シューベルトの楽曲一覧

シューベルトの楽曲一覧について

フランツ・シューベルト（Franz Schubert, 1797-1828）が遺した楽曲は、非常に多岐にわたります。その全貌を網羅するために、オットー・エーリヒ・ドイチュ（Otto Erich Deutsch）によって作成されたのが「ドイチュ番号（D番号）」を付した作品目録です。シューベルトの作品には、作曲家自身によって付けられた作品番号がないものが多いため、このD番号が作品特定の際の標準的な指標となっています。

シューベルトが生涯に創作した楽曲は、約1000曲を超える膨大な数に上ります。この中には、完成に至らなかった未完の作品、一部のみが現存する断片、現在は失われてしまった楽曲、作曲技法の習得を目的とした習作、さらには真偽が疑われる偽作なども含まれています。彼の創作活動は、短い生涯にもかかわらず驚くべきペースで行われ、その作品群はウィーン古典派からロマン派音楽への橋渡しを担う重要な位置を占めています。

分野別の作品群

シューベルトの多様な作品は、以下のような様々なジャンルに分類できます。未完や断片、習作なども含めて、彼の創作の広がりを理解することができます。

交響曲

シューベルトが手掛けた交響曲は、初期の作品を含めると合計13曲に及びます。もし現在失われているとされる「グムンデン・ガスタイン交響曲」を含めるならば、その数は14曲となります。特に有名な未完作品として、以下のものが挙げられます。

交響曲 ホ長調 D 729: これは旧第7番とされていた作品で、全体としては未完ですが、ピアノ譜は最後まで完成しています。オーケストレーションは最初の150小節まで施されており、ホルン4本とトロンボーン3本が加わるなど、シューベルトの交響曲としては最も大きな編成が想定されていました。フェリックス・ワインガルトナーによる補筆完成版がウニヴェルザール出版社から出版されています。
グムンデン・ガスタイン交響曲 ホ長調 D 849: この作品は、有名な交響曲第8番（旧第9番）ニ長調 D 944「ザ・グレート」と同一ではありませんが、その下書きや準備のような役割を果たしたと見られています。調性はホ長調と異なりますが、主題や展開、楽器編成の構想はD 944と非常によく似ていたとされています。その筆写譜がシュトゥットガルトの出版社から刊行されたこともあります。
* 交響曲 ニ長調 D 936A: 晩年に着手された未完の交響曲です。ペーター・ギュルケによる補筆完成版がペータース社から出版されています。また、ルチアーノ・ベリオが後半部分を自由に作曲した『レンダリング』という作品も存在し、これはウニヴェルザール出版社から出版されています。

管弦楽曲、オペラ、その他の舞台作品

交響曲以外の管弦楽曲、そして多数のオペラやジングシュピール（ドイツ語の歌芝居）を作曲しました。その他にも、劇への付随音楽や劇中歌などの舞台関連作品も手がけています。

協奏曲

協奏曲のジャンルにおいては、主にヴァイオリンとオーケストラのための作品を作曲しました。ピアノ協奏曲など、他の楽器のための協奏曲は残されていません。

室内楽曲

弦楽四重奏曲は特に多く作曲されましたが、交響曲と同様に未完に終わったものや、楽譜が失われてしまった作品も少なくありません。弦楽五重奏曲やピアノ三重奏曲など、その他の編成による重要な室内楽作品も多数存在します。

ピアノ独奏曲

シューベルトはピアノのための作品も数多く残しています。これには、大規模なピアノソナタ、優雅な舞曲集（レントラー、ドイツ舞曲、ワルツなど）、そして即興曲や楽興の時といった形式に囚われないその他のピアノ曲が含まれます。連弾のための作品も充実しており、友人たちとの音楽的な交流を反映しています。

声楽作品

宗教曲、合唱曲、重唱曲など、様々な編成による声楽作品も豊富です。合唱曲には、管弦楽伴奏を伴うものとピアノ伴奏によるものがあります。

歌曲（リート）

シューベルトは「歌曲の王」と呼ばれるほど、この分野で革新的な貢献をしました。ゲーテ、シラー、ミュラーといった詩人のテクストに作曲したリートは600曲以上に及び、それらは個別の歌曲としても、あるいは歌曲集としても残されています。

その他の作品・編曲

上記以外にも、作曲の習作や未完に終わった断片など、様々な作品が存在します。また、グルックの歌劇「アウリスのイフィゲニア」序曲を編曲した作品（D.Anh.Ⅱ-2）のように、他の作曲家の作品を編曲したものも残されています。

これらの作品は、現在IMSLP（国際楽譜ライブラリープロジェクト）のようなサイトで楽譜を入手できるものも多く、シューベルトの音楽世界に触れる貴重な資料となっています。

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