シディ・ベル・アッベス

アルジェリア北西部、マカラ川沿いに位置するシディ・ベル・アッベスは、同名の県の行政の中心地です。この都市の名は、この地に墓があるイスラム教の指導者、シディ・ベル・アッバスに由来するとされています。2008年の統計では、およそ21万3千人がこの街に居住していました。

この地域は古くから農業が盛んで、特にワインや様々な園芸作物の取引が行われる商業の拠点でもあります。かつてシディ・ベル・アッベスは、四つの門を持つ堅牢な城壁に囲まれた都市であり、市内には大学も存在しました。地理的には地中海から約75キロメートル内陸に入った場所に位置しています。

歴史

この地の歴史は、11世紀にさかのぼります。ナイル川と紅海の間に暮らしていたとされるバヌーヒラル族が、その指導者であるシディ・ベル・アッバスに率いられ、アルジェリア東部を含む北アフリカの各地に移住してきたことが伝えられています。近代的な都市の原型が築かれたのは、1843年にフランスがマカラ川沿いに軍事キャンプを設置したことに始まります。その後、1849年には、このキャンプを中心に計画的な農業都市の建設が進められました。1890年には人口が3万人を超え、多くのスペイン人も居住するなど、発展を遂げました。街の一部であるヴィエノ地区には、フランス軍関連の施設が集約され、訓練場やアルジェリア国家警察の組織も置かれていました。しかし、1930年代には都市の近代化が進み、歴史的な城壁は撤去されます。これにより、広々としたブールバールや新しい街区が整備され、かつての都市の姿は大きく変化しました。シディ・ベル・アッベスは、1962年にアルジェリアが独立するまで、フランス外人部隊の主要な訓練拠点および第1外人連隊の司令部が置かれるなど、フランス外人部隊との深いつながりを持っていたことでも知られています。

交通

シディ・ベル・アッベスは、アルジェリア国内の主要都市と鉄道および道路網によってしっかりと結ばれています。例えば、北方向へは約70キロメートル移動すると港湾都市オランに到達し、西方向へは約90キロメートル行くと歴史的な都市トレムセンがあります。空路を利用する場合、最も近い国際空港はオランのエス・セニア空港（Houari Boumediene Airport）となります。また、市内には国内線の利用を主としたシディ・ベル・アッベス空港があり、IATAコードはBFW、ICAOコードはDAOSとして運用されています。

著名な出身者・ゆかりのある人物

シディ・ベル・アッベスは、幾人かの著名な人物を輩出しています。数学者のガストン・ジュリア（1893年 - 1978年）は、フラクタル幾何学におけるジュリア集合の研究でその名を知られています。また、ボクシング元世界ミドル級チャンピオンのマルセル・セルダン（1916年 - 1949年）もこの地とゆかりがあり、彼は1949年の飛行機事故で亡くなりました。俳優のカド・メラッド（1964年 - ）もシディ・ベル・アッベスに関連のある人物として挙げられます。

もう一度検索