シュラクサイ包囲戦 (紀元前278年)

第四次シュラクサイ包囲戦：ピュロスの介入とシケリアの動乱

紀元前278年、シケリア島のシュラクサイで、カルタゴ軍による最後の包囲戦が繰り広げられました。この戦いは、シュラクサイの内紛と、エピロス王ピュロスの介入、そしてその後のシケリアにおける勢力図の変化を特徴としています。

包囲戦の背景：内戦とカルタゴの侵攻

シュラクサイは当時、僭主ヒケタスの後継者であるトエノンと、ソストラトゥスの間で権力争いが起きており、深刻な内戦状態にありました。ソストラトゥスはシュラクサイの本島側を、トエノンはオルティージャ島の旧市街をそれぞれ占拠し、互いに疲弊していました。この内紛に乗じて、カルタゴはシュラクサイを陸海から包囲しました。100隻の艦隊でグレート・ハーバーを封鎖し、5万の兵で城壁を囲み、周辺を略奪しました。この危機に対し、トエノンとソストラトゥスは、エピロス王ピュロスに救援を要請しました。

ピュロスの介入：救援と戦略

ピュロスは当時、イタリア半島南部で共和政ローマと戦争をしていましたが、この要請を受諾しました。ピュロスはギリシア世界において、「野蛮人からのギリシア人の解放者」として評価されており、シュラクサイからの救援依頼を断ることは、自身の評判を損なう可能性がありました。また、シケリアを足掛かりに、過去にアガトクレスが行ったように、リビュアへの侵攻も視野に入れていました。

紀元前278年初頭、ピュロスはシケリアに到着し、まずタウロメニオンの僭主ティンダリオンと同盟を結びました。兵の提供を受けた後、カタナへ進軍し、上陸しました。ピュロスが陸軍と艦隊をシュラクサイに進めている間に、カルタゴは30隻の艦隊を別の作戦のために派遣しました。しかし、ピュロスがシュラクサイに接近すると、残りのカルタゴ艦隊は陸軍と共に抵抗することなく撤退しました。トエノンとソストラトゥスはピュロスにシュラクサイを委ね、ピュロスは両者を和解させました。

ピュロスのその後：シケリアでの苦境と撤退

ピュロスはシュラクサイの艦隊を自身の艦隊に編入し、その数は200隻を超えました。また、レオンティノイの僭主ヘラクレイデスから4,000の歩兵と500の騎兵の支援を受けました。他の多くの都市もピュロスと同盟し、兵士を提供したため、ピュロスはリビュア征服も視野に入れました。しかし、ピュロスはカルタゴの講和を拒否し、シケリア西部のカルタゴ領を攻撃しました。カルタゴ領は、最後の拠点であるリルバイオンを残すのみとなりました。ピュロスはリルバイオンを包囲しましたが、制海権を握るカルタゴからの補給が十分であったため、攻略できませんでした。ピュロスはリルバイオンの包囲を解き、リビュア侵攻の準備を開始しました。

しかし、ピュロスはその独裁的な行動により、シケリアのギリシア人から反感を買うようになりました。トエノンが処刑されると、ギリシア人の不満は頂点に達しました。トエノンとソストラトゥスはピュロスに協力していましたが、ピュロスは彼らを信用していませんでした。ソストラトゥスが自身も危険を感じて逃亡すると、ピュロスはトエノンがソストラトゥスと共謀したとして処刑しました。シケリアのギリシア人はピュロスに対して敵対的になり、いくつかの都市はカルタゴや傭兵部隊マメルティニと同盟しました。この時点で、ピュロスは南イタリアに戻り、ローマとの戦いに敗れつつあったサムニウムとターレスの救援を決意しました。

第四次シュラクサイ包囲戦は、ピュロスの介入によりカルタゴの侵攻を食い止めたものの、その後のピュロスの独裁的な行動がシケリアにおけるギリシア人の反感を買い、最終的にピュロスが撤退するという結果に終わりました。この戦いは、シケリアにおける勢力図が複雑に絡み合い、不安定な状況にあったことを示しています。

関連項目

シュラクサイ包囲戦 (紀元前415年-紀元前413年)：アテナイのシケリア遠征中のシュラクサイ包囲戦
シュラクサイ包囲戦 (紀元前397年)：シケリア戦争中の第一次シュラクサイ包囲戦
シュラクサイ包囲戦 (紀元前343年)：シケリア戦争中の第二次シュラクサイ包囲戦
シュラクサイ包囲戦 (紀元前311年-紀元前309年)：シケリア戦争中の第三次シュラクサイ包囲戦
* シュラクサイ包囲戦 (紀元前214年-紀元前212年)：第二次ポエニ戦争中のシュラクサイ包囲戦

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