シュレースヴィヒ＝ホルシュタイン公国

シュレースヴィヒ＝ホルシュタイン公国：複雑な歴史を辿る二重公国

シュレースヴィヒ＝ホルシュタイン公国は、ユトランド半島南部に広がる、歴史的に複雑な経緯を持つ地域です。現在のデンマーク領南デンマーク地域とドイツ領シュレースヴィヒ＝ホルシュタイン州に相当するこの地は、シュレースヴィヒ公国とホルシュタイン公国の二つの公国が併称された名称として知られています。

両公国は公式には合邦しませんでしたが、15世紀以降、デンマーク王家（オルデンブルク家）が両公国の公位を継承したことで、人的同君連合という関係が成立しました。この関係は、シュレースヴィヒとホルシュタインの政治的立場に大きな違いをもたらしました。シュレースヴィヒは古くからデンマーク王の封土でしたが、ホルシュタインは神聖ローマ帝国の一部であり、その属する領域は異なっていたのです。

さらに事態を複雑にしたのは、16世紀半ば以降のデンマーク王家の政策です。彼らはシュレースヴィヒ＝ホルシュタイン＝ゴットルプ家という分家と両公国の共同統治を行うようになりました。ゴットルプ家以外にもう一つ分家が共同統治者として存在しましたが、早くに断絶しています。この共同統治は、デンマーク王家とゴットルプ家の間でしばしば対立を引き起こす要因となりました。ゴットルプ家は、デンマーク王家と対立する中で、スウェーデンと同盟を結ぶなど、独自外交を展開したのです。

このような共同統治は、シュレースヴィヒでは1713年、ホルシュタインでは1773年に終わりを告げ、以降両公国はデンマーク王家による単独統治下に置かれました。この頃のホルシュタイン公国の状況については、個別の記事を参照ください。

19世紀に入ると、シュレースヴィヒ＝ホルシュタインの帰属を巡る問題が、ドイツとデンマークの間で深刻化します。これがいわゆる「シュレースヴィヒ＝ホルシュタイン問題」です。この問題は、両国の間で幾度も戦争を引き起こすことになります。

普墺戦争の結果、19世紀後半には両公国はプロイセン王国に編入され、「シュレースヴィヒ＝ホルシュタイン州」として新たな歴史を歩むことになります。しかし、その歴史はここで終止符を打ったわけではありません。第一次世界大戦後には、シュレースヴィヒの住民投票が行われ、北シュレースヴィヒはデンマーク領に復帰しました。

このように、シュレースヴィヒ＝ホルシュタイン公国は、デンマークとドイツ、そして神聖ローマ帝国といった複数の勢力の思惑が複雑に絡み合い、その帰属をめぐる争いが繰り返された歴史を持つ地域です。その歴史を理解することは、今日のヨーロッパの歴史を理解する上で不可欠な要素と言えるでしょう。

関連項目

シュレースヴィヒとホルシュタインの統治者一覧
シュレースヴィヒ＝ホルシュタイン問題
第一次シュレースヴィヒ＝ホルシュタイン戦争
第二次シュレースヴィヒ＝ホルシュタイン戦争

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