シナジー幾何学
株式会社シナジー幾何学は、1986年に設立され、1998年に倒産した日本のマルチメディアコンテンツ制作会社です。代表取締役は粟田政憲氏が務めていました。
シナジー幾何学の前身は、1985年に粟田政憲氏らが設立した編集プロダクション「シナジー」です。粟田氏は、自由国民社で音楽雑誌『KEYPLE』の編集に携わっていました。シナジーは当初、音楽之友社の音楽雑誌『Techii』の編集を主な業務としていましたが、雑誌の付録に「ソノシート」を付けるなど、当時としては画期的な試みを行っていました。
その後、MacとDTPを導入したことをきっかけに、MacとCD-ROMを使ったマルチメディア作品の制作へと事業を拡大しました。
1991年には、東芝EMIとの共同制作によるマルチメディア作品『Alice』をリリースしました。この作品をきっかけに、マルチメディアコンテンツ制作で知られるようになり、特に1993年にリリースされた『ガジェット』は、その斬新な内容と高いクオリティで大ヒットを記録し、シナジー幾何学はマルチメディアコンテンツ制作のトップメーカーとしての地位を確立しました。
『ガジェット』はアメリカでも8万枚を売り上げ、制作を担当した庄野晴彦氏は米『Time』誌に取り上げられるなど、一躍有名ベンチャー企業となりました。
シナジー幾何学は、オラシオン、デジタローグ、ボイジャーとともに、1990年代前半のマルチメディア時代を代表するメーカーとなり、4社が中心となって1994年に「マルチメディア・タイトル制作者連盟」（AMD、現・デジタルメディア協会）を設立しました。
1994年からは、マルチメディアを再生可能な次世代ゲーム機の登場に伴い、コンシューマゲーム機での作品リリースを開始しました。3DO用ゲーム『鉄人』（1994年）は、アート性の高さが評価された一方で、ゲームとしては低い評価を受けました。
続編の『Tetsujin RETURNS』（1995年）では、ゲームとしてのクオリティを向上させたものの、その分アート性が損なわれたため、特筆すべき点の無いゲームとして評価が低迷しました。
1994年までは、コンシューマゲーム機でもインタラクティブなマルチメディア作品が受け入れられる余地がありましたが、ゲーム機戦争が本格化する1995年以降になると、シナジー幾何学の作品はゲーム性が低いという理由で、市場からの評価は著しく低下しました。
特に1996年に発売された『イエロー・ブリック・ロード』は、1993年にパソコンで発売された作品のコンシューマゲーム機への移植でしたが、『セガサターンマガジン』誌の読者レースで、初登場時に678本中676位、最終的に全945本中909位という著しく低い評価を受け、悪い意味で話題となりました。一方で、1996年にPCとピピンアットマークでリリースされた続編『イエロー・ブリック・ロードII グリンダと西の魔女』は良作として評価されています。
マルチメディアブームの終焉とともに、シナジー幾何学の経営は急速に悪化しました。売れない商品を扱うのを嫌がったソフトバンクがソフトウェア卸から撤退したため、自社で卸業務を行う必要に迫られ、1997年にツクダオリジナルと共同でソフトウェア卸の「ツクダシナジー」を設立しました。しかし、ツクダオリジナル自体が中堅の玩具メーカーであり、シナジーの売れない商品を支えるほどの体力はありませんでした。
1990年代後半になると、ソフト制作費の高騰やヒット作の不在により、資金繰りが悪化しました。マルチメディアブームの際には銀行からの融資も受けやすかったものの、バブル後の不良債権問題が深刻化した1990年代末には、銀行の貸し渋りが始まりました。
その結果、1998年に銀行が出資金を引き上げたことがきっかけとなり、シナジー幾何学は倒産しました。創業以来、黒字になった年度はなかったようです。
シナジー幾何学の倒産後、ツクダシナジーはPCソフトウェア卸としてしばらく活動を続けましたが、ツクダオリジナル本体の経営不振に伴い、2002年に倒産しました。
1986年 - 設立
1990年 - CD-ROMタイトルの制作を開始
1991年 - 東芝EMIと共同制作した『Alice』で「1991 AVA マルチメディアグランプリ通商産業大臣賞」を受賞
1992年 - 『L-ZONE』（ディレクション：庄野晴彦）が「1992 マルチメディアグランプリ・インタラクティブメディア部門最優秀賞」を受賞
1993年
『GADGET』（ディレクション：庄野晴彦）が「1993 マルチメディアグランプリ通商産業大臣賞」を受賞
日本IBMと『Yellow Brick Road』（ディレクション：三浦洋幸）を共同制作
1994年 - 松下電器産業と共同開発した『鉄人』（ディレクション：日下部実）を3DO向けにリリース
1997年 - 玩具メーカー「ツクダ」との合弁会社「ツクダシナジー」を設立。PCゲームなどのCD-ROMの販売を手掛けた
1998年 - ソフト制作費の高騰に見合うヒット作の不在が顕在化して、資金繰りが悪化。12月21日に東京地裁に自己破産を申請。負債総額は約9億円
設立と初期の活動
