ザ・ビギニング・オブ・タイムズ

アモルフィスの10作目『ザ・ビギニング・オブ・タイムズ』：叙事詩とヘヴィメタルの融合

2011年、フィンランドのヘヴィメタルバンド、アモルフィスは10枚目のスタジオアルバム『ザ・ビギニング・オブ・タイムズ』（The Beginning of Times）を発表しました。この作品は、フィンランド叙事詩『カレワラ』を基にした壮大なコンセプトアルバムであり、バンドのキャリアにおいて重要な位置を占めています。

『カレワラ』からの着想と独自の解釈

歌詞の多くは、『カレワラ』の主要登場人物であるワイナモイネンからインスピレーションを得ています。しかし、アルバム全体がワイナモイネンを単に追体験したものではなく、作詞家ペッカ・カイヌライネンの『カレワラ』への個人的な解釈や想いが反映されている点も特徴です。特に「リフォーメイション」は、ワイナモイネンを直接的に描いた曲ではなく、カイヌライネンの個人的な視点が色濃く反映された作品となっています。

先行シングルとアルバム全体の印象

先行シングルとしてリリースされた「ユー・アイ・ニード」のミュージックビデオは、2011年4月29日にベルリンで撮影されました。ギタリストのエサ・ホロパイネンは、この曲について「アルバム全体を代表するものではない」「ラジオ向けに制作された曲」とコメントしており、アルバムの多様性の一端を示唆しています。この発言からもわかるように、アルバム全体はシングル曲のような印象とは異なる、より多層的な構成となっています。

高い評価と商業的成功

『ザ・ビギニング・オブ・タイムズ』は、母国フィンランドでは発売初週にアルバムチャート1位を獲得し、アモルフィスにとって4作目の1位獲得アルバムとなりました。2012年にはフィンランド国内での売り上げが1万枚を突破し、ゴールドディスクに認定されるなど、商業的にも大きな成功を収めました。ドイツでもチャート16位にランクインし、同国では初のトップ20入りを果たすなど、国際的な評価も高まりました。

批評家の反応

音楽評論家からの評価も高く、オールミュージックのEduardo Rivadaviaは5点満点中3.5点を付け、「『ザ・ビギニング・オブ・タイムズ』というタイトルは必ずしも正確ではない。なぜなら、本作はデビューアルバム『カレリアン・イスムス』のようなブルータルなデスメタルではなく、むしろバンドのオリジナリティを確立した2作目『テイルズ・フロム・ザ・サウザンド・レイクス』に回帰した作品だからだ」と評しています。また、PopMattersのAdrien Begrandは10点満点中7点を付け、「過去3作は壮麗でポップ性の高いシングルが印象的だったが、本作はより一貫性がある」とコメントしています。これらの評価は、アルバムの多様性と音楽性の高さを示すものとなっています。

収録曲と参加ミュージシャン

アルバムには全16曲が収録されており、作詞は全てペッカ・カイヌライネンが担当しています。作曲はサンテリ・カリオとエサ・ホロパイネンが中心となって担当し、トミ・コイヴサーリも参加しています。限定版や日本版にはボーナス・トラック「ハーツ・ソング」が追加収録されています。

参加ミュージシャンは、トミ・ヨーツセン（ボーカル）、エサ・ホロパイネン（リードギター）、トミ・コイヴサーリ（リズムギター）、サンテリ・カリオ（キーボード）、ニクラス・エテレヴォリ（ベース）、ヤン・レックベルガー（ドラムス）らに加え、Savotta Choir（男声コーラス）、Netta Dahlberg（女声コーラス）、Iikka Kahri（フルート、クラリネット、サクソフォーン）といったゲストミュージシャンも参加しています。

まとめ

『ザ・ビギニング・オブ・タイムズ』は、フィンランド叙事詩『カレワラ』を題材にしながらも、アモルフィス独自の音楽性と解釈を融合させた、高い完成度を誇る作品です。商業的な成功だけでなく、批評家からも高い評価を得ており、バンドの代表作の一つとして挙げられるにふさわしいアルバムと言えるでしょう。

もう一度検索