シュパイアーバハの戦い

シュパイアーバハの戦い：スペイン継承戦争の一局面

シュパイアーバハの戦いは、スペイン継承戦争中の1703年11月15日に、現在のドイツ・ラインラント＝プファルツ州シュパイアー西部で、フランス軍と神聖ローマ帝国軍が衝突した戦いです。

戦いの背景

1703年のドイツでは、フランス軍がライン川流域（アルザス）とドナウ川流域（バイエルン選帝侯領）の2箇所に駐屯し、都市を占領して勢力を拡大していました。帝国軍も迎撃に出動しましたが、ドナウ川戦線ではヘヒシュテットの戦いでフランス・バイエルン連合軍に敗北し、ドナウ川の占領地域を広げられる結果となりました。ライン川にいたタラール伯カミーユ・ドスタンもアルザスから南下してブライザハを奪取、その後北上してランダウを包囲しました。

帝国諸侯のヘッセン＝カッセル方伯世子フリードリヒ（後のスウェーデン王フレドリク1世）とナッサウ＝ヴァイルブルク伯ヨハン・エルンストは、ランダウ救援のために南下し、11月13日にランダウから北東のシュパイアーに到着して援軍を待機していました。ランダウを包囲していたタラールは、帝国軍を撃破するためにザールブリュッケンに残したフランス軍と合流し、シュパイアーへ進軍しました。

戦闘の経過

11月15日、フランス軍がシュパイアー西部のシュパイアーバハに駐屯していた帝国軍に攻撃を開始し、戦闘が始まりました。帝国軍は、指揮官たちがシュパイアーで開かれた帝国の祝典に出席していたため不在であり、不利な状況でフランス軍に立ち向かうことになりました。帝国軍は奮戦したものの、左翼と本陣の間が広がってしまい、タラールは右翼を敵左翼攻撃に差し向けました。左翼と本陣の隙間が拡大した時、ヨハン・エルンストが騎兵を率いて戦場に現れ、フランス騎兵隊を撃退し、一度戦場から離脱した後に再編成を行い、フランス軍右翼を攻撃しました。

フランス騎兵隊は敗走し、指揮官も戦死しました。中央では帝国軍が持ちこたえましたが、フランス軍右翼は帝国軍左翼を打ち破り、敵を右から包囲しました。帝国軍は大損害を出しながら逃走しましたが、フランス軍も被害が大きく追撃はできませんでした。しかし、ランダウは同日に降伏しました。

戦いの結果と影響

フランス軍の損害は死傷者3500人から4000人、帝国軍の損害は死者・捕虜を合わせて8500人に上りました。この戦いの結果、ライン川のフランス占領区域はプファルツまで広がり、ブライザハからバイエルンまでの連絡路を確保したことで、フランス軍の勢力は増大しました。

フランス軍は順調に勢力を伸ばしていきましたが、バイエルンのヴィラールとマクシミリアン2世が方針を巡って対立し、ヴィラールがフランスへ召還され、代わりにフェルディナン・ド・マルサンがバイエルンに派遣されました。一方、追い詰められた帝国は同盟国のイングランドに援軍派遣を要請したため、1704年にはイングランド軍がドイツへ侵攻し、戦局は大きく転換していきました。

シュパイアーバハの戦いは、スペイン継承戦争におけるフランスの優勢を決定づけた戦いの一つと言えるでしょう。

参考文献
* 友清理士『スペイン継承戦争 マールバラ公戦記とイギリス・ハノーヴァー朝誕生史』彩流社、2007年

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