シアトル日本庭園

シアトル日本庭園

アメリカ合衆国ワシントン州シアトル市にあるワシントンパーク植物園の中に佇むシアトル日本庭園は、静寂に包まれた約14,000平方メートル（3.5エーカー）の広さを誇る日本式庭園です。このワシントンパーク植物園はワシントン大学が主導して運営されているため、この庭園が「ワシントン大学日本庭園」という名で紹介されることも珍しくありません。

沿革

庭園の構想は、1937年にワシントンパーク植物園内に日本庭園を整備する計画が決定されたことに遡ります。しかし、その実現は、第二次世界大戦とその後の人種的・政治的な緊張が和らぐのを待つ必要がありました。

資金集めが本格化したのは1957年で、植物園財団が中心となって活動を展開しました。財団は東京都の公園緑地部長であった森脇竜雄氏に協力を仰ぎ、その助言を受けて井下清氏と飯田十基氏が設計者として指名されました。

1959年には、井下氏と飯田氏の手によって庭園の設計計画が完成します。実際の建設作業は、飯田十基氏と北村信正氏の監修のもと、主に地元の才能ある日系アメリカ人たちによって進められました。飯田氏は、工事実施の統括役としてウィリアム・ヨロズ氏を主任請負人に、庭園の要となる庭石の配置にはリチャード・ヤマサキ氏を、そして建築物の建設にはケイ・イシミツ氏をそれぞれ担当者として選びました。庭園の造成は翌1960年に始まり、同年中に無事完成を迎えます。シアトル日本庭園は、太平洋戦争終結後、アメリカ西海岸において比較的早期に作られた日本庭園であり、その後のアメリカ国内での日本庭園建設に大きな影響を与えたとされています。

庭園内に設けられていた茶室は、1959年に東京都から寄贈されたものですが、残念ながら1973年に放火により焼失してしまいました。その後、この茶室は1980年から1981年にかけて、ヤスノリ・フレッド・スギタ氏の尽力により元の姿に再建されました。

2001年から2002年にかけては、コウイチ・コバヤシ氏の指揮のもと、庭園全体の改修作業が行われ、景観の維持・向上が図られました。また、この庭園の作庭に貢献し、1988年まで顧問を務めたリチャード・ヤマサキ氏（1921年-2008年没）を偲ぶ追悼式典が2008年3月に開催されています。さらに、長年の功績が認められ、2020年12月1日には令和2年度の外務大臣表彰を受賞しています。

運営

シアトル日本庭園は、ワシントンパークの南西側の角に位置しています。ワシントンパークの敷地自体はシアトル市が所有していますが、植物園の管理・運営はシアトル市公園局、ワシントン大学、そして非営利組織である植物園財団が共同で行っており、その中でもワシントン大学が中心的な役割を担っています。

庭園は、例年冬季にあたる数ヶ月間は閉鎖されます。それ以外の期間は一般に公開されており、来園者は朝から日没まで庭園を散策することができます。ただし、開園時間は季節の移り変わりによって変動するため、事前に確認することが推奨されます。

この庭園は、シアトル市民や観光客にとって、都市の喧騒から離れて日本の美意識に触れることができる貴重な場所となっています。

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