シグナス NG-19

NG-19ミッションは、ノースロップ・グラマン社が開発・運用する無人の宇宙補給機「シグナス」による、国際宇宙ステーション（ISS）への通算19回目の輸送飛行です。これは、NASAとの商業補給サービス契約（CRS-2）の下で実施された18回目のISS向けシグナス補給ミッションにあたります。また、CRS-2契約においては8回目のシグナスによる打ち上げでした。

この商業宇宙輸送システムは、オービタルATK社（現在のノースロップ・グラマン・イノベーション・システムズ）とNASAが協力し、COTS（商業軌道輸送サービス）計画の一環として開発されました。輸送システムは、オービタルATKが開発した中型打ち上げロケット「アンタレス」と、タレス・アレーニア・スペース社製の与圧貨物モジュール、そしてオービタルの衛星バス技術を基にしたサービスモジュールから構成される宇宙船「シグナス」から成ります。

NG-19ミッションでは、ウクライナで組み立てられ、ロシア製エンジンを搭載したアンタレス200シリーズのロケットが使用されました。この構成のアンタレスは、今回の打ち上げが最後となります。今後のシグナス補給ミッションのうち、続く3回はスペースX社のファルコン9ロケットによって行われる予定です。その後は、ウクライナやロシアの部品に依存しない、次世代型のアンタレス300シリーズロケットが導入される計画となっています。

シグナス宇宙船は、バージニア州ダレスで製造および統合されました。サービスモジュールと与圧貨物モジュールは、打ち上げが行われる射場で結合されます。ミッション全体の制御は、バージニア州ダレスとテキサス州ヒューストンにある管制センターから遠隔で行われます。

NG-19で使用されたシグナス宇宙船は、拡張型の与圧貨物モジュールを搭載しており、これはこの拡張型モジュールとしては14回目の飛行でした。

積荷と科学研究

今回のシグナス宇宙船には、合計で3,729キログラム（約8,221ポンド）の貨物が搭載されました。この貨物には、クルー向けの物資、ISSの運用に必要な機器、そしてISSの軌道上実験室で実施される様々な重要な科学実験のための機材が含まれています。到着した新たな実験装置は、将来の科学者や探査者へのインスピレーションとなるだけでなく、研究者たちに貴重なデータや洞察をもたらします。

NG-19ミッションで運ばれた主な科学研究は以下の通りです。

Neuronix（ニューロニクス）: 神経損傷による麻痺などの治療法開発を目指す実験です。ISS国立研究所の支援のもと、微小重力環境を利用して、神経細胞の3次元的な組織培養が可能かを確認します。また、特定の神経疾患（麻痺、アルツハイマー病、パーキンソン病など）に対する遺伝子治療の有効性をテストします。地球上では、これらの治療法に必要な複雑な3D細胞モデルを十分に成長させることが難しいため、宇宙の微小重力が創薬研究や遺伝子治療の効果検証に新たな道を開く可能性を探ります。

宇宙船火災実験（Saffire-VI）: 宇宙空間での火災の挙動を理解することは、将来の宇宙船の防火・消火システム開発に不可欠です。しかし、クルーが滞在中の宇宙船内で火炎実験を行うことは非常に危険です。このため、宇宙船火災実験（Saffire）は、シグナス宇宙船がISSから分離して大気圏に再突入する直前に実施されます。Saffire-VIは、この実験シリーズの最後を飾るもので、様々な酸素濃度での可燃性をテストし、これまでの実験で得られた知見を基に、火災の検知・監視能力や、火災後の清掃技術の実証を目的としています。

長期滞在飲料水ディスペンサー（Exploration PWD）: ISSの長期滞在において、安全な飲料水を供給するための新しいディスペンサーシステムです。このシステムは、高度な水の消毒技術と微生物の増殖抑制方法を使用し、熱湯を供給することも可能です。これは、2008年に打ち上げられたシステムの改良版となります。

MVP-Cell-02A: NASA生物物理科学部門（BPS）が支援するこの実験は、生物が宇宙環境（特に微小重力）にどのように適応・進化するかを理解することを目的としています。この実験では、枯草菌が特別なハードウェア内で異なる条件下で培養され、研究者は微生物の適応プロセスが微小重力環境と宇宙飛行全体でどのように異なるかを調査します。MVP-Cell-02Aは、過去に行われたMVP-Cell-02実験の再実験にあたります。

もう一度検索