シェーンアイヘ/リューダースドルフ軌道
シェーンアイヘ/リューダースドルフ軌道（Straßenbahn Schöneiche bei Berlin）は、ドイツの首都ベルリンの東部に位置する郊外都市、シェーンアイヘとリューダースドルフを結ぶ歴史ある路面電車路線です。2022年時点では、シェーンアイヘ/リューダースドルフ軌道有限会社（Schöneicher-Rüdersdorfer Straßenbahn GmbH）によって運営されています。
20世紀初頭、ベルリン東部の郊外地域は住宅地や保養地として開発が進み、それに伴い公共交通への需要が高まりました。当時、シェーンアイヘや現在のリューダースドルフにあたるカルクベルケは、ベルリンSバーンの路線から離れていたため、新たな交通手段の必要性が認識されました。この背景から、鉄道路線への接続を目指す交通機関の建設が決定されます。
1910年8月28日、フリードリヒスハーゲン駅とシェーンアイヘ間を結ぶ軌間1,000 mmの鉄道として開業しました。その後、1912年にはカルクベルケへの延伸が実現します。開業当初は電化されておらず、ベンジンを燃料とする内燃機関車が客車を牽引していました。しかし、機関車の性能不足やベンジンの有害性が問題となり、わずか2年後の1914年には電化が施されます。また、開業当初はシェーンアイヘ方面とカルクベルケ方面とで運営事業者が異なっていましたが、運営上の不都合から1916年に両区間を統合する措置が取られました。
1920年代には、ベルリン市電と同じ1,435 mmへの軌間変更が検討されましたが、これは実現しませんでした。その代わりに、路線の複線化や新しい車両の導入など、輸送力の増強策が講じられました。また、リューダースドルフからさらに路線を延ばす計画も持ち上がりましたが、第二次世界大戦の影響を受けて実現には至りませんでした。戦時下で老朽化した橋梁の架け替えも、終戦後の課題として持ち越されることとなります。
終戦後、東ドイツの一部となったシェーンアイヘ/リューダースドルフ軌道は、1948年以降に民間から公営へと運営形態が変更されました。幾度かの組織再編を経て、1952年にはシェーンアイヘ/リューダースドルフ交通人民公社（VEB (G) Verkehrsbetriebe Schöneiche-Rüdersdorf）が設立され、1963年にはヴォルタースドルフ軌道の運営組織と統合し、シェーンアイヘ/ヴォルタースドルフ人民公社（VEB (K) Schöneiche-Woltersdorf）の一部となります。
この時期には、車庫内で古い車両の近代化が進められたり、東ドイツ各地で廃車となった路面電車の部品を利用してボギー車が製造されたりといった取り組みも見られました。しかし、1970年に運営組織がフランクフルト（オーダー）動力交通人民公社に統合されたことで、これらの自社での車両関連の活動は中止されました。以降は、他都市から譲渡された2軸車の導入が中心となります。路線に関しては、1970年代初頭にリューダースドルフに大規模な露天掘り石灰石鉱山を開発する計画が浮上したことに伴い、一部区間で経路変更が行われ、現在の全長14.1 kmの路線網が完成しました。
その後も路面電車の運行は続きましたが、車両の補充は行われた一方で、線路や電停、架線といったインフラ設備の更新は十分に行われず、老朽化が深刻な問題となりました。その結果、路線の廃止が検討される状況にまで追い込まれます。ドイツ再統一後の1991年に設立されたシェーンアイヘ/リューダースドルフ軌道有限会社は、この状況を打開するため、老朽化した2軸車を置き換える目的で、各都市から連接車の譲渡を受けたり、施設の段階的な改修を進めたりと、路線の近代化を積極的に推進しました。しかし、2000年には主要な株主からの資金調達に不透明さが生じ、再び廃止の危機に直面します。この危機は、2001年にコネックス・グループ（現在のヴェオリア）の子会社であるニーダーバルニマー鉄道が筆頭株主となったことで回避されました。これ以降、さらなる近代化の一環として、バリアフリーに対応した超低床電車の導入が継続的に進められています。
