ゴール朝

ゴール朝の興亡：アフガニスタンからインドへ

ゴール朝（11世紀初頭 - 1215年）は、現在のアフガニスタンに起源を持つイスラム王朝で、北インドへの侵攻を通じて、インドにおけるムスリム支配の基礎を築きました。シャンサバーニー族を起源とし、その勢力はアフガニスタン中部の山岳地帯ゴール地方に根ざしていました。この地名が王朝名の由来となっています。

ゴール朝の起源と初期

シャンサバーニー族は、イラン系の言語を話す人々で、伝説によれば、アッバース朝のハールーン・アッ＝ラシードによってその首長がゴール地方の領主に任じられたとされます。11世紀初頭、ガズナ朝の支配下に入りますが、後にガズナ朝の衰退とともに自立の道を歩み始めました。しかし、セルジューク朝の支配を受けるなど、当初は不安定な状況でした。ゴール朝は、部族制的な性格を強く持ち、内部抗争が絶えませんでしたが、12世紀に入ると、その勢力を拡大していきます。

アラーウッディーンの台頭とガズナ朝の滅亡

1150年、アラーウッディーン・フサイン2世の時代に、ゴール朝はガズナ朝に対して決定的な勝利を収めました。この戦いで、歩兵を中心としたゴール軍は、ガズナ軍の戦象隊を打ち破り、ガズナを占領しました。ゴール軍は、ガズナの徹底的な破壊と略奪を行い、これによりゴール朝はアフガニスタン東部を支配下に置くこととなり、自立と発展の基盤を築きました。この勝利以降、ゴール朝の君主はスルタンを称するようになり、王朝の権威を高めました。

最盛期：ギヤースッディーンとシハーブッディーンの時代

アラーウッディーンの死後、ギヤースッディーン・ムハンマドがゴールを、弟のシハーブッディーン（ムイッズッディーン・ムハンマド）がガズナを支配し、兄弟は連携して領土を拡大しました。1186年にはラホールを支配していたガズナ朝を滅ぼし、ホラズム・シャー朝やカラキタイを破って、1200年にはホラーサーンの大部分を支配下に置きました。また、シハーブッディーンはインドへの侵攻を開始し、1191年のタラーインの戦いでラージプート軍を破り、ベンガルまで進軍しました。ギヤースッディーンの治世には、ゴールやヘラートで建設事業が盛んに行われ、特にジャームのミナレットは世界遺産にも登録されています。

ゴール朝の衰退と滅亡

1203年にギヤースッディーンが亡くなると、弟のシハーブッディーンが後を継ぎましたが、ホラズム・シャーやカラキタイとの戦いに敗れ、勢力を大きく失いました。1206年にシハーブッディーンが暗殺されると、後継者争いが勃発。この混乱に乗じて、北インドではマムルークの将軍クトゥブッディーン・アイバクが自立し、デリー・スルターン朝を創始しました。1210年には、ギヤースッディーン・マフムードが暗殺され、その後はバーミヤーンの支流との抗争が続き、ゴール朝は急速に衰退しました。最終的に1215年、最後の君主アラー・ウッディーン・ムハンマド4世がホラズム・シャー朝によって廃位され、ゴール朝は滅亡しました。

ゴール朝の遺産

ゴール朝は、その短い存続期間にもかかわらず、インドにおけるイスラム教の拡大と、デリー・スルターン朝の成立に大きな影響を与えました。また、ジャームのミナレットをはじめとする建築遺産は、当時の文化と技術の高さを今に伝えています。

歴代君主

イシュズッディーン・フサイン1世（1117年 - 1146年）
シャイフッディーン・スーリー（1146年 - 1149年）
バハー・ウッディーン・サーム1世（1149年）
アラー・ウッディーン・フサイン2世（1149年 - 1161年）
シャイフッディーン・ムハンマド1世（1161年 - 1163年）
ギヤースッディーン・ムハンマド（2世）（1163年 - 1203年）
シハーブッディーン・ムハンマド（3世）（1203年 - 1206年）
ギヤースッディーン・マフムード（1206年 - 1210年）

ゴールの支流
ギヤースッディーン・マフムード（1206年 - 1212年）
バハー・ウッディーン・サーム3世（1212年 - 1213年）
アラー・ウッディーン・アトシーズ（1213年 - 1214年）
アラー・ウッディーン・ムハンマド4世（1214年 - 1215年）

バーミヤーンの支流
ファフルッディーン・マスウード（1152年 - 1163年）
シャムスッディーン・ムハンマド（1163年 - 1192年）
バハー・ウッディーン・サーム2世（1192年 - 1206年）
ジャラールッディーン・アリー（1206年 - 1215年）

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