ザ・ディランII
ザ・ディランIIは、1971年から1974年にかけて活動した日本のフォークグループです。中心メンバーは、メインヴォーカルとギターを担当した大塚まさじと、リードギターおよびサイドヴォーカルの永井洋。彼らはデュオとして、あるいはバックバンドを従えたバンドとして、関西フォークシーンにおいて重要な役割を果たしました。
その活動の源流は、1960年代末の大阪にありました。当時、フォーク喫茶「ディラン」には多くの若きミュージシャンが集っており、その中でも西岡恭蔵、大塚まさじ、永井洋の3人が中心となってフォークソングの集団を形成しました。この3人によるグループは「ザ・ディラン」として活動を展開し、「フォークキャンプ」や「中津川フォークジャンボリー」といった大規模なイベントにも出演し、その名を知られるようになります。URCに残された音源には、西岡恭蔵がリードヴォーカルをとるライブ記録も存在しています。
「ザ・ディランII」が正式にスタートする契機は、1971年頃に訪れました。ある時、岡林信康とはっぴいえんどのレコーディングがキャンセルになり、そのスタジオが空いたことから、大塚まさじだけが招かれ、軽い気持ちで録音が行われました。この音源がレコード化されることになったため、彼らは本格的なレコーディングを決意します。しかし、当時最も音楽活動に意欲的だった西岡恭蔵が、家業の事情によりプロとしての道を断念し、グループを離れることになります。これにより、大塚まさじと永井洋の2人組として、「ザ・ディランII」が誕生しました。
1971年には、ボブ・ディランの楽曲「アイ・シャル・ビー・リリースト」に日本語詞をつけた「男らしいってわかるかい」を最初のシングルとして発表します。同年7月には、ジャズシンガー安田南に捧げられたとされる名曲「プカプカ」をリリースし、これが彼らの代表曲の一つとなりました。彼らの音楽性は幅広く、活動時期や録音形式（アルバム、ライブ）によって、バンドサウンドを強調したロック色の強い楽曲と、デュオの特色を活かしたフォーク色の強い楽曲が存在しています。
大阪における彼らの活動拠点の一つとなったのが、1971年に福岡風太の企画で始まったコンサート「春一番」でした。ザ・ディランIIは、このイベントの看板グループとして回を重ねて出演し、いとうたかおをはじめとする多くのミュージシャンと共演しました。高石ともや、岡林信康、高田渡、中川五郎といった関西フォークの第一世代に続く、友部正人、なぎらけんいち、斉藤哲夫、三上寛、加川良、そして西岡恭蔵らと共に、新しい世代の関西フォークを担う存在として注目を浴びることになります。
1972年、高石ともやらが設立に関わったレーベル、URCからファーストアルバム『きのうの思い出に別れをつげるんだもの』を発表します。このアルバムからは、西岡恭蔵が提供した「プカプカ」がヒットしました。また、大塚まさじ作の、後に「ピストル魔の少年」と呼ばれた永山則夫に捧げられたとされる「子供たちの朝」、そしてボブ・ディランのカバーである「男らしいってわかるかい」も話題となりました。この時期の彼らのサウンドはロック色が強く、「東のはっぴいえんど、西のザ・ディランII」と対比されることもありました。同年には、初期メンバーの西岡恭蔵もソロアルバム『ディランにて』でデビューを果たしています。
続く1973年には、同じくURCよりセカンドアルバム『SECOND』をリリース。前作とは対照的に、アコースティックなサウンドを前面に押し出した作品となりました。シンガーズ・スリーによる繊細なコーラスや、駒沢裕城の奏でるペダルスティール・ギターなどが加わり、よりデリケートな音作りが特徴です。
