三上寛

三上寛：フォーク、詩、そして銀幕の異才

三上寛（みかみ かん）は、1950年、青森県北津軽郡小泊村（現・中泊町）で生まれました。代々漁師の家系に生まれたものの、父親は役場勤務でした。幼少期には、後に現代詩の世界で活躍する泉谷明と出会い、詩作への感性を磨いていきました。

音楽との出会いは意外にも、小林旭の『渡り鳥シリーズ』でした。青森県立五所川原高等学校在学中は生徒会長を務め、バンド活動にも熱中。ザ・タイガースやジャッキー吉川とブルーコメッツなどの曲を演奏する傍ら、高校1年生から作詞を始め、オリジナル曲も制作しました。1967年には、自費出版で詩集『白い彫刻』を発表。同郷の詩人、寺山修司に才能を認められたという逸話も残っています。

高校卒業後、青森県警に採用され警察学校に入学するも、冤罪により退学。1968年秋、詩人になる夢を抱き上京しました。当初は板前見習いをしていたものの、岡林信康の「山谷ブルース」を聴いたことがきっかけで退職。新聞販売店で働きながら詩を書き続けました。

転機は、スナックのマスターを通じて出会った田原総一朗との出会いです。田原の協力のもと、永山則夫を題材にした楽曲を制作し、1970年にはドキュメンタリー番組『ドギつく生きよう宣言〜もう一人の永山則夫・三上寛〜』が放送されました。

1970年からは、渋谷のライブハウス「ステーション70」に出演。フォークシンガーとしての活動を本格化させます。ばばこういちのプロデュースにより、1971年にはシングル「馬鹿ぶし」でデビュー。同年、中津川フォークジャンボリーに出演し、自作歌詞による「夢は夜ひらく」のカバーや、よど号ハイジャック事件を題材にした「飛行機ぶんどって」などを披露。男性を中心に大きな反響を呼び、知名度を上げます。

三上寛の風貌は、当時のフォークシーンでは異彩を放っていました。ジョイントコンサートでは、三上がステージに立つと、ガロや吉田拓郎目当ての女性ファンがトイレに逃げ込むという現象もあったと言われています。

音楽活動と並行して、俳優としての活動も活発化。1970年代の映画やテレビドラマに数多く出演し、個性的な役柄で多くの作品に彩りを添えました。深作欣二監督作品への出演がきっかけとなり、ピラニア軍団のアルバム制作にも携わるなど、映画界との深い関わりも持ちました。

三上寛は、フォークシンガー、俳優、詩人という多様な顔を持つ稀有な存在でした。独自の音楽性と表現力で多くの作品を生み出し、時代を反映したメッセージを発信し続けています。その生涯と作品は、現代においてもなお、多くの人の心に響き続けています。

ディスコグラフィ、フィルモグラフィ

シングル、アルバム（オリジナル、ライブ）

膨大な数のシングル、アルバム、ライブアルバムを発表。URC、ビクター、東芝EMIなど様々なレーベルからリリースされた作品群は、三上寛の音楽的遍歴を如実に示しています。ここでは、代表的な作品をいくつか挙げるにとどめますが、詳細は各データベースを参照ください。

映画、テレビドラマ、その他出演作品

三上寛は、数多くの映画やテレビドラマに出演。深作欣二監督作品をはじめとする東映作品への出演が多く、個性的な役柄で観客を魅了しました。ATG作品や、NHK大河ドラマへの出演など、活動は多岐に渡ります。オリジナルビデオへの出演も多数あり、精力的な活動を続けていました。

著作

詩集『白い彫刻』をはじめ、自伝的作品やエッセイなど、複数の著作を発表。自身の生い立ちや音楽活動、社会への鋭い視点などを綴った作品群は、彼の音楽や演技と同様に、独自の世界観を展開しています。

まとめ

三上寛は、フォーク、詩、そして俳優という複数の分野を横断する稀有な存在です。警察学校退学という波乱万丈な過去、フォークシンガーとしての成功、そして個性的な俳優としての活躍。彼の生き様は、常に自由奔放でありながら、強い意志と信念に貫かれていました。青森の豊かな自然と、過酷な社会経験が、彼独自の芸術世界を形成したと言えるでしょう。彼の作品群は、これからも多くの人々に刺激と感動を与え続けることでしょう。

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