シドニー・ギューリック

シドニー・ルイス・ギューリック：日米の架け橋となった宣教師

シドニー・ルイス・ギューリック（1860年4月10日 - 1945年12月20日）は、アメリカ合衆国出身の牧師であり、宣教師です。ユニオン神学校で学び、長年にわたりキリスト教関連団体の要職を務めながら、日本人移民排斥問題の解決に奔走しました。彼は、いわゆる「排日移民法」の改正運動、米国世論への対日理解促進活動、そして日米間の友好関係を築くための民間外交に力を注ぎました。生涯で20年以上を日本で過ごした彼は、日本通としても知られています。

生い立ちと日本との関わり

ギューリックの祖父ピーターは、ニューイングランドからハワイ王国に派遣された宣教師の一人でした。ハワイでのキリスト教化が進むと、教会本部は世俗的な事業を奨励し、ギューリック一族はやがてハワイの財界を支配するようになります。父ルーサーもまた、ハワイでの伝道活動に従事した後、ミクロネシアの島々へと活動範囲を広げました。シドニー・ギューリックは、マーシャル諸島のEbon島で生まれました。

幼少期をヨーロッパで過ごした後、父ルーサーがアメリカ聖書協会の極東総代理人として横浜に派遣されると、シドニーはカリフォルニア州の高校、そして大学へと進学しました。その後、ダートマス大学を卒業し、ユニオン神学校で神学を修め、牧師となります。日本へ赴任する前日には、幼なじみのカーラ・メイ・フィッシャーと結婚しました。

日本での活動

1888年から1894年まで、ギューリックは熊本に派遣され、伝道活動の傍ら、熊本英学校で英語を教えました。一時帰国後、1897年に再来日し、アメリカン・ボードの四国ステーションに赴任。松山女学校で英語教師として教鞭を執りました。また、旧制中学や師範学校の教師と共に、経済的な理由で進学できない子供たちを対象に、英語、天文学、社会学、進化論などを教える活動も行いました。

アメリカとドイツでの遊学後、1906年に日本へ帰任。京都に居を構え、同志社神学校や同志社大学で教鞭を執る傍ら、京都帝国大学でもキリスト教に関する講義を担当しました。

移民問題への取り組みと日米親善

1913年、ギューリックは一時帰国中にカリフォルニアで勃発した日本人移民排斥運動に遭遇します。彼は現地に留まり、外国人土地法案の阻止に尽力。その後も移民問題に取り組み、移民割当制度を考案しました。米国キリスト教連盟に対日関係委員会が設置されると、幹事に就任し、移民割当制を提唱する著書を刊行。ウィルソン大統領をはじめとする有力者へのロビー活動を展開しました。

1915年からは、万国キリスト教会国際親善促進同盟米国支部幹事などの要職を歴任し、約20年間、日本人移民問題の解決と日米親善に尽力しました。国際平和会議やパリ講和会議にも参加し、極東問題に関する彼の主張は、専門家の間で高く評価されました。

その後

1934年に米国キリスト教連盟を引退後は、ハワイで余生を過ごしながらも、日本のこと、日米関係の悪化について執筆を続けました。真珠湾攻撃の際には、日系人の市民権擁護を訴えました。その後、娘の住むアイダホ州で亡くなり、遺骨はボイシ、スプリングフィールド、そして神戸に分骨されました。

青い目の人形

ギューリックは、日本の雛人形に注目し、雛祭りに合わせて1万2千体余りの人形を日本に寄贈しました。この「友情人形」（青い目の人形）を通じた親善活動は、広く知られています。

叙勲

ギューリックの親日活動は高く評価され、1934年には日本政府から勲三等瑞宝章が授与されました。

家族

ギューリック一族は日本と深い関わりを持ち、父ルーサーをはじめ、多くの親族が日本で伝道活動に従事しました。祖父母も晩年日本に移住し、神戸で亡くなりました。

晩年

ギューリックは自著の中で、中国における排日運動について、歴史的事実を歪曲し、子供たちに憎悪を植え付ける教育が行われていると批判しました。

彼の遺志は孫のギューリック3世に受け継がれ、友情人形を日本に贈る活動が続けられています。

シドニー・ルイス・ギューリックは、激動の時代において、日米間の相互理解と友好に尽力した人物として、その功績は長く記憶されることでしょう。

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