シムアント

シムアント：アリの生態を体験する革新的なシミュレーションゲーム

『シムアント』（SimAnt）は、1991年にアメリカのマクシスから発売された、生態系シミュレーションゲームです。このゲームでは、プレイヤーはアリの世界に飛び込み、その複雑な生態系を体験することができます。

ゲームの概要

『シムアント』は、タイトルが示す通り、アリの生活をシミュレートするゲームで、プレイヤーは黒アリの一員として、巣の拡大、食料の調達、敵対勢力である赤アリの殲滅、そして最終的には巣のある家から住人を追い出すことを目指します。

このゲームは、都市経営シミュレーションゲーム『シムシティ』で知られる「シムシリーズ」の一つであり、その開発はマクシスによって行われました。プロデューサーは『シムシティ2000』を手掛けたドン・ウォルターズ、ゲームデザインとMacintosh版プログラムは『SimLife』を手掛けたジャスティン・マコーミックと、『バンゲリングベイ』や『シムシティ』を手掛けたウィル・ライトが担当しています。

1991年にはMacintosh、PC/AT互換機|PC_AT互換機、Windows 3.x版がリリースされ、1992年にはAmiga版が登場しました。日本でもMacintosh版が販売され、後にPC/AT互換機|PC_AT互換機にも移植されています。また、FM-TOWNS、PC-9801、X68000など、様々な機種に移植されたほか、家庭用ゲーム機では、イマジニアがマクシスからスーパーファミコン版の独占販売権を獲得し、1993年に発売されました。

ゲームプレイ

プレイヤーは黄色アリとしてゲームを開始し、黒アリのコロニーを成長させていく必要があります。食料を確保し、卵や幼虫を世話して黒アリを増やし、赤アリを駆逐することが目的となります。スーパーファミコン版には、PC版とほぼ同じ内容の「オリジナルゲームモード」に加え、「シナリオゲームモード」が搭載されており、特定の条件下で赤アリの殲滅を目指す8つのステージをプレイすることができます。

ゲーム内の表現は非常にリアルで、特にアリが死亡した時のグラフィックやサウンドは、PC版でより顕著に描写されています。このゲームは、エドワード・オズボーン・ウィルソンとバート・ヘルドブラーの著書『The Ants』に触発されて開発され、ゲーム内やマニュアルには、現実のアリの種類や生態に関する資料が掲載されており、教育的な側面も持っています。

システム

黄色アリと女王アリには体力ゲージがあり、時間経過とともに減少します。体力は食料を摂取するか、他のアリから食料を分けてもらうことで回復します。マップ上にはクモやアリジゴクなどの捕食者が存在し、接触すると死亡します。また、人間や芝刈り機も脅威となり、踏み潰されたり巻き込まれたりする危険性があります。スーパーファミコン版のシナリオモードでは、猫や自転車などの障害物も登場します。

敵対勢力である赤アリとの戦闘では、黄色アリは脆弱ですが、勝利すれば生き残ることができます。PC版とスーパーファミコン版のオリジナルモードでは、黄色アリは何度でも復活できますが、スーパーファミコン版のシナリオモードでは復活回数に制限があり、上限に達するとゲームオーバーとなります。

黄アリは復活する際に、働きアリ、兵隊アリ、羽アリのいずれかを選択できます。働きアリは最も弱いですが、卵を運搬でき、兵隊アリは戦闘に強いですが卵を運搬できません。羽アリは働きアリより強く、兵隊アリより弱いという特徴があります。

ゲーム開始直後は黄色アリと女王アリのみですが、黒アリが増えると、黄色アリが誘導することで、効率的に食料を集めることができるようになります。アリは食料を見つけると匂いで道筋をつけるため、他のアリがその匂いをたどって食料を巣に持ち帰るシステムになっています。また、イモムシやクモなどを集団で倒して食料にすることも可能です。

匂いとマーカー

アリは匂いを使い、仲間とのコミュニケーションを行います。この匂いは時間経過や雨で消えることがあります。

巣マーカー: 巣を出入りするアリが付け、巣への帰還を助けます。
軌跡マーカー: 食料を見つけたアリが付け、他のアリを食料源に導きます。
警告香: 戦闘したアリが付け、巣の防衛を促します。

