シャルル・ネグレ

シャルル・ネグレ：絵画と写真、両分野で才能を開花させた19世紀フランスの巨匠

シャルル・ネグレ (1820年5月9日 - 1880年1月16日) は、フランスの画家であり、初期の写真家として名高い人物です。フランス南東部、アルプ＝マリティーム県グラースの生まれ。パリのフランス国立高等美術学校で学び、ポール・ドラローシュ、ミシェル・マルタン・ドロラン、そして巨匠ドミニク・アングルといった著名な画家たちから指導を受けました。

画家としてのキャリアと写真の道へ

ネグレは1843年から1864年にかけて、権威あるサロン・ド・パリに作品を出展し、1850年には3等メダルを受賞するなど、画家として着実な成功を収めていました。1847年には、国王ルイ・フィリップの肖像画制作を依頼されるなど、高い評価を得ていました。彼の油絵作品は、プロヴァンス美術歴史博物館やモントーバンのアングル美術館などに収蔵されています。

しかし、ネグレの興味は絵画にとどまりませんでした。1839年のダゲールによる写真術の発明に接し、パリの自身のスタジオに写真機を導入。当初は絵画表現の補助として考えていたものの、すぐに写真の持つ表現力に魅了され、画家としての活動と並行して写真家としての道を歩み始めます。

ネグレの写真は、その芸術性の高さから同時代の研究者たちの間で高く評価され、彼の類まれな才能は広く認められました。さらに彼は、写真製版技術であるヘリオグラフィーの改良にも貢献しました。

写真家としての活躍と晩年

フランスでは、作家・考古学者プロスペル・メリメの提唱による「Missions Héliographiques」という、フランスの考古学的・歴史的遺物を写真で記録するプロジェクトが進行していましたが、ネグレは残念ながらこのプロジェクトに参加することはありませんでした。しかし、彼はこの出来事を契機に、フランス南西部やアルプ＝マリティーム県で精力的に撮影を行い、アルプ＝マリティーム県を写真に収めた最初の写真家となりました。シャルトル大聖堂の撮影も手掛け、1865年には考古学者リュイーヌ公爵からの依頼を受け、中東の死海やペトラ遺跡を撮影する旅に出かけました。彼の作品は、出版業者グーピルによって出版されました。

1863年、健康上の理由からネグレは故郷に戻り、ニースで生活を始めます。ニースの学校で教鞭をとりながら、工房を構え、コート・ダジュールの美しい風景写真を数多く撮影しました。

ネグレが残した遺産

シャルル・ネグレは、画家としての確かな技術と、写真表現の可能性をいち早く見抜いた先見の明を持ち合わせていました。彼の作品は、19世紀フランスの風景や文化遺産を後世に残す貴重な資料であると同時に、高い芸術性を備えた写真作品として、現在も高い評価を受けています。彼の功績は、絵画と写真、両分野において大きな足跡を残した、稀有な存在であったことを示しています。彼の作品は、単なる記録写真ではなく、芸術作品としての価値を十分に持ち合わせており、現代においてもその芸術性は色あせることなく輝き続けています。彼の作品集は、写真史における重要な資料として、そして芸術作品として、現在も世界中の美術館やギャラリーなどで展示され、人々に感動を与え続けています。

参考文献

André Jammes, Charles Nègre photographe : 1820-1880, préface de Jean Adhémar, Paris-Choisy-le-Roi, Imprimerie de France, 1963 ISBN 2-85744-536-9
Françoise Heilbrun, Charles Nègre : photographe 1820-1880, catalogue de l'exposition, Arles, musée Réattu, 5 juillet-17 août 1980 ; Paris, musée du Luxembourg, 25 novembre 1980-19 janvier 1981, Ministère de la Culture et de la Communication, Paris, 1980. ISBN 2-71180-164-0
* Joseph Nègre, La Riviera de Charles Nègre, préface de Louis Nucéra, Aix-en-Provence, Édisud, 1991 ISBN 2-85744-536-9

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