同受賞）
2019年5月：レッドコレギア賞（『奴隷制との闘いを求める声は、国家制度を脅かしています』）
2019年8月：フリー・メディア・アワード
2021年2月：レッドコレギア賞（FSB職員がウラジーミル・カラムルザを毒殺しようとした方法）

ザ・インサイダーは、独立系メディアとして、ロシア国内の出来事や国際的な事件の真相解明に重要な役割を果たしており、その活動は今後も注目されるでしょう。

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