ザ・ニュー・スタンダード

『ザ・ニュー・スタンダード』（The New Standard）は、ジャズ界の巨星ハービー・ハンコックによるスタジオアルバムで、1996年にヴァーヴ・レコードからリリースされました。このアルバムは、ポップミュージックの楽曲を独自のアプローチでアレンジしており、ハンコック自身のオリジナル曲「マンハッタン」を含む全11曲が収められています。

アルバムの背景

本作は、アコースティック・ピアノに特化した演奏が特徴で、ハンコックはその技術を存分に発揮しています。収録されている楽曲は、ドン・ヘンリーやピーター・ガブリエル、ビートルズ、ベイビーフェイスなどのアーティストによる名曲をジャズアレンジで再解釈したものが中心です。特に「マンハッタン」は、アルバムの中で唯一のオリジナル楽曲であり、その美しいメロディと情感豊かな演奏が聴く者を魅了します。

反響と評価

リリース直後はアメリカの総合アルバムチャートであるBillboard 200には入らなかったものの、ジャズアルバムチャートでは2位に達しました。さらに、スウェーデンのアルバムチャートでも3週にわたりトップ50にランクインし、最高39位を記録するなど、国際的にも高い評価を受けました。また、第39回グラミー賞では「マンハッタン」が最優秀インストゥルメンタル作曲賞を受賞し、ハンコックの才能が認められる瞬間となりました。

オールミュージックのスコット・ヤナウは、本作に対し5点満点中4点を付け、「彼の演奏は依然として絶継調で、魅力的なソロが数多く展開されている」と称賛しています。また、楽曲が将来的にジャズスタンダードとなるかは定かではないものの、ハンコックは「新しい」音楽を創り出すことに成功したと評価されています。

特にニルヴァーナの「オール・アポロジーズ」をカバーしたことも注目され、そのアレンジはChristopher R. Weingartenによって「The 25 Best Nirvana Covers」の一つに選ばれました。

収録曲一覧

アルバムには、以下の楽曲が収められています：
1. ニューヨーク・ミニット - "New York Minute" (Don Henley, Danny Kortchmar, Kai Winding) - 8:35
2. マーシー・ストリート - "Mercy Street" (Peter Gabriel) - 8:37
3. ノルウェーの森 - "Norwegian Wood (This Bird Has Flown)" (John Lennon, Paul McCartney) - 8:07
4. ホエン・キャン・アイ・シー・ユー - "When Can I See You" (Kenny "Babyface" Edmonds) - 6:17
5. バッド・ガール - "You've Got It Bad Girl" (Stevie Wonder, Yvonne Wright) - 7:15
6. ストロンガー・ザン・プライド - "Love Is Stronger Than Pride" (Sade Adu, Andrew Hale, Stuart Matthewman) - 8:00
7. スカボロー・フェア - "Scarborough Fair" (Paul Simon, Art Garfunkel) - 8:24
8. シーヴス・イン・ザ・テンプル - "Thieves in the Temple" (Prince) - 7:33
9. オール・アポロジーズ - "All Apologies" (Kurt Cobain) - 5:08
10. マンハッタン - "Manhattan (Island of Lights and Love)" (Herbie Hancock, Jean Hancock) - 4:06
11. ユア・ゴールド・ティースII - "Your Gold Teeth II" (Donald Fagen, Walter Becker) - 5:14

特に「バッド・ガール」と「シーヴス・イン・ザ・テンプル」は、ライヴ音源としても収録されており、ハンコックの即興的な演奏スタイルが楽しめます。

参加ミュージシャン

アルバムには、ハンコックに加えて多くの著名なミュージシャンが参加しています。中でもマイケル・ブレッカーがサクソフォーンで、ジョン・スコフィールドがギターで、デイヴ・ホランドがベースで、ジャック・ディジョネットがドラムで参加し、彼らの演奏がアルバム全体に深みを与えています。

さらに、ストリングスとウッドウィンズのパートも取り入れられており、楽曲に豊かな音色を加えています。特に、フルートの音色は、曲に一層のメロディックな要素を与えています。

『ザ・ニュー・スタンダード』は、ハービー・ハンコックの卓越した演奏技術と独自のアレンジが光る傑作であり、リスナーに新たな音楽体験を提供する貴重なアルバムと言えるでしょう。

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