アレクセイ・ナワリヌイ

アレクセイ・ナワリヌイの生涯と政治活動

アレクセイ・アナトリエヴィチ・ナワリヌイ（Aleksei Anatolievich Navalny、1976年 6月4日 - 2024年2月16日）は、ロシアの弁護士、政治活動家、そして民族主義者でした。イェール大学のワールドフェローでもあり、ロシア国内でウラジーミル・プーチン政権に対する最も強力な批判者の一人として、その名を知られていました。

生い立ちと教育

1976年、モスクワ郊外の村で生まれたナワリヌイは、ロシアとウクライナの両方にルーツを持つ家庭で育ちました。モスクワの南西にあるオブニンスクで幼少期を過ごし、夏はウクライナの祖母の家で過ごしました。1998年にロシア諸民族友好大学で法学の学位を取得した後、ロシア連邦政府付属財政大学で証券取引などを学びました。2010年には、イェール大学のフェロープログラムに参加し、グローバルリーダーとしての見識を深めました。

政治活動の開始

2000年代初頭、ナワリヌイは自由主義政党「ヤブロコ」に所属して政治活動を始めましたが、後に民族主義的な立場を強め、極右団体に関わるようになりました。その後、政府と関係のある大企業の腐敗を追及する活動を始め、インターネットを通じて情報を発信するようになりました。自身のブログや寄稿を通じて、汚職を告発し、大規模なデモへの参加を呼びかけるなど、反体制運動の指導者としての地位を確立しました。

プーチン政権との対立

2011年、ナワリヌイは政権与党「統一ロシア」を「詐欺師と泥棒の党」と批判し、注目を集めました。その後、数々のデモを組織し、逮捕と釈放を繰り返す中で、政治活動家としての存在感を増していきました。2013年にはモスクワ市長選に立候補しましたが、選挙不正を主張し、現職の当選に異議を唱えました。

数々の訴訟と拘束

ナワリヌイは、横領罪で起訴され、有罪判決を受けましたが、国際社会からは政治的な弾圧との批判も多くありました。2014年にはイブロシェ詐欺事件で執行猶予付きの懲役刑を言い渡され、その後も度重なる逮捕、自宅軟禁、拘留を経験しました。2017年には、メドヴェージェフ首相の汚職を告発する動画を公開し、大規模なデモを呼びかけ、多くの支持者とともに拘束されました。2018年の大統領選挙への立候補を試みましたが、有罪判決を理由に却下され、選挙ボイコットを呼びかけました。

毒殺未遂事件とその後

2020年8月、ナワリヌイは毒物による体調不良に陥り、意識不明の重体となりました。ドイツでの治療の結果、神経剤ノビチョクによる毒殺未遂であったことが判明しました。その後、回復したナワリヌイは、ロシアに帰国しましたが、直ちに逮捕され、収監されました。2021年には、かつての執行猶予の条件違反を理由に2年6か月の実刑判決が下され、その後も様々な罪で刑期が加算されました。

獄中での活動と死去

収監中も、ナワリヌイはSNSを通じてメッセージを発信し続け、汚職追及や反戦活動を継続しました。しかし、度重なる懲罰房入りを強いられ、健康状態が悪化していきました。2024年2月16日、北極圏の刑務所で亡くなったと発表されました。死因については諸説ありますが、ロシア当局の発表では、急な体調悪化によるものとされています。ナワリヌイの死は、国際社会に衝撃を与え、ロシアの政治状況への懸念を深めました。

ナワリヌイの人物像と評価

ナワリヌイは、その率直な物言いとカリスマ性で多くの支持者を集めました。当初は民族主義的な立場でしたが、後にリベラルな主張も行うようになり、西側諸国からは、民主主義と腐敗との戦いを象徴する人物として評価されました。一方、ロシア政府からは、外国勢力の工作員と見なされ、厳しく弾圧されました。彼の活動は、ロシアの政治改革と民主主義の発展にとって重要な足跡を残しました。また、ドキュメンタリー映画「ナワリヌイ」は、英国アカデミー賞とアカデミー長編ドキュメンタリー映画賞を受賞し、その生涯と活動は、世界中で広く知られるようになりました。

政治的立場

ナワリヌイは、反体制派としてプーチン政権を厳しく批判してきましたが、その政治的立場は複雑です。初期には極右的な思想を持ち合わせていましたが、次第にリベラルな側面も持つようになり、同性婚を支持するなど、多様な見解を示しました。ウクライナへの侵攻については、反戦の立場を明確に表明しました。

家族

妻のユリア・ナヴァルナヤとの間に、ダーシャとザハルの二人の子供がいます。妻のユリアは、夫の活動を支え、ナワリヌイの死後も、彼の遺志を継いで活動を続けています。

著書

ナワリヌイの著書には、死後に発表された『PATRIOT プーチンを追い詰めた男　最後の手記』があります。

脚注

（外部リンクは省略）

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