シスター・モーフィン

シスター・モーフィン：複雑な歴史を持つストーンズとフェイスフルの共作曲

ローリング・ストーンズとマリアンヌ・フェイスフルの名曲「シスター・モーフィン (Sister Morphine)」は、ミック・ジャガー、キース・リチャーズ、そしてマリアンヌ・フェイスフルの共作による楽曲です。その誕生からリリースまでには、数々のドラマが秘められています。

マリアンヌ・フェイスフル版の発売禁止とその後

当初、ミック・ジャガーが当時恋人だったマリアンヌ・フェイスフルのためにプロデュースしたこの曲は、1968年7月にレコーディングされました。カップリング曲「サムシング・ベター」と共にシングルとしてリリース予定でしたが、検閲問題の懸念から発売は中止。1969年2月に発売されたものの、すぐに回収されてしまうという憂き目に遭いました。フェイスフルはレコード会社に抗議したものの、彼女のバージョンは長らく世に出ることはありませんでした。しかし、1979年にフェイスフル自身によるセルフカバーが発表され、1987年には初期バージョンの収録されたベストアルバムがリリースされることで、ようやく日の目を見ることになります。

ストーンズ版の誕生とリリース

一方、ローリング・ストーンズは1969年5月に『レット・イット・ブリード』のレコーディングセッションでこの曲を録音していました。当時メンバーだったブライアン・ジョーンズは不参加で、リードギターはライ・クーダーが担当しました。しかし『レット・イット・ブリード』への収録は見送られ、2年後のアルバム『スティッキー・フィンガーズ』に収録されるまでお蔵入りとなりました。コンサートでの初披露は1997年と、発表からかなり後のことになります。

複雑な著作権問題

楽曲のクレジットは当初ジャガーとリチャーズのみでしたが、フェイスフルが提訴した結果、彼女のクレジットも追加されることとなりました。ジャガーはフェイスフルが歌詞にわずかな貢献しかしていないにもかかわらず、全作曲者としての権利を主張していたと語っています。このクレジットをめぐる争いも、「シスター・モーフィン」という楽曲を語る上で欠かせない要素となっています。

歌詞と音楽性

歌詞は、事故で負傷しモルヒネを必要とする男の苦しみを描写したものです。フェイスフル自身の麻薬体験が元になっていると言われています。ストーンズとフェイスフルのどちらのバージョンも、退廃的でミステリアスな雰囲気を漂わせる、独特の楽曲となっています。ストーンズ版ではライ・クーダーのギターが楽曲に深みを与え、独特の世界観を作り出しています。ミック・テイラーは、このクーダーの演奏を高く評価しています。

各バージョンと演奏メンバー

マリアンヌ・フェイスフル版:
1968年レコーディング、1987年ベストアルバムに初収録
1979年セルフカバー、1982年シングルリリース

ローリング・ストーンズ版:
1969年レコーディング、『スティッキー・フィンガーズ』(1971)に収録
コンサート初披露は1997年

ローリング・ストーンズ版演奏メンバー:
ミック・ジャガー (リードボーカル)
キース・リチャーズ (アコースティックギター)
ビル・ワイマン (ベース)
チャーリー・ワッツ (ドラムス)
ライ・クーダー (エレキギター)
ジャック・ニッチェ (ピアノ)

「シスター・モーフィン」は、その複雑な制作過程と楽曲の持つ独特の雰囲気から、多くの音楽ファンを魅了し続けている名曲です。楽曲の誕生秘話と、それを取り巻く様々な出来事を理解することで、より深くこの楽曲を楽しむことができるでしょう。

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