ザ・フー・バイ・ナンバーズ

『ザ・フー・バイ・ナンバーズ』は、1975年にリリースされたザ・フーのスタジオアルバムです。プロデューサーはグリン・ジョンズが担当し、旧邦題は『ロックンロール・ゲーム』として知られています。

『四重人格』以来、約2年ぶりのオリジナルアルバムとして制作されました。プロデュースには『フーズ・ネクスト』にも参加したグリン・ジョンズ、そしてピアノにはニッキー・ホプキンスが『フーズ・ネクスト』以来の参加となりました。レコーディングは1975年4月30日から4週間にわたり、シェパートン・スタジオに移動式スタジオを持ち込んで行われました。ただし、「ブルー・レッド・アンド・グレイ」のみ、ピート・タウンゼント所有のイールパイ・スタジオで収録されています。ロジャー・ダルトリーは、映画『リストマニア』の撮影のため、レコーディングへの参加が遅れました。

本作は、『フーズ・ネクスト』以来のノン・コンセプトアルバムです（ただし、『フーズ・ネクスト』は当初『ライフハウス』というロックオペラとして制作されていたため、最初からノン・コンセプトアルバムとして制作されたのは2枚目のアルバム『ア・クイック・ワン』以来となります）。前作『四重人格』でのシンセサイザーを多用した重厚なサウンドとは対照的に、本作では必要最低限のコンボで比較的シンプルな音作りがなされています。また、タウンゼントの歌詞にも変化が見られ、仕事の重圧、音楽業界への皮肉、家庭内の問題など、現実的かつ個人的なテーマを扱ったものが多く、タウンゼントのソロ作品と捉えるファンもいます。ジャケットもシンプルなシングル・スリーブとなっています。ジャケットのイラストはジョン・エントウィッスルによるもので、彼の息子の塗り絵から着想を得ています。

当時のザ・フーは、マネージャーのキット・ランバートとの金銭問題による訴訟を抱え、タウンゼント自身も音楽業界全体に幻滅していました。彼はニュー・ミュージカル・エクスプレス紙のインタビューで自身の苦悩や不満を赤裸々に語り、その中でダルトリーに対する批判も行いました。その数週間後には、同じ紙面でダルトリーがタウンゼントへ辛辣な返答をしたことで、ザ・フー解散の噂が一気に広まりました。しかし、この解散説を払拭するかのように、ザ・フーは1975年10月から翌1976年にかけて、大規模な世界ツアーを敢行しました。ツアー中にはキース・ムーンが急性アルコール中毒で倒れるというアクシデントもありましたが、グループは1976年のローリング・ストーン誌で最優秀グループに選ばれ、復活を印象付けました。しかし、このツアーが結果的にムーンと行った最後のツアーとなりました。

本作からは「スクイーズ・ボックス／サクセス・ストーリー」がシングルカットされ、イギリスでトップ10入りを果たしました。

1996年にはリマスター／リミックス版がリリースされました。このリマスター版には未発表曲や未発表テイクは収録されていませんが、1976年のスウォンジー公演からの3曲のライブ音源がボーナス・トラックとして追加されています。2011年には日本限定でオリジナルのマスターテープから起こした最新リマスター版がリリースされました。

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