2022年現在、シェーンアイヘ/リューダースドルフ軌道有限会社は、ベルリンSバーンやベルリン市電と接続する全長14.1 km、20の停留所を持つ路線を運営しています。この路線は「88号線」という系統番号が付与されており、ベルリン州やブランデンブルク州の公共交通事業者で構成されるベルリン・ブランデンブルク運輸連合（VBB）の一員です。運行間隔は、平日昼間が約20分を基本とし、ラッシュ時は10分間隔に増便されます。一方、オフピーク時間帯や土曜日・日曜日には30分から60分間隔での運行となります。平日の平均的な利用客数は1日あたり約3,400人を記録しており、近年は沿線の住宅地開発や観光客の増加に伴い、利用者数は増加傾向にあります。
2022年時点において、シェーンアイヘ/リューダースドルフ軌道に在籍する営業用車両は主に以下の通りです。平日ラッシュ時のごく一部の便を除き、超低床電車または部分超低床電車が運行の中心となっています。
GT6：ドイツのハイデルベルク市電で使用されていたデュワグ製の2車体連接車です。1990年代に近代化のために複数両が譲渡されましたが、床が高い構造のためバリアフリーに適していません。2022年現在は、両運転台タイプの車両（GT6Z）2両（47号、48号）が、主にラッシュ時や予備として在籍しています。
KTNF6：ドイツのコトブス市電から導入された片運転台の3車体連接車です。元々は高床式の2車体連接車KT4でしたが、1990年代に床の低い中間車体が追加され、部分低床構造に改造されています。2022年時点で4両が在籍しており、そのうち1両はコトブスからハンガリーのセゲド市電に譲渡されたものの、使用されないまま当軌道に再譲渡されたという珍しい経歴を持っています。
アーティック（Avenio）：高床式車両を置き換え、全ての列車を低床化する目標の下で導入が進められている片運転台・3車体連接式の超低床電車です。2018年から運行を開始した2両（51号、52号）は、フィンランドのヘルシンキ市電からの譲渡車両です。一方、2020年に加わった1両（53号）は、シェーンアイヘ/リューダースドルフ軌道にとって実に91年ぶりとなる、全く新しい製造車両です。
ヴォルタースドルフ軌道（Straßenbahn Woltersdorf）：ヴォルタースドルフを走る路面電車です。2020年からはシェーンアイヘ/リューダースドルフ軌道有限会社がその運営を担っています。
このシェーンアイヘ/リューダースドルフ軌道は、地域に根差した交通機関として、その長い歴史の中で様々な変遷や困難を乗り越えながら、現代に至るまで運行を続けています。
歴史
20世紀初頭、ベルリン東部の郊外地域は住宅地や保養地として開発が進み、それに伴い公共交通への需要が高まりました。当時、シェーンアイヘや現在のリューダースドルフにあたるカルクベルケは、ベルリンSバーンの路線から離れていたため、新たな交通手段の必要性が認識されました。この背景から、鉄道路線への接続を目指す交通機関の建設が決定されます。
1910年8月28日、フリードリヒスハーゲン駅とシェーンアイヘ間を結ぶ軌間1,000 mmの鉄道として開業しました。その後、1912年にはカルクベルケへの延伸が実現します。開業当初は電化されておらず、ベンジンを燃料とする内燃機関車が客車を牽引していました。しかし、機関車の性能不足やベンジンの有害性が問題となり、わずか2年後の1914年には電化が施されます。また、開業当初はシェーンアイヘ方面とカルクベルケ方面とで運営事業者が異なっていましたが、運営上の不都合から1916年に両区間を統合する措置が取られました。
1920年代には、ベルリン市電と同じ1,435 mmへの軌間変更が検討されましたが、これは実現しませんでした。その代わりに、路線の複線化や新しい車両の導入など、輸送力の増強策が講じられました。また、リューダースドルフからさらに路線を延ばす計画も持ち上がりましたが、第二次世界大戦の影響を受けて実現には至りませんでした。戦時下で老朽化した橋梁の架け替えも、終戦後の課題として持ち越されることとなります。
終戦後、東ドイツの一部となったシェーンアイヘ/リューダースドルフ軌道は、1948年以降に民間から公営へと運営形態が変更されました。幾度かの組織再編を経て、1952年にはシェーンアイヘ/リューダースドルフ交通人民公社（VEB (G) Verkehrsbetriebe Schöneiche-Rüdersdorf）が設立され、1963年にはヴォルタースドルフ軌道の運営組織と統合し、シェーンアイヘ/ヴォルタースドルフ人民公社（VEB (K) Schöneiche-Woltersdorf）の一部となります。
