シュガーキューブス

シュガーキューブス (The Sugarcubes) - 氷の国の異才

シュガーキューブス（The Sugarcubes、本国ではSykurmolarnir）は、アイスランドが生んだポストパンク/オルタナティヴ・ロックバンドです。1986年に結成され、ビョークのソロ活動開始とともに1992年に解散しましたが、2006年に一度だけ再結成を果たしました。

結成前夜 - レイキャヴィークの音楽シーン

シュガーキューブスのメンバーは、結成以前からアイスランドの音楽シーンでそれぞれ活動していました。ビョークは1977年にソロデビューを果たした後、パンクバンド「タッピ・ティカラス」に参加。1983年の解散までに2枚のアルバムをリリースしました。一方、シギはセイル、アイナール・オルンとブラギはパンクバンド「Purrkur Pillnikk」で活動していました。

1983年、レイキャヴィークのラジオ番組での共演をきっかけに、ビョーク、アイナール・オルン、シギは「K.U.K.L.」を結成。キーボーディストのアイナール・アルナルドゥルも加入し、イギリスの独立系レーベル、クラス・レコードから2枚のアルバムをリリースし、ヨーロッパツアーも行いました。

アイナール・オルンは大学講師や興行主としても活動し、ソーとブラギは音楽活動の傍ら詩人として詩集を出版。シギは画家としても才能を発揮していました。

1985年、ビョークは恋人ソー・エルドンとの間に子供を授かります。妊娠7ヶ月まで音楽活動を続けましたが、メンバーの飲酒問題などによりK.U.K.L.は解散。

バンド結成 - 新たなスタート

1986年、ビョークとソーは結婚。長男シンドリ・エルドンが誕生した同日、ビョーク、ソー、ブラギは再スタートとしてシュガーキューブスを結成します。翌年にはレーベル「バッド・テイスト・リミテッド」を設立。K.U.K.L.のメンバーだったアイナール・オルン、アイナール・アルナルドゥルも合流しました。

K.U.K.L.時代はアイスランド語で歌っていましたが、シュガーキューブスでは全編英語歌詞とアイナーの語りを前面に押し出し、民族音楽の要素を廃したスタイルへと変化しました。バンド名については、LSDの使用法を表す隠語であるという説も存在します。

デビューと成功 - 世界へ

1987年、シュガーキューブスはイギリスのワン・リトル・インディアン、アメリカのエレクトラ・レコードと契約。同年8月にリリースしたシングル「バースデイ」がBBCラジオで放送されると、瞬く間に注目を集め、バンドの代表曲となりました。

1988年4月、ファースト・アルバム『ライフ・イズ・トゥー・グッド』をリリース。イギリスとアメリカで高い評価を獲得し、その音楽性は「アヴァン・ポップ」と評されました。B-52'sやトーキング・ヘッズを彷彿とさせるサイケデリックなポストパンク・サウンドは、多くの音楽ファンを魅了しました。同年後半には北米ツアーを成功させ、9月にはデヴィッド・ボウイやイギー・ポップが出演するイベントでコンサートを行い、10月には『サタデー・ナイト・ライブ』に出演するなど、その人気は加速していきました。

セカンドアルバムと転換 - 評価の分かれ道

1989年9月、セカンド・アルバム『トゥデイ・トゥモロウ・ネクスト・ウィーク!』をリリース。しかし、アイナール・オルンのボーカルが前面に出たこのアルバムは、前作に比べて評価が伸び悩みました。シングル「レジーナ」と「プラネット」はイギリスのインディーズチャートで1位を獲得しましたが、メインストリームでは振るいませんでした。アルバムリリース後にはワールドツアーを行い、1990年初旬には来日公演も果たしましたが、ツアー後バンドは解散を検討し始め、活動を休止。各メンバーはソロ活動へと移行します。

サードアルバムと解散 - それぞれの道へ

1991年12月、サード・アルバムからの先行シングル「Hit」をリリース。この楽曲はバンド最大のヒットとなり、アメリカのビルボード・モダン・ロック・トラック・チャートで1位を獲得、イギリスでもトップ20入りを果たしました。

1992年2月、サード・アルバム『スティック・アラウンド・フォー・ジョイ』をリリース。先行シングルのヒットもあり、前作以上の評価を得ましたが、その後のシングルは「Hit」ほどの反響は得られませんでした。同年10月と11月には、U2の『Zoo TV ツアー』アメリカ公演でオープニングアクトを務めました。

1992年10月、リミックス・アルバム『イッツ・イット』をリリースし、同年、シュガーキューブスは解散しました。

解散後 - ソロ活動とその後

解散後、ビョークは1993年に『デビュー』でソロ活動を開始し、世界的な成功を収めました。他のメンバーは「バッド・テイスト・リミテッド」の運営に携わるなど、それぞれの道を歩んでいます。

アイナール・オルンは「バッド・テイスト・リミテッド」の業務の傍ら、プロディジー、フージーズ、マッシヴ・アタックのプロモーションを手掛け、シギと共にGrindverkを結成。ブラーのデーモン・アルバーンとのコラボレーションや、ソロ・プロジェクト「Ghostigital」の始動など、多岐にわたる活動を展開しました。また、レイキャヴィークの市議会議員も務めました。

シギは映画音楽やテレビの挿入曲、舞台音楽などを手掛け、ブラギは「バッド・テイスト・リミテッド」の運営に携わりながら、詩や小説、戯曲の創作活動を続けています。

一夜限りの再結成 - 伝説の復活

2006年11月、シュガーキューブスはデビュー・シングル「バースデイ」のリリース20周年を記念して、レイキャヴィークで一夜限りの再結成ライブを開催。収益は「バッド・テイスト・リミテッド」に全額寄付され、アイスランド音楽のプロモーションに活用されました。バンド側は、今後ライブを行ったり、新曲を制作する予定はないと表明しています。

シュガーキューブスは、短い活動期間ながらも、その革新的な音楽性とアイスランドの音楽シーンに与えた影響は計り知れません。ビョークの才能を世界に知らしめたバンドとして、その名は音楽史に刻まれています。

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