シュワー

シュワーとは

シュワー（Schwa）とは、音声学における母音の一種で、国際音声記号では「ə」で表されます。この記号は、主に西洋諸語に見られる曖昧母音や中舌中央母音を示すために用いられます。シュワーは、舌の位置や口の開き具合が中間的な特徴を持ち、発音される音も様々です。

中舌中央母音

中舌中央母音とは、舌の中央部分が口の中央に位置する状態で発音される母音です。この母音は、舌の位置も口の開き具合も中間的で、特定の言語や発音環境によって微妙に異なる音として現れます。国際音声記号では、この中舌中央母音も「[ə]」で表されます。

曖昧母音

曖昧母音としてのシュワーは、英語、ドイツ語、フランス語などの言語において、はっきりとした特徴を持たない中性的な母音として現れます。音素表記では「/ə/」と書かれますが、実際の発音は必ずしも中舌中央母音の[ə]に限らず、[ɘ][ɜ]など、他の音で発音されることもあります。例えば、フランス語では[ø]に近い音で発音されることもあります。

日本語で外国語の曖昧母音の音素「/ə/」を表記する場合、原則としてイ段以外の仮名を使用しますが、例外として、animationの最初の「i」のようにイに近い音で発音される場合は、そのように表記されます。英語の綴りにおいて、強勢のない「i」は、[ɪ]または[ə]のどちらで発音しても良いとされ、音素記号では「/ɨ/」または「/ə/」と表記されます。

シュワーの由来

シュワーという名称は、ヘブライ語の文法用語である「שוא (shva, sheva)」に由来しています。この用語は、ヘブライ語における軟母音（最短母音）を表す言葉です。19世紀後半、ドイツのエドゥアルト・ジーファースが、このヘブライ語を基に「Schwa」というドイツ語の名前を中性母音として初めて使用しました。また、記号「ə」は、1821年にヨハン・アンドレアス・シュメラーが初めて短母音の意味で使用しました。

言語例

中舌中央母音としてシュワーが使われる例：

タイ語: เดิน [dəən]（歩く）
ヒンディー語: नमस्कार [nəməskɑːr]（こんにちは）
ルーマニア語: căutare [kəutare]（検索）

曖昧母音としてシュワーが使われる例：

英語: England [ˈɪŋɡlənd]（イングランド）
ドイツ語: bitte [ˈbɪtə]（どうぞ）
フランス語: petit [pəti]（小さい）

英語におけるアクセントとの関係

英語では、単語の弱音節にある母音はしばしば曖昧化してシュワーになります。例えば、「banana」の発音は[bə.ˈnæ.nə]となり、最初と最後の母音がシュワーで発音されます。これは、英語のアクセントパターンとシュワーの出現に密接な関係があることを示しています。強勢のない音節は、母音の音価が弱まり、しばしばシュワーに変化します。

シュワーは、言語の多様な側面で重要な役割を果たしており、発音や音韻の理解を深める上で不可欠な要素です。この曖昧な母音は、音声の微妙なニュアンスを捉え、より正確な発音や言語理解を促進します。

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