ザ・ローリング・ストーンズ (EP)

ザ・ローリング・ストーンズ：デビューEPが放つ初期衝動

1964年1月、ザ・ローリング・ストーンズは彼らのキャリア最初のEP『ザ・ローリング・ストーンズ』をリリースしました。この作品は、後にバンドの代名詞となる独自のサウンドを確立する前の、初期衝動に満ちた彼らの姿をとらえています。注目すべきは、収録されている楽曲が全てカバー曲であるという点です。

デビューEP誕生の背景

このEPは、バンドにとって初のトップ20ヒットとなった楽曲の勢いを背景に、イギリスのレーベルであるデッカ・レコードによってリリースされました。当時、アルバム制作に進む前に、ストーンズの商業的成功を試すためのテスト的な意味合いも持っていたと言えるでしょう。レコーディングは1963年8月と11月に行われ、選曲された4曲は、ストーンズが影響を受けたR&Bや、アメリカで流行していた楽曲から選ばれた、彼らが愛した音楽の精髄を反映した内容となっています。

荒削りなサウンドと商業的成功

サウンド面においては、まだ荒削りな部分も残るものの、そのエネルギーと情熱は圧倒的です。このEPは、リリースされるとイギリスのEPチャートで1964年2月に堂々の1位を獲得。その人気は海を越え、同年にはカナダでも発売されました。イギリス盤と同一の内容で、ジャケット写真やレーベル番号も同様でしたが、カナダ盤はイギリスでプレスされたことが記録に残っています。

各楽曲の魅力と再評価

音楽評論家ブルース・エーダーは、AllMusicにおいて、アーサー・アレクサンダーのカバー「ユー・ベター・ムーヴ・オン」を特に高く評価しています。この曲は、ストーンズがコンサートでも演奏していたお気に入りの1曲であり、彼らの持ち味であるブルージーでハードなR&Bとはまた異なる、ソフトで叙情的な一面を示す楽曲として、バンドの幅の広さを示したと評しています。

一方で、「バイ・バイ・ジョニー」と「マネー」は、1972年の『モア・ホット・ロックス』に収録されるまでアメリカでは公式にリリースされていませんでした。「ユー・ベター・ムーヴ・オン」は1965年の『ディッセンバーズ・チルドレン』に、「ポイズン・アイヴィー」は2002年の『モア・ホット・ロックス』（リマスター・バージョン）にそれぞれ収録されるなど、このEP収録の楽曲は、後年になって彼らの作品に再収録され、再評価されることになります。

長らく忘れられた名盤、そして現代への継承

リリースから数十年間、このEPは入手困難な作品として知られていました。しかし、2004年、アブコ・レコードによるボックスセット『シングルズ 1963-1965』にて初めてCD化され、一般に広く聴かれる機会が得られることになります。その後も、限定版ヴィニールボックスセットや、7インチヴィニール盤として再リリースされるなど、現在でも根強い人気を誇ります。日本でも、ロンドン・レコードから12インチ盤が発売され、ユニークな特典としてコンドームを模した小型のサックが添付されていたという逸話も残されています。

演奏メンバー

ミック・ジャガー：リードヴォーカル、タンバリン
ブライアン・ジョーンズ：ギター、バックヴォーカル、ハーモニカ、パーカッション
キース・リチャーズ：ギター、バックヴォーカル
チャーリー・ワッツ：ドラムス
* ビル・ワイマン：ベースギター、バックヴォーカル

このEPは、後のストーンズの輝かしいキャリアを予感させる、彼らの原点ともいうべき作品です。荒削りながらも力強い演奏と、選曲された楽曲から、彼らがR&Bという音楽ジャンルにいかに深い愛情と情熱を注いでいたかが伺えます。長らく入手困難だったにも関わらず、現在でも高い人気を誇るこのデビューEPは、ストーンズファンのみならず、ロック史を語る上で欠かせない、重要な作品と言えるでしょう。

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