シナジー幾何学の前身は、1985年に粟田政憲氏らが設立した編集プロダクション「シナジー」です。粟田氏は、自由国民社で音楽雑誌『KEYPLE』の編集に携わっていました。シナジーは当初、音楽之友社の音楽雑誌『Techii』の編集を主な業務としていましたが、雑誌の付録に「ソノシート」を付けるなど、当時としては画期的な試みを行っていました。
その後、MacとDTPを導入したことをきっかけに、MacとCD-ROMを使ったマルチメディア作品の制作へと事業を拡大しました。
マルチメディアコンテンツ制作への進出と成功
1991年には、東芝EMIとの共同制作によるマルチメディア作品『Alice』をリリースしました。この作品をきっかけに、マルチメディアコンテンツ制作で知られるようになり、特に1993年にリリースされた『ガジェット』は、その斬新な内容と高いクオリティで大ヒットを記録し、シナジー幾何学はマルチメディアコンテンツ制作のトップメーカーとしての地位を確立しました。
『ガジェット』はアメリカでも8万枚を売り上げ、制作を担当した庄野晴彦氏は米『Time』誌に取り上げられるなど、一躍有名ベンチャー企業となりました。
シナジー幾何学は、オラシオン、デジタローグ、ボイジャーとともに、1990年代前半のマルチメディア時代を代表するメーカーとなり、4社が中心となって1994年に「マルチメディア・タイトル制作者連盟」（AMD、現・デジタルメディア協会）を設立しました。
コンシューマゲーム市場への参入と苦戦
1994年からは、マルチメディアを再生可能な次世代ゲーム機の登場に伴い、コンシューマゲーム機での作品リリースを開始しました。3DO用ゲーム『鉄人』（1994年）は、アート性の高さが評価された一方で、ゲームとしては低い評価を受けました。
続編の『Tetsujin RETURNS』（1995年）では、ゲームとしてのクオリティを向上させたものの、その分アート性が損なわれたため、特筆すべき点の無いゲームとして評価が低迷しました。
1994年までは、コンシューマゲーム機でもインタラクティブなマルチメディア作品が受け入れられる余地がありましたが、ゲーム機戦争が本格化する1995年以降になると、シナジー幾何学の作品はゲーム性が低いという理由で、市場からの評価は著しく低下しました。
特に1996年に発売された『イエロー・ブリック・ロード』は、1993年にパソコンで発売された作品のコンシューマゲーム機への移植でしたが、『セガサターンマガジン』誌の読者レースで、初登場時に678本中676位、最終的に全945本中909位という著しく低い評価を受け、悪い意味で話題となりました。一方で、1996年にPCとピピンアットマークでリリースされた続編『イエロー・ブリック・ロードII グリンダと西の魔女』は良作として評価されています。
経営悪化と倒産
マルチメディアブームの終焉とともに、シナジー幾何学の経営は急速に悪化しました。売れない商品を扱うのを嫌がったソフトバンクがソフトウェア卸から撤退したため、自社で卸業務を行う必要に迫られ、1997年にツクダオリジナルと共同でソフトウェア卸の「ツクダシナジー」を設立しました。しかし、ツクダオリジナル自体が中堅の玩具メーカーであり、シナジーの売れない商品を支えるほどの体力はありませんでした。
1990年代後半になると、ソフト制作費の高騰やヒット作の不在により、資金繰りが悪化しました。マルチメディアブームの際には銀行からの融資も受けやすかったものの、バブル後の不良債権問題が深刻化した1990年代末には、銀行の貸し渋りが始まりました。
その結果、1998年に銀行が出資金を引き上げたことがきっかけとなり、シナジー幾何学は倒産しました。創業以来、黒字になった年度はなかったようです。
シナジー幾何学の倒産後、ツクダシナジーはPCソフトウェア卸としてしばらく活動を続けましたが、ツクダオリジナル本体の経営不振に伴い、2002年に倒産しました。
沿革
1986年 - 設立
1990年 - CD-ROMタイトルの制作を開始
1991年 - 東芝EMIと共同制作した『Alice』で「1991 AVA マルチメディアグランプリ通商産業大臣賞」を受賞
1992年 - 『L-ZONE』（ディレクション：庄野晴彦）が「1992 マルチメディアグランプリ・インタラクティブメディア部門最優秀賞」を受賞
1993年
『GADGET』（ディレクション：庄野晴彦）が「1993 マルチメディアグランプリ通商産業大臣賞」を受賞
日本IBMと『Yellow Brick Road』（ディレクション：三浦洋幸）を共同制作
1994年 - 松下電器産業と共同開発した『鉄人』（ディレクション：日下部実）を3DO向けにリリース
1997年 - 玩具メーカー「ツクダ」との合弁会社「ツクダシナジー」を設立。PCゲームなどのCD-ROMの販売を手掛けた
1998年 - ソフト制作費の高騰に見合うヒット作の不在が顕在化して、資金繰りが悪化。12月21日に東京地裁に自己破産を申請。負債総額は約9億円
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