ザ・ドム・スプレムニとは？意味をやさしく解説

ザ・ドム―スプレムニ!

「ザ・ドム―スプレムニ!」（クロアチア語: Za dom - spremni!、英語: For home―Ready!）は、「備えよ、故郷のために!」という意味を持つクロアチアの民族主義的なスローガンです。

起源と歴史

その起源は19世紀に遡り、当時のクロアチア王国の総督ヨシップ・イェラチッチに対する挨拶として用いられました。しかし、第二次世界大戦中にクロアチア独立国のファシスト組織・ウスタシャが、クロアチア版「ジークハイル」としてこのスローガンを使用したことで、その意味合いは大きく変化しました。ウスタシャはセルビア人などを虐殺した過去を持ち、このスローガンは人々に嫌悪感を抱かせる、否定的な意味合いを帯びるようになったのです。2019年には、欧州ストラスブール裁判所によってナチスの象徴として合法的に分類されました。

意味と解釈

このスローガンは「故郷のために、常に戦う備えあり」という意味を含み、常にクロアチアを守るために戦う準備があるという愛国的なクロアチア人の精神を表現した、呼びかけと応答の形式の掛け声です。単なるウスタシャのスローガンにとどまらず、祖国を守るために戦うというクロアチア人の誇りや愛国心を表現したものと解釈することもできます。

オペラ「ニコラ・シュビッチ＝ズリンスキ」には、クロアチアの愛国歌「U boj, u boj」が含まれており、その歌詞にはこのスローガンが組み込まれています。

現代における使用

1990年代のクロアチア紛争以降、このスローガンは特にクロアチアの民族主義者の間でよく見られるようになりました。クロアチアの人気ロックバンド、トンプソンはコンサートでこのスローガンを使用し、集まったファンたちがナチス式敬礼で応える様子も見られます。ただし、バンドのリーダーであるマルコ・ペルコヴィッチ本人は、自らこの敬礼をすることは否定しています。

2013年には、サッカークロアチア代表DFヨシプ・シムニッチがW杯欧州予選プレーオフでアイスランドを破った後、スタジアムでこのスローガンを叫んだとして、FIFAから2014年W杯開幕以降10試合の出場停止処分を受けました。また、3万スイスフランの罰金も科せられています。

論争と批判

「ザ・ドム―スプレムニ!」は、その歴史的背景から、クロアチア国内外で論争の的となっています。一部の人々は、このスローガンをクロアチアの愛国心や独立の象徴として捉える一方で、他の人々はウスタシャの犯罪行為を想起させるものとして強く非難しています。そのため、公共の場での使用はしばしば議論を呼び、社会的な緊張を生み出す要因となっています。

ザ・ドム・スプレムニ