1974年には、ベルウッド・レコードに移籍し、西岡恭蔵（作詞作曲、サイドギター）、長田タコヤキ（スチールギター）、佐藤博（キーボード）、魔矢イタル（高橋イタル）といった、かつての「ザ・ディラン」時代のメンバーが集結したセッションによるアルバム『悲しみの街』を発表しました。この作品は「オリジナル・ザ・ディラン」名義でリリースされ、バラエティー豊かな内容となりました。このアルバムに参加したミュージシャンの中からは、後に鈴木茂とハックルバックを結成するメンバーも輩出されています。
同年、ザ・ディランII名義でのラストアルバムとなるスタジオ録音盤『さようなら～この世を悲しむ風来坊に捧ぐ～』を、ベルウッドより発表しました。このアルバムには、細野晴臣のファーストソロアルバム『HOSONO HOUSE』に収められた名曲「恋は桃色」や、休みの国の代表曲で、永井洋がリードヴォーカルをとる「追放の唄」、中塚正人の「風景」など、秀逸なカバーソングが収録されています。知己であったソー・バッド・レビューの石田長生や、ウエスト・ロード・ブルース・バンドの塩次伸二といった関西を代表するブルース・ロック系ミュージシャンが多数参加しており、バンドとしてのロック色を取り入れた、密度の濃いサウンドが特徴です。スタジオ録音盤の他、「ホーボーズ・コンサート」などのライブ音源や、1989年に編集されたライブ盤なども発表されています。
彼らの晩期のライブパフォーマンスを記録したアルバムとしては、1975年にリリースされた『時は過ぎて～ザ・ディランIIライヴ～』があります。公式な活動を終えた後も、ザ・ディランIIの名義が用いられる機会がありました。特に1998年にリリースされた、西岡恭蔵の夫人であるKUROへのトリビュートアルバム『KUROちゃんをうたう/トリビュート・アルバム』には、ザ・ディランIIとして久々に楽曲を提供し参加しています。
ザ・ディランIIは、短期間ながらも日本のフォーク、ロック史に足跡を残しました。その多様な音楽性と、初期衝動から円熟期へと変化していったサウンドは、今なお多くの音楽ファンに聴き継がれています。彼らが中心となった大阪の音楽シーン、特に「春一番」が果たした役割は大きく、彼らはその象徴的な存在であったと言えるでしょう。
その活動の源流は、1960年代末の大阪にありました。当時、フォーク喫茶「ディラン」には多くの若きミュージシャンが集っており、その中でも西岡恭蔵、大塚まさじ、永井洋の3人が中心となってフォークソングの集団を形成しました。この3人によるグループは「ザ・ディラン」として活動を展開し、「フォークキャンプ」や「中津川フォークジャンボリー」といった大規模なイベントにも出演し、その名を知られるようになります。URCに残された音源には、西岡恭蔵がリードヴォーカルをとるライブ記録も存在しています。
「ザ・ディランII」が正式にスタートする契機は、1971年頃に訪れました。ある時、岡林信康とはっぴいえんどのレコーディングがキャンセルになり、そのスタジオが空いたことから、大塚まさじだけが招かれ、軽い気持ちで録音が行われました。この音源がレコード化されることになったため、彼らは本格的なレコーディングを決意します。しかし、当時最も音楽活動に意欲的だった西岡恭蔵が、家業の事情によりプロとしての道を断念し、グループを離れることになります。これにより、大塚まさじと永井洋の2人組として、「ザ・ディランII」が誕生しました。
1971年には、ボブ・ディランの楽曲「アイ・シャル・ビー・リリースト」に日本語詞をつけた「男らしいってわかるかい」を最初のシングルとして発表します。同年7月には、ジャズシンガー安田南に捧げられたとされる名曲「プカプカ」をリリースし、これが彼らの代表曲の一つとなりました。彼らの音楽性は幅広く、活動時期や録音形式（アルバム、ライブ）によって、バンドサウンドを強調したロック色の強い楽曲と、デュオの特色を活かしたフォーク色の強い楽曲が存在しています。
