シャルル・ド・ゴール (空母)

フランス海軍原子力空母シャルル・ド・ゴール：その設計、能力、そして歴史

[シャルル・ド・ゴール]は、フランス海軍が誇る原子力空母です。アメリカ海軍以外で原子力空母を運用する唯一の国、フランスの象徴的な存在と言えるでしょう。第二次世界大戦中の英雄、シャルル・ド・ゴール将軍の名を冠した本艦は、2001年の就役以来、数々の作戦に参加し、その存在感を示してきました。

誕生の経緯：戦後フランス海軍の歩み

フランス海軍は、第二次世界大戦前から空母を運用していましたが、大戦中の活動は限定的でした。戦後、インドシナ戦争での経験を経て、空母保有の重要性を再認識。アメリカから軽空母を受け入れつつ、国産空母の建造に着手しました。クレマンソー級空母は、フランス海軍にとって国産空母の大きな一歩となりましたが、その後継艦の計画は、STOVL艦からカタパルト射出機を搭載するCATOBAR艦へと方針転換するなど、紆余曲折を経て進められました。1980年、ついに原子力空母2隻の建造が承認され、その1隻目がシャルル・ド・ゴールとなりました。当初の就役予定は1992年でしたが、予算や技術的な問題により、2001年までずれ込みました。

独自の設計：小型ながら高い能力

シャルル・ド・ゴールは、ブレスト海軍工廠のドックの収容能力を考慮した設計となっており、アメリカ空母のような巨大な艦ではありません。しかし、小型ながら、大型艦載機の運用を可能とする工夫が凝らされています。飛行甲板は広大で、アングルドデッキも備えています。さらに、SATRAP減揺装置、フィンスタビライザー、工夫を凝らした船体形状によって、高い耐揺性能を実現しており、荒天時でも航空運用が可能です。ステルス性にも配慮した設計で、レーダー反射断面積の低減にも成功しています。また、NBC防御のため、艦内は与圧されています。搭載可能な人員は800名に上り、医療設備も充実しており、手術室2室と病床50床が備えられています。

強力な推進力：原子力と高度な技術

シャルル・ド・ゴールは、2基のK15原子炉を搭載し、持続的な作戦行動を可能としています。これはル・トリオンファン級原子力潜水艦と同型で、高い信頼性を誇ります。蒸気タービンはスクリュープロペラを駆動するだけでなく、発電機やカタパルトにも動力を供給します。公試中にプロペラ破損などのトラブルに見舞われたこともありましたが、現在は安定した性能を発揮しています。多様な発電機を搭載し、安定的な電力供給を確保しています。

航空運用能力：最新の技術を搭載

広大な飛行甲板と、アメリカ空母と同系統のカタパルト、アレスティング・ギアによって、高度な航空運用能力を実現しています。着艦誘導装置も最新のシステムに更新されており、安全な発着艦を支援します。格納庫はクレマンソー級よりも床面積が拡大し、防御能力も向上しています。ラファールM戦闘機、E-2C早期警戒機、ヘリコプターなどを搭載し、多様な任務に対応します。搭載機数は、シュペルエタンダール攻撃機の運用終了後、ラファールM戦闘機を中心に30機前後となっています。航空燃料や弾薬の搭載量も豊富です。

防衛システム：多層防御による堅牢性

シャルル・ド・ゴールは、アスター15長距離艦対空ミサイル、ミストラル近接防空ミサイル、機関砲など、多層防御システムによって、あらゆる脅威から身を守ります。最新のレーダーや電子戦システムも搭載されており、高い警戒・防御能力を備えています。近代化改修（MLU）によって、これらのシステムは更に強化されています。

艦歴：数々の作戦に参加

シャルル・ド・ゴールは、建造から就役まで多くの困難を経験しました。就役後は、アフガニスタン、リビア、イラクなどでの作戦に参加。NATOとの合同演習にも参加しています。2020年には新型コロナウイルスの集団感染に見舞われましたが、それを乗り越えて運用を継続しています。しかし、2019-2025年の軍事計画によると、2040年までに退役予定とされています。後継艦の建造計画も進められており、フランス海軍の空母力維持への取り組みは続いています。近年ではNATO演習への参加を巡り、国内で賛否両論が巻き起こるなど、フランスの安全保障政策における位置付けが問われる場面もありました。

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