ザ・スパイダースの大騒動

『ザ・スパイダースの大騒動』（ざすぱいだーすのだいそうどう）は、1960年代後半に絶大な人気を誇ったグループサウンズ、ザ・スパイダースが主演した映画シリーズの第3作として、1968年5月18日に日活より公開された作品です。カラー、シネマスコープ、上映時間86分で製作されました。

ストーリー

本作は、ザ・スパイダースのメンバーが遭遇する奇想天外な騒動を描きます。物語は、彼らが街中で遭遇する奇妙な出来事から展開。スポーツカーに乗ったモッズ風の女性との衝突事故をきっかけに、メンバーは病院へ運ばれ、そこで予期せぬ奇妙な治療を受けることになり、そこからドタバタ劇が展開します。こうした予期せぬ体験が、彼らの日常に騒動を巻き起こします。ストーリーは、メンバーたちのこうした騒動と並行して、ザ・スパイダースのエネルギッシュなライブパフォーマンスシーンを挿入しながら進行。コンサートシーンは、当時のサイケデリックなムーブメントを反映した幻想的な映像表現で彩られ、彼らの音楽を視覚的にも印象深く描いています。メンバーたちの日常に起こるトラブルと、彼らの本領であるライブが融合した構成です。

製作スタッフ

本作の製作には、当時の日活を支えたスタッフが集結しました。企画は笹井英男、脚本は伊奈洸が担当。監督は森永健次郎が務め、グループサウンズ映画らしい躍動感ある演出を見せています。撮影は松橋梅夫、美術は西亥一郎、照明は高島正博、録音は太田六敏、スチールは斎藤誠一。音楽はザ・スパイダースのムッシュかまやつと脇野孝司が手掛け、作品全体のサウンドを構築しています。監督助手は飯塚二郎と伊藤亮爾、撮影助手は永塚各一郎、制作進行は兵頭淳輔が務めました。現像は東洋現像所が担当し、ベアー時計バンドが協賛としてクレジットされています。

キャスト

主演はもちろん、ザ・スパイダースのメンバー全員で、田辺昭知、堺正章、井上順、かまやつひろし（ムッシュかまやつ）、加藤充、大野克夫、井上孝之が出演し、それぞれ本人役に近い設定でスクリーンに登場します。共演者として、高村夕子役に奈美悦子、脇田健次役に川口恒、ヨシ子役に佐々木梨里、松代役に渡辺智子らが顔を揃えています。さらに、個性的な脇役陣が作品にユーモアと彩りを加えています。病院の掃除婦役を由利徹、チンドン屋を青空はるお・あきお、マスターとボーイを獅子てんや・瀬戸わんやが演じるなど、豪華なゲスト出演者も多数登場。その他、タクシー運転手に菊田一郎、松尾に小柴隆、媒酌人に鴨田喜由、グラマーな女役に楠トシエなどが出演しています。

音楽

本作の大きな魅力は、ザ・スパイダースによる多数の楽曲が劇中で使用されている点です。主題歌は、彼らの代表曲の一つとして今なお知られる「あの時君は若かった」（作詞：菅原芙美恵、作曲：かまやつひろし）。この曲が映画のテーマを印象づけます。

挿入歌としては、以下のような彼らの人気楽曲が多数フィーチャーされます。

「風が泣いている」作詞・作曲：浜口庫之助
「なればいい」作詞：オリベゆり、作曲：かまやつひろし
「バン・バン・バン」作詞・作曲：かまやつひろし
「僕のハートはダン!ダン!」作詞・作曲：かまやつひろし
「いつまでもどこまでも」作詞：佐々木ひろと、作曲：かまやつひろし
「もう一度もう一度」作詞・作曲：かまやつひろし
「太陽の翼」作詞・作曲：利根常昭
「夕陽が泣いている」作詞・作曲：浜口庫之助

これらの楽曲はライブシーンやストーリーの各所で効果的に使用され、作品に躍動感を与えています。また、共演の奈美悦子が歌う「愛しているから」（作詞：茜礼子、作曲：島田タカホ）も挿入歌として使用されています。

作品の特徴・評価

『ザ・スパイダースの大騒動』は、グループサウンズ全盛期の熱気を捉えつつ、当時の若者文化やサイケデリックな雰囲気を融合させた青春音楽映画です。奇想天外なストーリー展開と、実験的なライブシーンが見どころ。ザ・スパイダースのヒット曲の数々を映画の中で楽しめるだけでなく、由利徹や獅子てんや・瀬戸わんやといった個性的なゲスト出演者たちの存在も作品に彩りを加えています。日活らしいスピーディーな展開と、時代の雰囲気が融合した一作と言えるでしょう。当時のグループサウンズ映画の活気を今に伝える貴重な作品の一つです。

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