森脇竜雄

森脇 竜雄（もりわき たつお）

日本の造園家、作庭家。1904年（明治37年）2月22日に山口県岩国市で誕生し、1973年（昭和48年）3月25日にその生涯を閉じた。主に東京都の公園緑地行政に深く関与し、戦災復興期から高度経済成長期にかけての首都東京の緑地整備に重要な役割を果たした人物である。また、日本造園学会会長などの要職を歴任し、シアトル日本庭園の作庭にも携わるなど、国内外で幅広い活動を行った。生物学者の森脇大五郎は実弟にあたる。

生涯

森脇竜雄は1904年、現在の山口県岩国市に生まれた。旧制第六高等学校での学びを経て、東京帝国大学農学部林学科へ進学。日本の造園学の基礎を築いた一人である本多静六に師事し、造園学の研究に励んだ。1927年に同学科を卒業後、大学院へ進み、1929年に林学の課程を修了した。大学院修了後は、東京帝国大学農学部林学科造林学第二講座にて助手として勤務し、教育と研究に携わった。

1931年、森脇は東京市（現在の東京都）に奉職し、公園課でのキャリアを開始した。都市における公園や緑地の整備が社会的な課題となる中、彼は実務の場で経験を積んでいく。戦後、日本の復興期を迎える中、1949年に東京都建設局公園緑地部公園観光課長に就任。戦災で失われた首都の緑を回復させ、新たな都市公園を計画・整備する重責を担うこととなった。

1954年には同局の公園緑地部長に昇進。この時期、東京は急速な都市化と人口集中が進んでおり、都民の生活環境における緑の重要性が高まっていた。森脇は東京都の緑地行政の責任者として、公園緑地の確保と質の向上に向けた政策立案と実施を主導した。彼の指揮のもと、多くの新規公園の開園や既存公園の拡充・改修が進められ、今日の首都の公園緑地の基盤形成に大きく貢献した。

国際的な視野も持ち合わせていた森脇は、1958年にカナダのモントリオールで開催された第6回国際造園協会会議に日本代表として参加。この機会に北米各地の都市公園事業を精力的に視察し、得られた知見を日本の造園界に還元した。また、1959年には翌年に開催を控えた東京オリンピックの組織委員会施設特別委員会の委員を務め、大会関連施設の緑化や環境整備にも深く関与した。

1960年からは、母校である東京大学農学部で非常勤講師を兼任し、後進の育成にも力を注いだ。

1971年に長年勤め上げた東京都庁を退職した後も、造園分野での活動を止めることはなかった。退職後すぐに財団法人東京都公園協会の常務理事に就任し、東京都公園審議会委員も務めた。翌1972年には東京都公園協会の理事長に就任。同時に首都緑化推進委員会の専門委員長も兼任するなど、晩年まで公園・緑地の管理運営や緑化推進事業に尽力した。

作庭活動においても、国内外でその手腕を発揮した。特に、アメリカ合衆国ワシントン州シアトル市にあるシアトル日本庭園の作庭に携わったことは、彼の業績の中でも特筆すべき一つである。日本の伝統的な庭園文化を海外に紹介し、国際的な文化交流に貢献した仕事として高く評価されている。その他にも複数の庭園作りに携わったとされる。

著書としては、1961年に『アメリカの公園めぐり』を刊行している。これは、1958年の北米視察の成果をまとめたもので、当時の日本の造園関係者にとって、アメリカの都市公園の現状を知るための貴重な資料となった。

森脇竜雄の生涯は、まさに戦後の日本の都市公園の発展と歩みを共にしたと言える。東京都における緑地行政のリーダーとしての手腕、日本造園学会での指導、国際的な活動、そして作庭家としての創造性など、彼の多岐にわたる貢献は、現代の都市空間における緑の役割を考える上で、今なお重要な示唆を与え続けている。

著書

『アメリカの公園めぐり』 東京都公園協会, 1961年

参考文献

佐藤昌「森脇竜雄君を偲ぶ」『造園雑誌』1973年10月号

関連人物

森脇大五郎（弟、生物学者）
本多静六（師事した人物）

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