シェールガス

シェールガスとは

シェールガスは、頁岩（シェール）と呼ばれる泥岩の一種である地層から採取される天然ガスです。太古のプランクトンや藻などが堆積し、長い年月をかけてガス化したもので、化石燃料の一種です。従来のガス田とは異なる場所から産出されるため、非在来型天然ガス資源に分類されます。頁岩気とも呼ばれます。

シェールガスの歴史

アメリカ合衆国では1990年代から新しい天然ガス資源として注目され、開発が進められてきました。カナダ、ヨーロッパ、アジア、オーストラリアなどでも潜在的な資源が注目されており、シェールガス生産量は増加の一途を辿っています。一部の研究者によると、北米の天然ガス生産量の約半分はシェールガスになると予測されています。

シェールガスの特徴

シェールガスは、従来の天然ガスとは異なり、浸透率が低い頁岩層に貯留されています。そのため、ガスを取り出すには、水圧破砕法などの特殊な技術が必要です。

頁岩は、粒子が細かく、流体を通す隙間がほとんどないため、自然の状態ではガスの商業資源にはなりえません。そのため、人工的に割れ目を作る必要があり、水平坑井掘削技術や水圧破砕法という技術が用いられます。水平坑井掘削技術は、ガス層に合わせて坑井を水平に掘削する技術で、水圧破砕法は、高圧で水を注入して岩盤に割れ目を作り、ガスを回収する技術です。これらの技術の確立により、シェールガス生産量は飛躍的に増加しました。

また、シェールガスを含む頁岩は有機物に富み、石油の根源岩にもなり得ます。

シェールガス採掘技術

水平坑井掘削技術

シェールガスが分布する頁岩層は、地下深く水平に広がっているため、従来の垂直な掘削方法では効率よくガスを採取できません。そこで、水平坑井掘削技術が開発されました。この技術は、まず垂直に掘削し、その後ドリルを傾けて水平方向に掘り進むことで、ガス層との接触面積を最大化します。

水圧破砕法

頁岩層にガスは分散しており、そのままでは取り出せません。そのため、掘削後に高圧で水などを注入し、岩盤に割れ目を作ります。この時、岩盤が再び閉じないように、プロパントと呼ばれる砂などを一緒に注入し、割れ目を安定させます。

マイクロサイズミック

水圧破砕の際に発生する微小な振動を観測し、岩盤の破砕状況を把握する技術です。この技術により、効率的に破砕作業を進めることができます。

シェールガスの経済性

シェールガスは、アメリカ東部で100年以上前から生産されていましたが、2000年代初頭までは採算が取れる井戸はわずかでした。しかし、天然ガス価格の上昇と水圧破砕法や水平坑井掘削技術の確立により、シェールガスの生産は収益性が向上しました。しかし、近年では、生産拡大と価格低下により、開発企業の収益が悪化しています。

原油価格の抑制効果

シェールガス生産量の増加は、原油価格の抑制効果をもたらすことが示唆されています。2015年以降、北米のシェールガス生産量の増加は、中東諸国のエネルギー市場における優位性を低下させ、原油価格の下落に寄与しました。

原油価格の下落局面

2020年には、新型コロナウイルスのパンデミックの影響で、原油価格は大幅に下落し、シェールガス企業の収益はさらに悪化しました。

各国の動向

アメリカ合衆国、カナダ、中国などがシェールガスの開発を積極的に進めています。アメリカは、シェールガス生産で世界をリードしており、2013年には世界最大の天然ガス生産国になりました。中国は、シェールガスの埋蔵量が世界最大級ですが、技術的な課題などにより、生産量はまだ限られています。ヨーロッパでは、ポーランドなどがシェールガス開発に関心を示していますが、環境問題への懸念から、慎重な姿勢を保っています。

推定埋蔵量

2013年のアメリカ合衆国エネルギー省の発表によると、シェールガスの資源量は、中国が最も多く、次いでアルゼンチン、アルジェリア、アメリカの順となっています。しかし、シェールガス生産は北米に集中しており、特にアメリカとカナダでの生産が圧倒的です。

環境問題

シェールガスの開発には、環境問題も指摘されています。

温室効果ガス

シェールガスは、燃焼時に二酸化炭素を排出しますが、メタンという温室効果ガス漏洩のリスクも指摘されています。メタンは、二酸化炭素の数十倍の温室効果を持つため、メタン漏洩は地球温暖化を加速させる可能性があります。また、シェールガス採取時に排出される温室効果ガスが、従来の天然ガスや石油よりも多いとの指摘もあります。

水質汚染

水圧破砕法では、大量の水を使用します。また、水圧破砕に使用する水には、化学物質が含まれており、地下水や水源を汚染するリスクがあります。実際に、アメリカでは、シェールガス開発地域で、地下水のメタン濃度の上昇や水の着色、臭いなどの汚染事例が報告されています。

誘発地震

水圧破砕法によって、地層に圧力が加わり、断層が滑りやすくなることで、地震が誘発される可能性も指摘されています。アメリカでは、シェールガス開発が盛んな地域で、地震発生回数が増加しているという報告もあります。

まとめ

シェールガスは、世界のエネルギー供給に大きな影響を与える可能性を秘めた資源ですが、その一方で環境への負荷や経済性の課題も抱えています。今後、シェールガス開発を進めるにあたっては、技術開発や環境対策が重要な課題となるでしょう。

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