シトロエン・LN

シトロエン・LNの概要

シトロエン・LNは、1975年から1985年までフランスの自動車メーカーシトロエンによって製造された小型大衆車です。この車は、特に若い世代や核家族向けの需要に応え、コンパクトな3ドアの車体を持つのが特徴です。フランスでは、昔から大家族を意識した大きな4ドアや5ドアの車が人気を博していましたが、時代の変化に伴い小型車の重要性が増してきていました。特に、従来型の車両である2CVやディアーヌ、アミなど古い設計の車には、現代のニーズに応じた新たなボトムエンドの大衆車が不足していたのです。

開発の背景

1974年にシトロエンはプジョーの傘下に入ることになり、これをきっかけに急遽LNの開発がスタートしました。LNの車体設計は、プジョー・104クーペと共通しており、フロント部分でのデザインがシトロエンならではの個性を表現しています。室内のデザインにもシトロエンの特色が見られ、ステアリングホイールやシート素材などにも独自の工夫が施されています。駆動方式は前輪駆動で、エンジンは空冷式の水平対向2気筒エンジン（602 cc、32馬力）が縦置きに搭載され、トランスミッションはGSモデルから引き継いだ4速マニュアルが使用されていました。

販売と市場での反応

シトロエン・LNはデビュー時、シトロエンファンから将来的にすべてのシトロエン車がプジョーの技術に基づいてしまうのではないかと懸念されました。しかし、3年後に登場したヴィザがその心配を払拭し、LN自体もシトロエンのブランドイメージを保つため、最初はフランス国内の販売に限られていました。1978年にはマイナーチェンジが行われ、改良版のLNAが誕生。エンジン排気量が652 ccに引き上げられ、出力も36馬力に改善されました。さらに、1982年には新たなバージョンLNA 11が追加され、搭載されたエンジンはプジョー製の水冷直列4気筒（1124 cc、57馬力）に変更され、最高速度も145 km/hに達しました。この変更により、LNは再びプジョー・104と同様のメカニズムに戻ることとなりました。

経済性と後継モデル

LNシリーズは、経済的なランニングコストと優れたシャシー性能に支えられ、1985年まで生産され続けました。多くの利用者にとって、LNは手軽に購入できる大衆車として親しまれ、次世代のシトロエン・AXへの道を開くことになります。また、プジョー・104を基にした兄弟車としてはタルボ・サンバが存在します。

結論

シトロエン・LNは、その革新的なデザインと実用性により、フランスの自動車史において重要な位置を占めたモデルです。時代のニーズに柔軟に対応し、これからの自動車作りに影響を与えた一台と言えるでしょう。

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