シコルスキー S-69

シコルスキー S-69

シコルスキー S-69（米陸軍の制式名 XH-59）は、先進的な回転翼技術を実証するために開発された複合ヘリコプター実験機です。この機体は1973年7月26日に初飛行を果たし、その後の航空技術における重要なステップとなりました。

開発の目的

S-69の開発には主に二つの目的がありました。一つ目は、高速飛行時に空気抵抗を効果的に抑えることができる新しい回転翼、いわゆるABCローターの特性を検証することです。二つ目は、相反する方向に回転するローター羽根による反動の相殺効果を示し、従来のテールローターによるトルク対策の必要性を排除することでした。このアプローチは、航空機の効率性を大幅に向上させる可能性を孕んでいました。

ABCローターの特徴

S-69は、アドヴァンスト・ブレイド・コンセプト・ローター（ABCローター）を初めて採用しました。このローターは、羽根の前進時から後退時にかけて迎角を周期的に変化させることができるリジッドローターで構成されています。具体的には、上下に配置された各回転翼の前進側羽根が揚力を発生させ、後退側はその作業を行わないため、より効果的な揚力バランスを実現しました。

この新型ローターによって、高速飛行に適した形状の羽根を用いることが可能となり、従来のヘリコプターが持つ速度の限界を克服する道が開かれました。特に、メインローターの前進側が遷音速に達して衝撃波を生じる問題を解決するため、後退側の逆流や失速に依存しない飛行が実現できるのです。

性能と実績

S-69は、1981年までに106回の飛行試験を行い、最高速度263ノット（約487 km/h）を記録しました。加えて、プラット・アンド・ホイットニー社製のターボジェットエンジンを搭載することで、垂直離着陸を果たす能力も持っていました。しかし、エンジンの出力不足により、実際の運用に必要な条件が満たされず、完全な垂直離着陸が困難でした。

この機体は、2基のターボジェットエンジンと1基のターボシャフトエンジンという構成を持ちましたが、その複雑性と燃費の悪化が課題となりました。特に、ターボジェットエンジンが最も効率を発揮する速度帯が、重量物を運ぶヘリコプターとしては不適であるため、さらなる開発が求められました。

課題と中止

1982年には、アメリカ陸軍による実用化の要望があったものの、シコルスキー社が開発経費を負担しなかったため、この計画は最終的に中止されることになりました。この一連の試験を経て、S-69の技術とデータは後の機体開発に役立てられ、シコルスキー X2やS-97レイダーの登場につながることになります。

仕様

S-69の主な仕様としては、乗員は2名、全長12.42メートル、全高4.01メートル、ローター直径は10.97メートル、最大離陸重量がターボジェット使用時で5,000キログラムに達しました。また、実用上昇限度は4,570メートルに及びます。

このように、シコルスキー S-69は航空技術の革新に寄与し、技術者たちの努力が結実した結果と言えるでしょう。

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