シトロエン・C5

シトロエンC5：フランスが生んだ中型ファミリーカーの系譜

シトロエンC5は、フランスの自動車メーカー、シトロエンが2001年に発売した中型ファミリーカーです。エグザンティアの後継車種として誕生し、洗練されたデザインと独自の技術で、多くのファンを魅了しました。本稿では、C5の歴史、デザイン、メカニズム、そして日本市場における展開について詳細に解説します。

初代C5（2001年-2007年）：ハイドロニューマチックサスペンションの進化

初代C5は、5ドアハッチバックとステーションワゴンボディの2種類がラインナップされました。ハッチバックモデルは、トランク部分にノッチバックセダンを思わせるデザインを採用していました。

エンジンは、ガソリンエンジンが1.8L、2.0L、3.0L V6、ディーゼルエンジンが1.6L、2.0L、2.2Lと幅広い選択肢が用意され、日本市場には2.0Lと3.0L V6ガソリンエンジン搭載車が導入されました。

初代C5は、シトロエンの伝統であるハイドロニューマチックサスペンションの進化型である「ハイドラクティブIII」を搭載していました。電子制御による自動的な車高調整機能を備えていましたが、ブレーキとステアリングの油圧制御はサスペンションシステムとは独立しており、従来のシトロエン車に見られた、油圧システムによる統合制御という設計思想からは変化が見られました。この結果、C5の操縦感覚は、従来のハイドロニューマチック車とは異なり、より一般的な自動車に近いものとなりました。

2004年にはマイナーチェンジを実施。フロントフェイスとリアセクションのデザインを一新し、シトロエンの新たなデザインテーマを反映しました。ボディサイズは拡大し、ステアリングに連動する「ディレクショナル・ヘッドライト」や断熱二重ガラスのサイドウインドウなども採用されました。日本市場でもマイナーチェンジ後のモデルが販売されました。

2代目C5（2007年-2015年）：保守的な設計と市場の変化

2007年に発表された2代目C5は、4ドアノッチバックとステーションワゴン（ツアラー）の2ボディタイプが設定されました。パワートレーンには、2.7L V6ディーゼルエンジンが追加されました。

デザイン面では、従来のシトロエン車に見られたセンターメーターが廃止され、一般的なダッシュボードレイアウトに変更。ハイドラクティブサスペンションはオプションとなり、コイルサスペンションのモデルも用意されるなど、比較的保守的な設計となりました。

日本市場では、プジョー・シトロエン・ジャポンから2008年に導入されました。2.0Lと3.0L V6ガソリンエンジンモデルが設定され、日本仕様は全てハイドラクティブサスペンション付きでした。ボディサイズは初代モデルと比べて大型化し、価格も上昇しました。2009年には1.6Lターボエンジンモデルが追加され、2010年から日本でも販売開始されました。

2011年にはマイナーチェンジを実施。LEDポジションランプの追加やテールライト、ホイールデザインの変更、そして価格改定が行われました。

2015年、日本市場での販売が終了し、「C5 Final Edition」が限定販売されました。ハイドラクティブサスペンション搭載モデルとしては、これが最後のモデルとなりました。

中国市場におけるC5

西側市場での販売は終了しましたが、中国市場では東風シトロエンによって生産・販売が継続されています。2017年にはマイナーチェンジモデルが「第三世代C5」として発売され、最新のシトロエンデザイン言語を取り入れ、LEDヘッドライト、大型タッチスクリーン、デジタルメーターパネルなどを装備しました。サスペンションはコイルサスペンションのみとなっています。

まとめ

シトロエンC5は、シトロエンの技術とデザインの進化を体現するモデルでした。初代モデルの革新的なハイドロニューマチックサスペンションから、2代目モデルの保守的な設計への変化、そして中国市場での継続的な販売など、C5の歴史は自動車業界の変化を反映した興味深いものです。日本市場においても、長年にわたり多くのドライバーに愛されたモデルとして、その存在感を示していました。

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