シャルル＝アンジュ・レザン

シャルル＝アンジュ・レザン（Charles-Ange Laisant、1841年11月1日 - 1920年5月5日）は、フランスの政治家、数学者です。アンドル県に生まれ、パリのエコール・ポリテクニークで軍事工学を修めました。フリーメイソンであり、自由社会主義を標榜しました。

政治家としての経歴

レザンの公的なキャリアは軍務から始まりました。普仏戦争中のパリ攻囲戦では、イシー＝レ＝ムリノーの城塞防衛に携わりました。その後、1873年にはコルシカ島やアルジェリアに派遣されました。

1876年、軍を辞し、共和党の候補としてナント選挙区から代議院議員に立候補、当選しました。議員としては主に軍事問題に取り組み、軍法検討委員会の委員長を務めたこともあります。しかし、1887年に兵役免除廃止案が否決された責任を取り、委員長を退任しました。

また、ジャーナリストとしても活動し、1879年には新聞『ル・プティ・パリジャン（Le Petit Parisien）』の編集者となりました。政治的な発言により、エルネスト・クルトー・ド・シセに対する名誉棄損で罰金刑を受けたこともあります。

政治的には、ジョルジュ・ブーランジェ将軍の修正主義運動を支持し、愛国者同盟に加入しました。ブーランジェ派としての自身の立場を説明する政治小冊子『なぜ、そしていかにして私はブーランジェ派になったか』（1887年）なども出版しています。1889年にはパリ第18区からブーランジェ派議員として再選されましたが、1893年以降は再選を目指さず、政治活動から身を引きました。

数学者としての業績

政治の舞台を離れたレザンは、数学研究に本格的に注力しました。しかし、数学への関心は以前から高く、1874年には双曲線関数に関する論文を発表しています。また、ジュスト・ベラディウスによる同方向等長性の重要論文をフランス語に翻訳し、自らの考察を加えた出版も行いました。

幾何代数、特に四元数や同方向等長性の分野で顕著な業績を残しました。主要な著作に『四元数入門』（1881年）や『同方向等長性の理論と応用』（1887年）があります。これらの著書は、フランスにおけるこれらの分野の普及に貢献しました。ジュール・オユエルによる四元数の教科書の要約も執筆しています。ベラディウスの方法の拡張も試みました。

レザンは数学界全体の発展にも貢献しました。1894年にはエミール・ルモワーヌと共に数学雑誌『数学者たちの仲介役』を、1899年にはアンリ・フェールと共に数学教育専門誌『数学教育』を創刊しました。『数学教育』誌は後に国際数学教育委員会（ICMI）の公式機関誌となっています。

学会活動も活発に行いました。1888年にはフランス数学会の会長を務め、1903年から1904年にかけてはフランス科学振興協会の代表の任にも就きました。

シャルル＝アンジュ・レザンは、政治と数学という二つの分野で活躍し、特に晩年は数学者として重要な貢献を残しました。彼の活動は、当時のフランスにおける数学の発展に影響を与えています。

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