Techii

『Techii』（テッチー）は、1986年6月から1988年12月にかけて音楽之友社から発行されていた音楽雑誌です。テクノポップ、ニュー・ウェイヴといった当時サブカルチャー色の濃いジャンルや、DTM（デスクトップミュージック）製作を主なテーマとしていました。A4判の中綴じで、年4回、ソノシートが付録として同梱されていました。

概要

1986年6月号で隔月刊として創刊され、同年10月号から月刊化されました。国内外のアーティストの記事だけでなく、レコーディングエンジニアやプログラマーといった、それまで表舞台に出ることが少なかった役割の人々にもスポットを当てました。また、音楽制作機材のレビューやハウツー記事も掲載されていました。特に、レコードや機材のレビューの多くをミュージシャン自身が執筆している点は、他の音楽雑誌にはあまり見られない特徴でした。

当時のテクノポップ、ニュー・ウェイヴは、イエロー・マジック・オーケストラ（YMO）の散開後に緩やかな衰退期を迎えていました。その一方で、ヒップホップ、チップチューン、ワールドミュージック、渋谷系といった、新たな音楽ジャンルの萌芽が現れ始めていた時期でもありました。『Techii』では、創刊号からすでにメガミックスを特集し、渋谷系の中心人物である小西康陽や、DJ集団である日本音楽選曲者協会の連載などを通して、当時まだ主流ではなかったジャンルを横断的に扱いました。このため、『Techii』は1980年代と1990年代の音楽シーンをつなぐ架け橋としての役割を果たしたと言えるでしょう。

また、『Techii』は音楽だけでなく、現代美術、演劇、漫画なども紹介しており、サブカルチャー雑誌としての側面も持っていました。休刊後には、加藤賢崇と岸野雄一らが「Techiiの魂を継承する」というコンセプトで『宝島』にコラム『テッちゃんの逆襲』を連載しました。

連載

『Techii』には、以下のような多彩な連載がありました。

エッセイ・対談
鈴木さえ子の写真日記
松浦雅也のアウターリミッツ対談
新恋愛講座（かしぶち哲郎）
パールなアイデア（サエキけんぞう）
echo de MIHARU（コシミハル、画：金子國義）
20世紀少年パークの街灯（あがた森魚）
ムーンライダーズ新聞
HOW TO すまいる（CHAKA）
窪田晴男物語
サエキけんぞうのデジタル作詞講座
ネオGS探訪
見るなの部屋（平沢進）
EXPOの社会派見学
ここに幸あり　→　朗らか日記（高橋幸宏）
溝口肇の東京幻想曲
かの香織のこんにちはカオリーナ
音の宝箱（ナーヴ・カッツェ）
コラム・レビュー
My dear records：月替わりでアーティストが自分の愛聴盤を紹介
GAME MUSIC同好会
エスノ漫遊記
ロックの失踪～Ten years of new wave
ユキコのインディーズ・キャット
The best of the greatest hits（小西康陽）
ビックリ佐藤（高橋幸宏マネージャー）のユキヒロ日記
音選協アワー（日本音楽選曲家協会）
1987　テクノポップの革命児たち
ブランニュー・コレクション（松浦雅也）
音楽製作技術
井上鑑のMIDIシンセ相談室
藤井丈司のシーケンス相談室・シンクロ野郎
飯尾芳史のスタジオワーク相談室・豪傑スタジオ
松井朋巳CX相談室
戸田誠司のking of computer
コード理論講座
アコースティック大好き！！

69コンピレーションズ

読者からデモテープを募り、優秀作10曲を付録のソノシートに収録する企画です。年4回発表され、審査員はミュージシャンが務めました。応募楽曲は69秒以内という制限があり、雑誌の目玉企画として創刊から休刊まで続きました。

審査員一覧

鈴木慶一
細野晴臣
高橋幸宏
立花ハジメ
岡田徹・窪田晴男
サエキけんぞう
戸田誠司
種ともこ
ホッピー神山

『Techii』は、単なる音楽雑誌にとどまらず、当時の最先端のサブカルチャーを牽引する存在でした。その革新的な姿勢は、現在でも多くの音楽ファンやクリエイターに影響を与え続けています。

脚注

ファンによるまとめ

もう一度検索