シコルスキー S-55

シコルスキー S-55

シコルスキー S-55は、アメリカの航空機メーカー、シコルスキー・エアクラフト社によって製造された革新的な貨物輸送用ヘリコプターです。この機体は、シコルスキー社の前モデルであるS-51を基に進化し、デザインや機能面で多くの改良が施されています。特に目を引くのは、機首に搭載された空冷星型レシプロエンジンの斜め設置で、これにより機内のスペースが広く確保されている点です。さらに、S-55は民間および軍事用として世界各国に採用され、その高い有用性を証明しました。

開発経緯

S-55の開発は、第二次世界大戦中にアメリカ陸軍がヘリコプターの可能性を探る中で始まりました。シコルスキー社は、乗員2名と兵員10名を搭載可能で、340キロメートルの航続距離を持つ「H-19」の開発を進めました。試作機であるYH-19が1949年に初飛行を果たすと、朝鮮戦争の影響でその実用性が認識され、アメリカ空軍に採用されました。

その後、H-19は陸軍や海軍によっても多様な改良型が生産され、特に「チカソー」と呼ばれる愛称で親しまれました。この様にS-55は、兵員輸送機としての役割を果たしつつ、さまざまな軍事任務にも貢献しました。

構造

S-55は、独自の設計が施されており、600馬力のプラット・アンド・ホイットニー製ワスプR-1340が機首に35度斜めに配置されています。この設計により、重心が下がり、安定性が向上しています。また、駆動軸が斜めに設置されていることで、機内に9.6立方メートルの広いスペースが確保されています。これにより、乗員や貨物の積載が効率良く行われるようになっています。

加えて、S-55の胴体はアルミニウム合金とマグネシウム合金を使用した堅牢なセミモノコック構造です。キャビン後部には電気室も設けられ、無線機やヒーターなどの重要な機器が搭載可能です。軍事型では10人分の座席もしくは6名分の担架が装備されていましたが、民間型では7人分の座席が標準となっています。

世界展開

1950年代後半、S-55は多くの国で軍や民間航空会社に採用され、長年にわたって利用されました。特にイギリスでは、ウェストランド社によるライセンス生産が行われ、ホワールウィンドと名付けられました。このモデルは英国空軍や海軍などに広く使われ、その後の改良型も多くの場所で活躍しました。

日本においても、1952年に航空飛行禁止が解除されると、海上保安庁が2機を導入し、その後、三菱重工業がノックダウン生産を開始しました。陸上自衛隊ではH-19として救難機に採用され、1962年までに72機がライセンス生産されました。特に、1959年の伊勢湾台風では救難任務に従事し、多くの人命が救われる結果となりました。

事故と運用の歴史

S-55は数々の任務で活躍したものの、事故もありました。特に海上保安庁の機体が墜落するなどのケースが報告されています。また、自衛隊の機体でも墜落事故が発生したため、構造改良が求められました。これにより、テールブームの設計が変更されるなど、改良が施されました。

技術的スペック

• - 全長：12.85メートル
• - 全高：4.06メートル
• - 主回転翼直径：16.16メートル
• - 自重：2,380キロ
• - 全備重量：3,600キロ
• - 航続距離：580-650キロ
• - 初飛行：1949年11月10日

結論

シコルスキー S-55は、その革新的な設計と高い実用性により、多くの国で愛用されてきました。数十年にわたる運用は、ヘリコプターの重要性を広く知らしめる結果となり、航空機の歴史において欠かせない存在となっています。

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