この時期には、車庫内で古い車両の近代化が進められたり、東ドイツ各地で廃車となった路面電車の部品を利用してボギー車が製造されたりといった取り組みも見られました。しかし、1970年に運営組織がフランクフルト（オーダー）動力交通人民公社に統合されたことで、これらの自社での車両関連の活動は中止されました。以降は、他都市から譲渡された2軸車の導入が中心となります。路線に関しては、1970年代初頭にリューダースドルフに大規模な露天掘り石灰石鉱山を開発する計画が浮上したことに伴い、一部区間で経路変更が行われ、現在の全長14.1 kmの路線網が完成しました。
その後も路面電車の運行は続きましたが、車両の補充は行われた一方で、線路や電停、架線といったインフラ設備の更新は十分に行われず、老朽化が深刻な問題となりました。その結果、路線の廃止が検討される状況にまで追い込まれます。ドイツ再統一後の1991年に設立されたシェーンアイヘ/リューダースドルフ軌道有限会社は、この状況を打開するため、老朽化した2軸車を置き換える目的で、各都市から連接車の譲渡を受けたり、施設の段階的な改修を進めたりと、路線の近代化を積極的に推進しました。しかし、2000年には主要な株主からの資金調達に不透明さが生じ、再び廃止の危機に直面します。この危機は、2001年にコネックス・グループ（現在のヴェオリア）の子会社であるニーダーバルニマー鉄道が筆頭株主となったことで回避されました。これ以降、さらなる近代化の一環として、バリアフリーに対応した超低床電車の導入が継続的に進められています。
運用
2022年現在、シェーンアイヘ/リューダースドルフ軌道有限会社は、ベルリンSバーンやベルリン市電と接続する全長14.1 km、20の停留所を持つ路線を運営しています。この路線は「88号線」という系統番号が付与されており、ベルリン州やブランデンブルク州の公共交通事業者で構成されるベルリン・ブランデンブルク運輸連合（VBB）の一員です。運行間隔は、平日昼間が約20分を基本とし、ラッシュ時は10分間隔に増便されます。一方、オフピーク時間帯や土曜日・日曜日には30分から60分間隔での運行となります。平日の平均的な利用客数は1日あたり約3,400人を記録しており、近年は沿線の住宅地開発や観光客の増加に伴い、利用者数は増加傾向にあります。
車両
2022年時点において、シェーンアイヘ/リューダースドルフ軌道に在籍する営業用車両は主に以下の通りです。平日ラッシュ時のごく一部の便を除き、超低床電車または部分超低床電車が運行の中心となっています。
GT6：ドイツのハイデルベルク市電で使用されていたデュワグ製の2車体連接車です。1990年代に近代化のために複数両が譲渡されましたが、床が高い構造のためバリアフリーに適していません。2022年現在は、両運転台タイプの車両（GT6Z）2両（47号、48号）が、主にラッシュ時や予備として在籍しています。
KTNF6：ドイツのコトブス市電から導入された片運転台の3車体連接車です。元々は高床式の2車体連接車KT4でしたが、1990年代に床の低い中間車体が追加され、部分低床構造に改造されています。2022年時点で4両が在籍しており、そのうち1両はコトブスからハンガリーのセゲド市電に譲渡されたものの、使用されないまま当軌道に再譲渡されたという珍しい経歴を持っています。
アーティック（Avenio）：高床式車両を置き換え、全ての列車を低床化する目標の下で導入が進められている片運転台・3車体連接式の超低床電車です。2018年から運行を開始した2両（51号、52号）は、フィンランドのヘルシンキ市電からの譲渡車両です。一方、2020年に加わった1両（53号）は、シェーンアイヘ/リューダースドルフ軌道にとって実に91年ぶりとなる、全く新しい製造車両です。
関連事項
ヴォルタースドルフ軌道（Straßenbahn Woltersdorf）：ヴォルタースドルフを走る路面電車です。2020年からはシェーンアイヘ/リューダースドルフ軌道有限会社がその運営を担っています。
このシェーンアイヘ/リューダースドルフ軌道は、地域に根差した交通機関として、その長い歴史の中で様々な変遷や困難を乗り越えながら、現代に至るまで運行を続けています。
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