シュヴァーロフ家

ロシア貴族シュヴァーロフ家：栄光と没落の物語

16世紀に台頭したシュヴァーロフ家は、ロシア帝国において特筆すべき貴族家系として知られています。その隆盛は、ロシア女帝エリザヴェータ・ペトローヴナ(1709-1762) の庇護と深く結びついており、1746年には伯爵位を授けられました。女帝からの絶大な信頼を得たシュヴァーロフ家は、政治、軍事、文化の各分野で重要な役割を果たし、ロシア啓蒙時代の発展に大きく貢献しました。

シュヴァーロフ家の主要人物

シュヴァーロフ家の歴史を彩る数々の著名人の中でも、特に重要な人物を挙げ、その生涯と功績を見ていきましょう。

イワン・イワノヴィチ・シュヴァーロフ (1727-1797): エリザヴェータ女帝の寵愛を受け、ロシア啓蒙時代の文化振興に尽力しました。貴族としての地位だけでなく、文化的なパトロンとしても大きな影響力を持っていました。
アレクサンドル・イワノヴィチ・シュヴァーロフ伯爵 (1710-1771): イワン・イワノヴィチの従兄弟にあたるアレクサンドルは、陸軍元帥、秘密警察長官を歴任した実力者でした。軍事面での貢献は、ロシア帝国の安全保障に大きく寄与しました。
ピョートル・イワノヴィチ・シュヴァーロフ伯爵 (1711-1762): アレクサンドルの弟であるピョートルは、陸軍元帥、陸軍大臣を歴任し、エリザヴェータ女帝時代の宮廷において最も影響力のある人物の一人でした。軍事だけでなく、政治面でも重要な役割を果たしたと言えるでしょう。
アンドレイ・ペトローヴィチ・シュヴァーロフ伯爵 (1743-1789): ピョートルの子であるアンドレイは、生涯の大部分を海外で過ごし、フランスの啓蒙思想家ヴォルテールとも交流がありました。自由主義思想に傾倒し、エカテリーナ2世がフランスの啓蒙思想家へ送った手紙の真の執筆者であったとする説もあります。
ピョートル・アンドレーエヴィチ・シュヴァーロフ伯爵 (1827-1889): アンドレイの孫であるピョートルは、アレクサンドル2世の宮廷で重要な役割を果たしました。時代背景を鑑みると、その影響力は相当なものだったと考えられます。
パーヴェル・アンドレーエヴィチ・シュヴァーロフ伯爵 (1776-1823) & (1830-1908): 同名の2人がいます。一人はナポレオン戦争に従軍した軍人、もう一人はベルリン会議のロシア代表を務めた外交官でした。それぞれ異なる分野で国家に貢献しました。
パーヴェル・パーヴロヴィチ・シュヴァーロフ伯爵 (1859-1905): モスクワ警察本部長を務め、1905年のロシア第一革命前に暗殺されました。革命前夜の動乱期における、警察組織の困難な状況を象徴する人物と言えるでしょう。
ミハイル・アンドレーエヴィチ・シュヴァーロフ伯爵 (1850-1903): 母方の祖父のヴォロンツォフ公爵家を継承しましたが、子孫を残さずに亡くなりました。ヴォロンツォフ家との繋がりも、シュヴァーロフ家の歴史を考える上で重要な要素です。
イーゴリ・シュヴァーロフ (1967-): 近代のシュヴァーロフ家の人物として、ロシアの政治家、ドミートリー・メドヴェージェフ大統領、ウラジーミル・プーチン首相の下で第一副首相を務めました。現代ロシアにおけるシュヴァーロフ家の存在を示す人物です。

シュヴァーロフ家の宮殿

シュヴァーロフ家は、サンクトペテルブルクを中心に複数の壮麗な宮殿を所有していました。それらの宮殿は、単なる居住空間を超え、ロシアの建築史や文化史において重要な文化財となっています。

イタリアンスカヤ通りにあるイワン・シュヴァーロフの宮殿は、バロック様式を代表する建築物であり、現在は帝国美術アカデミーとして利用されています。
ピョートル・イヴァノヴィチ・シュヴァーロフの宮殿は新古典主義様式で建てられ、後にユスポフ公爵家に売却されました。グリゴリー・ラスプーチン暗殺事件の舞台として知られ、歴史的事件と結びついた建築物として注目されています。
パーヴェル・ペトローヴィチ・シュヴァーロフの宮殿も新古典主義様式で、歴史的な変遷を経て現在に至っています。
* サンクトペテルブルク郊外のシュヴァーロヴォにも、シュヴァーロフ家の屋敷が存在しました。

これらの宮殿以外にも、シュヴァーロフ家は、アンナ女帝の寵臣であったクールラント公ビロンの所有するルンダール宮殿なども所有していました。これらの宮殿は、シュヴァーロフ家の莫大な富と権力を象徴しています。

シュヴァーロフ家は、ロシア帝国の歴史において重要な役割を果たした貴族家系です。その繁栄と没落の物語は、ロシアの歴史を理解する上で欠かせない要素となっています。彼らの功績と残した建築物は、現在も人々に語り継がれています。

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