シクラメンのかほり

『シクラメンのかほり』は、1975年 4月10日に布施明がリリースしたシングルで、シンガー[[ソングライター]]の小椋佳によって制作されました。この曲のインスピレーションは、当時小椋が勤めていた第一勧業銀行の赤坂支店での出来事から生まれました。彼が休憩中、馴染みのないシクラメンの花を目にしたことがきっかけとなり、この美しい花をテーマにしました。

小椋は、布施のマネージャーであった小坂洋二から『淋しい時』という曲を持ち込まれ、さらにカップリング曲の依頼を受けた際に『シクラメンのかほり』を提供しました。小椋は初めこの曲を古風なフォークソングに過ぎないと感じ、ヒットするとは思わなかったとのことです。しかし、彼の楽曲を評価した渡辺プロダクションの関係者たちの判断で、曲はリリースされることとなりました。

歌詞には、エルヴィス・プレスリーの「マリー・イン・ザ・モーニング」からのフレーズや北原白秋の詩からの引用が含まれており、独自の表現が生み出されています。歌詞の中心には「借り物」というテーマがあり、特に2番目の歌詞に「薄紫のシクラメン」が強調されることで、曲名の由来ともなっています。

小椋はさらに、出来上がった曲を自らのレコーディングには使用せず、間もなくお蔵入りにする予定でした。しかし、曲のヒットは彼にとって驚きの出来事であり、1975年の東京音楽祭において布施がこの曲を披露したことから大ヒットに繋がりました。『第17回日本レコード大賞』やFNS歌謡祭グランプリを受賞するなど、一世を風靡しました。実際にオリコンでは105.2万枚という売上を記録し、布施にとって初のミリオンセラー作品となりました。

『NHK紅白歌合戦』では、1975年に初披露された際には非常に注目を集め、その後も3度のパフォーマンスを経て多くのファンに愛されています。この曲の仮名遣いに関しても面白い背景があります。歴史的仮名遣いでは「かをり」が正しいとされていますが、曲名は「かほり」とされ、これはかつてのスタンダードでもありました。小椋が妻の名前である「佳穂里」を連想して作ったとも言われていますが、本人はそのことを否定しており、あくまで俗説だと述べています。

発売当時の価格は500円であり、この楽曲は数回のカバーもされ、多くのアーティストによって歌い継がれています。渥美二郎や伊東ゆかり、香西かおりなど、さまざまなジャンルのアーティストたちがこの名曲をカバーし、彼らなりの解釈を加えています。『シクラメンのかほり』は、世代を超えて愛され続ける日本の音楽の名作であり、その美しさと感動をもたらす力は今なお健在です。

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