シネマテーク・フランセーズ

シネマテーク・フランセーズ：フランス映画の殿堂

シネマテーク・フランセーズは、フランス政府の支援を受ける私立文化施設であり、映画遺産の保存、修復、そして上映を目的としています。その活動は、単なるフィルムの収集にとどまらず、映画文化そのものを未来へ継承することを目指しています。

誕生の背景

1935年、アンリ・ラングロワとジョルジュ・フランジュは、失われつつある過去の映画作品を上映するシネクラブ「セルクル・デュ・シネマ」を設立しました。これがシネマテーク・フランセーズの原点となります。翌1936年、ポール＝オーギュスト・アルレの支援を受け、ラングロワの指揮の下、正式にシネマテーク・フランセーズが設立されました。当初から、映画フィルムだけでなく、カメラ、ポスター、衣装、セットなど、映画制作に関わるあらゆる物品の収集も行われました。

発展と変遷

シネマテーク・フランセーズは、その歴史の中で幾度かの移転を経験しています。1948年には、パリ8区に初めての上映室と博物館が開館し、フランソワ・トリュフォー、ジャン＝リュック・ゴダールといった後のヌーヴェルヴァーグを代表する映画監督たちが集う場所となりました。その後、1955年にパリ5区へ、1963年にはシャイヨ宮へと移転しています。

1968年には、運営をめぐりラングロワが一時的に解任されるという事件が発生しました。これに対し、多くの映画監督や俳優が抗議運動を起こし、結果としてラングロワは復帰を果たしました。この出来事は、シネマテーク・フランセーズがフランス映画界にとって不可欠な存在であることを示す象徴的な出来事として語り継がれています。

1972年には、トロカデロ広場に初の大規模な映画博物館が開館し、1980年にはポンピドゥーセンターにも上映室が設けられました。しかし、1997年のシャイヨ宮での火災により、シネマテークは再び移転を余儀なくされます。その後、一時的にパレ・ド・トーキョーに移転したのち、2005年にはベルシー街の旧アメリカ文化センター跡地に現在のシネマテーク・フランセーズがオープンしました。この新施設は、建築家フランク・ゲーリーによって設計され、現代的なデザインが特徴です。

映画文化への貢献

シネマテーク・フランセーズは、映画作品の保存・修復に加えて、上映活動、教育活動にも力を入れています。年間を通して、クラシック映画から現代映画まで、幅広いジャンルの作品が上映され、多くの映画ファンに親しまれています。また、映画に関する様々なイベントやレクチャーも開催され、映画文化の発展に大きく貢献しています。

2007年には、映画文献資料図書館（BIFI）を統合し、映画関連の書籍や資料のコレクションも拡充されました。これにより、シネマテーク・フランセーズは、映画を「見る」だけでなく「学ぶ」ための場所としても、その重要性を増しています。

映画人たちの集う場所

シネマテーク・フランセーズは、フランス映画界の巨匠たちにとって、特別な場所でした。ラングロワが情熱を注ぎ収集した映画フィルムの数々は、映画監督たちの創作意欲を掻き立て、多くの名作誕生のきっかけとなりました。ジョルジュ・ペレックは自著『ぼくは思い出す』の中で、「メッシーヌ通りのシネマテーク」について言及しています。これは、映画を愛する人々の記憶の中に、シネマテークが深く刻まれていることを示す証左と言えるでしょう。

シネマテーク・フランセーズは、フランス映画の歴史と未来を繋ぐ、かけがえのない文化遺産です。その活動は、フランス国内だけでなく、世界の映画文化にも大きな影響を与え続けています。

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