シャルル・ラムルー
シャルル・ラムルー（Charles Lamoureux, 1834年9月28日 – 1899年12月21日）は、19世紀後半のフランスを代表する指揮者であり、ヴァイオリン奏者でもありました。ボルドーに生まれ、後にパリで活躍の場を広げ、特に自身が創設したコンセール・ラムルー管弦楽団を率いて、ドイツの作曲家リヒャルト・ワーグナーの作品をフランスに広く紹介したことで知られています。彼の活動は、当時のフランス楽壇において、新しい音楽、特にドイツ音楽への理解を深める上で重要な役割を果たしました。
ラムルーの音楽の道は、故郷ボルドーからパリへと続きました。カフェを経営する父のもとで育ち、若い頃から音楽の才能を発揮します。パリに出てコンセルヴァトワール（国立高等音楽院）でヴァイオリン、和声、作曲を学び、1853年から1855年にかけて複数の優秀な成績を収めました。その後もオーギュスト・トルベックらに師事し、その技を磨きました。
学業と並行して、彼は早くからプロの音楽家としてのキャリアをスタートさせています。1850年にはパリのジムナーズ劇場でヴァイオリン奏者となり、その後、名門のオペラ座を経て、パリ音楽院管弦楽団に移りました。これらのオーケストラでの経験は、後の指揮活動の基礎を築いたと言えるでしょう。
室内楽にも積極的に取り組み、1858年にはエドゥアール・コロンヌらと共に弦楽四重奏団を結成しました。この活動は1860年に室内楽協会へと発展し、1872年にはそのメンバーを核とした新たな弦楽四重奏団も組織されています。また、1872年から1877年まで、パリ音楽院管弦楽団の副指揮者を務め、指揮者としての経験も積み重ねました。
海外、特にイギリスやドイツへの旅行で得た見聞は、彼の音楽観に大きな影響を与えました。そこで触れたオラトリオ作品の演奏をパリ音楽院管弦楽団に提案しますが、実現に至りませんでした。しかし、彼は諦めず、自ら行動を起こします。1873年、彼は「オラトリオ演奏会」を設立し、ヘンデルの傑作『メサイア』のパリ初演を成功させました。これに続き、J.S.バッハの『マタイ受難曲』、ヘンデルの『ユダス・マカベウス』など、重要な宗教曲や新作オラトリオを次々と紹介し、パリの聴衆に新たな音楽体験をもたらしました。
しかし、彼のキャリアは順風満帆とは言えませんでした。頼りにしていた妻の財産も減少し、資金面で苦労するようになります。1876年には「オラトリオ演奏会」を解散し、オペラ＝コミック座の指揮者に就任しますが、その気性の激しさから、わずか半年足らずで総支配人と対立し辞任しました。続くオペラ座（1877年 - 1879年）でも同様の衝突を繰り返し、劇場での指揮者としての道は困難を極めました。
それでも、ラムルーの情熱は衰えませんでした。1881年、シャトー・ド・オー劇場から週ごとのコンサート開催の提案を受け、彼はこれに応じます。「新コンサート協会」を組織し、同年10月23日にその第一回公演を行いました。これが後の「コンセール・ラムルー」へと発展します。この協会を通じて、彼はフランス国内外の新しい音楽作品を積極的にプログラムに取り入れ、紹介に努めました。
特に、ワーグナー作品の普及は、ラムルーのライフワークとも言えるものでした。コンサート形式で『トリスタンとイゾルデ』や『ローエングリン』といった大作の全幕演奏を行い、聴衆にワーグナーの世界観を示しました。さらに、バイロイトに赴き、ワーグナー本人からオペラとしての『ローエングリン』上演の許可を取り付けることに成功します。
しかし、当時のフランスでは、1871年の普仏戦争敗戦以来、反ドイツ感情が根強く残っており、ワーグナーの音楽もその影響を受けていました。ラムルーが1887年5月3日、エデン座で『ローエングリン』の上演を試みた際には、狂信的な愛国主義者たちが劇場周辺で激しいデモを行い、公演は初回限りで打ち切られてしまいます。しかし、ラムルーは屈しませんでした。彼は1891年9月16日、今度はオペラ座で再び『ローエングリン』に挑みます。この時も騒動が起こり、警官隊が出動する物々しい雰囲気の中、観客席からは紙くずが投げられるなど妨害がありましたが、上演は続けられました。そして、この上演は最終的に聴衆に受け入れられ、長期にわたるロングラン公演となりました。この成功は、フランスにおけるワーグナー受容の転換点となったと言えるでしょう。
海外での評価も高く、1893年にはロシアを巡演し、ロンドンへも毎年のように招かれ、温かく迎え入れられました。
1897年、彼はコンセール・ラムルーの常任指揮者を退き、女婿であるカミーユ・シュヴィヤールにその地位を譲りました。この頃、協会の名称は「コンセール・ラムルー協会」と改められています。また同時期に、レジオンドヌール勲章を受勲するなど、長年の功績が称えられました。
1899年12月、彼は一度だけ『トリスタンとイゾルデ』を指揮しましたが、その後病を得て、数日後の12月21日にパリでその生涯を閉じました。彼の功績を記念して、パリ16区にはシャルル・ラムルー小路（rue Charles Lamoureux）と名付けられた通りがあります。
ラムルーは、その音楽への情熱と同様に、短気で我が強く、時に我がままな人物であったと伝えられています。オーケストラの楽員たちからは「癇癪玉」と陰口を叩かれることもあったそうですが、彼は全く気にしませんでした。リハーサル中にピストルを見せびらかし、「これで準備万端だ」と冗談めかして言ったという逸話も残っており、その強烈な個性がうかがえます。
