シェールオイル

シェールオイルとは

シェールオイルは、オイルシェールと呼ばれる頁岩（けつがん）から、熱分解や水素化といったプロセスを経て生産される合成原油の一種です。タイトオイルの一種であり、特に経済や地政学の分野で注目されています。

シェールオイルの生産

2000年代初頭に開発された「高圧破砕法（フラクチャリング）」という採掘技術により、アメリカ合衆国やカナダを中心に生産が急増しました。この技術革新により、アメリカの原油生産量は2008年の日量約500万バレルから、2014年には800万バレルを超え、2018年には日量平均1090万バレルに達しました。

シェールオイルがもたらした影響

シェールオイルの増産は、世界のエネルギー市場に大きな影響を与えました。国際エネルギー機関（IEA）は、アメリカのシェールオイル生産が、世界の石油需要増加分をほぼ賄えると予測しました。また、アメリカの原油生産量は、シェールオイルの増産に牽引され、2018年には45年ぶりに世界最大となりました。

生産量の増加に伴い、シェールオイルのフルサイクルコスト（生産にかかる全ての費用）は低下し、2019年時点では1バレル50ドル以下で採算が取れるようになりました。これにより、OPEC（石油輸出国機構）も戦略転換を迫られ、生産量維持を決定しました。

しかし、原油価格の下落により、2015年にはアメリカのシェールオイル関連企業が破綻するなど、厳しい状況も生まれました。2020年には、新型コロナウイルスの影響による原油価格暴落により、大手シェールオイル開発会社が破綻しました。

2022年のロシアによるウクライナ侵攻により原油価格が高騰した際には、OPECはシェールオイル企業に対し、株主への利益還元だけでなく、増産への投資を促すなど、協調体制を築く姿勢を見せています。

シェールオイルの年表

2015年: IEAが、シェールオイル増産によりOPECの市場シェア回復が困難との見解を示す。
2015年: アメリカが40年ぶりに原油輸出を解禁。
2017年: アメリカのシェールオイルが1バレル40ドルでも採算が取れるようになる。
2018年: IEAが、アメリカのシェールオイル生産が2023年に大幅に増加すると予測。
2019年: アメリカの原油生産量が45年ぶりに世界最大となる。
2019年: アメリカが70年ぶりに石油の純輸出国となる。
2020年: 原油価格暴落により、シェールオイル関連企業が破綻。
2022年: アメリカの原油生産量が過去最高を更新すると予測。
2022年: ロシアのウクライナ侵攻を受け、石油メジャーがシェールオイルの増産を表明。OPECがアメリカのシェールオイル企業に増産を働きかける。

フルサイクルコスト

シェールオイルの生産コストは、技術革新により低下傾向にあります。2014年には1バレル70〜90ドルと試算されていましたが、2017年には30ドル以下という分析も出ています。2022年には、新規開発の油田の損益分岐点が37ドルまで下がり、中東の陸上油田に迫る水準となりました。

地政学的見地

アメリカは、長年エネルギーの安定確保を重要な政策課題としてきました。シェールオイルの生産拡大により、中東への依存度が低下し、中東地域への関与が変化しています。ロシアのウクライナ侵攻後は、シェールオイル・ガス生産が市場の安定化に貢献しているとの見方も出ています。

日本における動向

日本でも、2012年に石油資源開発が鮎川油ガス田でシェールオイルの採取に成功し、2014年には商業生産を開始しました。秋田県男鹿市では、多段フラクチャリングの試験も行われました。

関連項目

オイルシェール
タイトオイル
シェールガス

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