シャムスッディーン・イルトゥトゥミシュ

シャムスッディーン・イルトゥトゥミシュの生涯と影響

シャムスッディーン・イルトゥトゥミシュ（Shams al-Dīn Iltutmish）は、北インドの奴隷王朝の第3代君主として1211年から1236年まで在位した重要な歴史的人物です。彼はトルコ人の貴族で、中世イスラム国家の形成において重要な役割を果たしました。彼の名は「イルトゥトゥミシュ」とも表記されることがあり、刻文や歴史書において記録は様々です。

幼少期と即位前の経歴

イルトゥトゥミシュは、テュルク系遊牧民イルバリー部族の首長の子として生まれました。しかし、兄弟間の争いによって奴隷としてブハラで売られ、アッバース朝の貴族に買われてバグダードで過ごすことになります。その後、ゴール朝のマムルークであるクトゥブッディーン・アイバクに引き取られ、彼に重用されました。

1210年、アイバクの死後、彼の子アーラム・シャーが跡を継ぎましたが、悪政による貴族の不満が高まり、イルトゥトゥミシュがデリーに進撃し、アーラム・シャーを打ち倒して王位に就くことになります。

即位後の争いと中部アジア侵攻

イルトゥトゥミシュの即位には、多くの反対派が存在しました。例えば、アフガニスタンと北インドの軍閥や、ベンガル地方のイスラム政権が彼に対して敵対していました。彼はこれらの脅威に対し、初めのうちはデリーの安定に注力しましたが、やがてカバーチャやユルドゥズとの戦闘に挑むこととなります。

特にホラズム・シャー朝が中央アジアで強大化する中、イルトゥトゥミシュはこの脅威を排除するために軍を動かし、1228年には西北部で勝利を収め、国境をインダス川まで広げました。これにより、彼は一時的とはいえ、北インドの安定を確保しました。

ベンガル征服と統治

ベンガルではギヤースッディーン・イワズ・キルジーが勢力を強めていましたが、イルトゥトゥミシュは1225年に親征し、一時的に従属させることに成功します。しかし、帰国後には再び独立され、最終的には彼の息子によって制圧されました。また、彼はラージプート国家に対しても圧力を加え、再びデリーの宗主権を強化しました。

政治的手腕と公正な統治

イルトゥトゥミシュは王権を強化するために多くの施策を講じました。その一環として、彼は特に信頼していた40人のトルコ人奴隷を重用し、彼らを「チャハルガーニー（40人）」と呼ばれる高位官僚に任命しました。彼の治世下では、宗教的公正さも重視され、ウラマーの過度の介入を排除しました。

アッバース朝と密接に関係を持ち、1229年にはスルタンの称号を正式に承認されるに至ります。公正な裁定を行うことで、彼は多くの民から信頼を得ていました。

建築事業と死後の継承問題

イルトゥトゥミシュの治世中には、クトゥブ・ミナールなどの重要な建築物が完成しました。彼は1236年に死去しましたが、後継者問題が生じました。彼の娘ラズィーヤを後継者に意図していたものの、実際には息子ルクン・ウッディーンがスルタンに選ばれました。

結論

イルトゥトゥミシュは、その統治の公正さや軍事的成功により、北インドにおけるイスラム国家の基盤を構築しました。彼の政策や施策は、後のデリー・スルタン朝の成り立ちに大きな影響を与えました。また、アッバース朝との関係強化や、さまざまな地域への遠征も、その歴史に名を残す要因となっています。

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