シナイ写本

シナイ写本の概要

シナイ写本（Codex Sinaiticus）は、4世紀に作成された古代の聖書の写本です。その形態はコデックス、つまり冊子本の形式をしており、サイズは38.1×34.5センチメートルです。この写本は1844年に聖カタリナ修道院で発見され、以降の研究において非常に重要な位置を占めています。

発見の経緯

この著名な写本は、ドイツの聖書学者コンスタンティン・フォン・ティッシェンドルフによって発見されました。ティッシェンドルフはシナイ山の聖カタリナ修道院を訪れて、数日間、修道院に保管されている書物を調査しましたが、当初は目当ての資料を見つけることができませんでした。しかし、帰ろうとする直前に、修道院のゴミかごの中にこの貴重な写本が発見されたのです。この劇的な発見がもたらす意義は大きく、聖書の研究に多大な影響を与えました。

内容と特徴

シナイ写本はギリシア語で記されており、旧約聖書の一部（特に七十人訳聖書に相当）と、新約聖書のほぼ全ての書物を収録しています。ただし、カトリック教会が第二正典として認めるバルク書は含まれていません。一方で、マカバイ記4が収められていることも特徴の一つです。この写本は個別の筆耕者によるものではなく、研究によると、少なくとも2名の写経者が新たな修正を行ったことが判明しています。これにより、異なるバージョンの本文が存在することが明らかになりました。

所蔵と現在の状況

発見されたシナイ写本は、その後、ロシア皇帝アレクサンドル2世に献上されましたが、ロシア革命の後、1933年に10万ポンドで売却され、大英博物館に収蔵されることとなりました。現在、大英博物館には347葉（旧約聖書199葉、新約聖書148葉）、聖カタリナ修道院には12葉と14の断片（1975年発見）、ライプツィヒ大学図書館には43葉、サンクトペテルブルクのロシア国立図書館には3つの断片が保管されています。

デジタルアーカイブ

2009年7月には、4カ国の共同事業によってシナイ写本がインターネット上で公開されることとなりました。このプロジェクトでは、各地に分散していた断片の再結合が行われ、写本の復元が試みられました。これにより、より多くの研究者や一般の人々が、シナイ写本にアクセスできるようになりました。

まとめ

シナイ写本は、聖書研究の重要な資料であり、その出所、内容、そして現在の所蔵について多くの興味を引く存在となっています。今日でもこの写本の研究は続けられており、人類の文化的、宗教的遺産としての価値が高いことが改めて認識されています。

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