大阪における彼らの活動拠点の一つとなったのが、1971年に福岡風太の企画で始まったコンサート「春一番」でした。ザ・ディランIIは、このイベントの看板グループとして回を重ねて出演し、いとうたかおをはじめとする多くのミュージシャンと共演しました。高石ともや、岡林信康、高田渡、中川五郎といった関西フォークの第一世代に続く、友部正人、なぎらけんいち、斉藤哲夫、三上寛、加川良、そして西岡恭蔵らと共に、新しい世代の関西フォークを担う存在として注目を浴びることになります。
1972年、高石ともやらが設立に関わったレーベル、URCからファーストアルバム『きのうの思い出に別れをつげるんだもの』を発表します。このアルバムからは、西岡恭蔵が提供した「プカプカ」がヒットしました。また、大塚まさじ作の、後に「ピストル魔の少年」と呼ばれた永山則夫に捧げられたとされる「子供たちの朝」、そしてボブ・ディランのカバーである「男らしいってわかるかい」も話題となりました。この時期の彼らのサウンドはロック色が強く、「東のはっぴいえんど、西のザ・ディランII」と対比されることもありました。同年には、初期メンバーの西岡恭蔵もソロアルバム『ディランにて』でデビューを果たしています。
続く1973年には、同じくURCよりセカンドアルバム『SECOND』をリリース。前作とは対照的に、アコースティックなサウンドを前面に押し出した作品となりました。シンガーズ・スリーによる繊細なコーラスや、駒沢裕城の奏でるペダルスティール・ギターなどが加わり、よりデリケートな音作りが特徴です。
1974年には、ベルウッド・レコードに移籍し、西岡恭蔵（作詞作曲、サイドギター）、長田タコヤキ（スチールギター）、佐藤博（キーボード）、魔矢イタル（高橋イタル）といった、かつての「ザ・ディラン」時代のメンバーが集結したセッションによるアルバム『悲しみの街』を発表しました。この作品は「オリジナル・ザ・ディラン」名義でリリースされ、バラエティー豊かな内容となりました。このアルバムに参加したミュージシャンの中からは、後に鈴木茂とハックルバックを結成するメンバーも輩出されています。
同年、ザ・ディランII名義でのラストアルバムとなるスタジオ録音盤『さようなら～この世を悲しむ風来坊に捧ぐ～』を、ベルウッドより発表しました。このアルバムには、細野晴臣のファーストソロアルバム『HOSONO HOUSE』に収められた名曲「恋は桃色」や、休みの国の代表曲で、永井洋がリードヴォーカルをとる「追放の唄」、中塚正人の「風景」など、秀逸なカバーソングが収録されています。知己であったソー・バッド・レビューの石田長生や、ウエスト・ロード・ブルース・バンドの塩次伸二といった関西を代表するブルース・ロック系ミュージシャンが多数参加しており、バンドとしてのロック色を取り入れた、密度の濃いサウンドが特徴です。スタジオ録音盤の他、「ホーボーズ・コンサート」などのライブ音源や、1989年に編集されたライブ盤なども発表されています。
彼らの晩期のライブパフォーマンスを記録したアルバムとしては、1975年にリリースされた『時は過ぎて～ザ・ディランIIライヴ～』があります。公式な活動を終えた後も、ザ・ディランIIの名義が用いられる機会がありました。特に1998年にリリースされた、西岡恭蔵の夫人であるKUROへのトリビュートアルバム『KUROちゃんをうたう/トリビュート・アルバム』には、ザ・ディランIIとして久々に楽曲を提供し参加しています。
ザ・ディランIIは、短期間ながらも日本のフォーク、ロック史に足跡を残しました。その多様な音楽性と、初期衝動から円熟期へと変化していったサウンドは、今なお多くの音楽ファンに聴き継がれています。彼らが中心となった大阪の音楽シーン、特に「春一番」が果たした役割は大きく、彼らはその象徴的な存在であったと言えるでしょう。
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