登場キャラクター

働きアリ: 万能型で、食料調達、巣の拡張、未成熟アリの看護、物資運搬が可能。
兵隊アリ: 戦闘に強く、食料調達や巣の拡張も行うが、未成熟アリの世話はできません。
女王アリ: コロニーに一匹のみで産卵を行うコロニーの要。
生殖アリ（羽アリ）: 結婚飛行を行い、新たな女王アリとなる。既存コロニーでは産卵しません。
未成熟アリ（卵・幼虫・さなぎ）: 自分で動けず、看護が必要。敵に捕まると食料にされます。
黄色アリ: プレイヤーが操作する黒アリで、他の黒アリを召集・解放できます。
赤アリのターミネーター: 赤アリにおける黄色アリの役割を持つアリ。

アリ以外の生き物

クモ: アリを捕食します。集団で襲って追い払うか、倒して食料にできます。
アリジゴク: アリを捕食します。集団で倒すことはできますが、食料にはなりません。
ダンゴムシ: アリに害を与えませんが、アリが通れない場所を作ります。
イモムシ: 倒すと食料になります。

リリース情報

スーパーファミコン版

スーパーファミコン版には、オリジナルゲームモードと、8つのシナリオからなるシナリオゲームモードがあります。各シナリオは異なる環境と障害物が用意されています。

春 こうえん（すなば）
春 かだん
つゆ 家の庭
つゆ へやの中（いえのなか）
夏 どうろ
夏 かわら
なつのおわり じんじゃ
秋 もりのなか（おちば）

スタッフ

オリジナル版（Macintosh、IBM、Amiga版）

コンセプト&デザイン：ウィル・ライト、ジャスティン・マコーミック
Macintoshプログラミング：ウィル・ライト、ジャスティン・マコーミック、ミック・フォーリー
IBMプログラミング：ダニエル・ゴールドマン
Amigaプログラミング：ブライアン・コンラッド
プロジェクト・マネージャー：ドン・ウォルターズ
Macintoshコンピュータグラフィックス：ジェニー・マーティン、スーザン・グリーン
Amiga&IBMコンピュータグラフィックス：スーザン・グリーン、ジェニー・マーティン、マフィー・ヴァサレ、マット・サルコーニ
アリ情報ウィンドウグラフィックス：ジェフ・ラフリッジ
Macintoshサウンド：スティーヴ・ヘールズ、ジム・ニッチェルズ
IBMサウンド：Lars Norpchen
効果音&音楽：マシュー・ベラルド、スティーヴ・ヘールズ、ジャック・ソートン、クリス・シャルト

スーパーファミコン版

プログラマー：大久保良一、よしだたく
サウンド・プログラマー：三村和成
音楽：大久保高嶺
グラフィック・デザイン：かさはらけん、やまぎしさとし、ながしままさと、小森谷勇一郎、なかまることみ

評価

パソコン版

ゲーム雑誌『Dragon』では5/5の星を獲得し、高い評価を得ました。Computer Gaming Worldもこのゲームを「斬新で挑発的な戦略シミュレーション」として評価しました。

スーパーファミコン版

日本のゲーム誌『ファミコン通信』では29/40点、『ファミリーコンピュータMagazine』では19.40/30点と評価されています。『The[[スーパーファミコン]]』では、アリを操作するユニークさ、親しみやすいBGMや雰囲気、丁寧なトレーニングモードが評価されましたが、PC版のマルチウィンドウがないことや、難易度については意見が分かれました。アメリカのゲーム雑誌『GamePro』は「シミュレーション、戦略、冒険が楽しく組み合わさっている」と評し、「今年の教育的ゲーム」と名付けました。

参考資料

シムアントBOOK PC-9801でアリの社会、生活を学んで遊べる! ISBN 978-4756108432
シムアント 公式ガイドブック ISBN 978-4091024282

外部リンク

SimAnt（英語） - MobyGames

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