ラムルーの音楽の道は、故郷ボルドーからパリへと続きました。カフェを経営する父のもとで育ち、若い頃から音楽の才能を発揮します。パリに出てコンセルヴァトワール（国立高等音楽院）でヴァイオリン、和声、作曲を学び、1853年から1855年にかけて複数の優秀な成績を収めました。その後もオーギュスト・トルベックらに師事し、その技を磨きました。
学業と並行して、彼は早くからプロの音楽家としてのキャリアをスタートさせています。1850年にはパリのジムナーズ劇場でヴァイオリン奏者となり、その後、名門のオペラ座を経て、パリ音楽院管弦楽団に移りました。これらのオーケストラでの経験は、後の指揮活動の基礎を築いたと言えるでしょう。
室内楽にも積極的に取り組み、1858年にはエドゥアール・コロンヌらと共に弦楽四重奏団を結成しました。この活動は1860年に室内楽協会へと発展し、1872年にはそのメンバーを核とした新たな弦楽四重奏団も組織されています。また、1872年から1877年まで、パリ音楽院管弦楽団の副指揮者を務め、指揮者としての経験も積み重ねました。
海外、特にイギリスやドイツへの旅行で得た見聞は、彼の音楽観に大きな影響を与えました。そこで触れたオラトリオ作品の演奏をパリ音楽院管弦楽団に提案しますが、実現に至りませんでした。しかし、彼は諦めず、自ら行動を起こします。1873年、彼は「オラトリオ演奏会」を設立し、ヘンデルの傑作『メサイア』のパリ初演を成功させました。これに続き、J.S.バッハの『マタイ受難曲』、ヘンデルの『ユダス・マカベウス』など、重要な宗教曲や新作オラトリオを次々と紹介し、パリの聴衆に新たな音楽体験をもたらしました。
しかし、彼のキャリアは順風満帆とは言えませんでした。頼りにしていた妻の財産も減少し、資金面で苦労するようになります。1876年には「オラトリオ演奏会」を解散し、オペラ＝コミック座の指揮者に就任しますが、その気性の激しさから、わずか半年足らずで総支配人と対立し辞任しました。続くオペラ座（1877年 - 1879年）でも同様の衝突を繰り返し、劇場での指揮者としての道は困難を極めました。
それでも、ラムルーの情熱は衰えませんでした。1881年、シャトー・ド・オー劇場から週ごとのコンサート開催の提案を受け、彼はこれに応じます。「新コンサート協会」を組織し、同年10月23日にその第一回公演を行いました。これが後の「コンセール・ラムルー」へと発展します。この協会を通じて、彼はフランス国内外の新しい音楽作品を積極的にプログラムに取り入れ、紹介に努めました。
特に、ワーグナー作品の普及は、ラムルーのライフワークとも言えるものでした。コンサート形式で『トリスタンとイゾルデ』や『ローエングリン』といった大作の全幕演奏を行い、聴衆にワーグナーの世界観を示しました。さらに、バイロイトに赴き、ワーグナー本人からオペラとしての『ローエングリン』上演の許可を取り付けることに成功します。
しかし、当時のフランスでは、1871年の普仏戦争敗戦以来、反ドイツ感情が根強く残っており、ワーグナーの音楽もその影響を受けていました。ラムルーが1887年5月3日、エデン座で『ローエングリン』の上演を試みた際には、狂信的な愛国主義者たちが劇場周辺で激しいデモを行い、公演は初回限りで打ち切られてしまいます。しかし、ラムルーは屈しませんでした。彼は1891年9月16日、今度はオペラ座で再び『ローエングリン』に挑みます。この時も騒動が起こり、警官隊が出動する物々しい雰囲気の中、観客席からは紙くずが投げられるなど妨害がありましたが、上演は続けられました。そして、この上演は最終的に聴衆に受け入れられ、長期にわたるロングラン公演となりました。この成功は、フランスにおけるワーグナー受容の転換点となったと言えるでしょう。
海外での評価も高く、1893年にはロシアを巡演し、ロンドンへも毎年のように招かれ、温かく迎え入れられました。
1897年、彼はコンセール・ラムルーの常任指揮者を退き、女婿であるカミーユ・シュヴィヤールにその地位を譲りました。この頃、協会の名称は「コンセール・ラムルー協会」と改められています。また同時期に、レジオンドヌール勲章を受勲するなど、長年の功績が称えられました。
1899年12月、彼は一度だけ『トリスタンとイゾルデ』を指揮しましたが、その後病を得て、数日後の12月21日にパリでその生涯を閉じました。彼の功績を記念して、パリ16区にはシャルル・ラムルー小路（rue Charles Lamoureux）と名付けられた通りがあります。
ラムルーは、その音楽への情熱と同様に、短気で我が強く、時に我がままな人物であったと伝えられています。オーケストラの楽員たちからは「癇癪玉」と陰口を叩かれることもあったそうですが、彼は全く気にしませんでした。リハーサル中にピストルを見せびらかし、「これで準備万端だ」と冗談めかして言ったという逸話も残っており、その強烈な個性がうかがえます。
もう一度検索
【記事の利用について】
タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。
【リンクついて】
リンクフリーです。