ショウジョウコウカンチョウ科

ショウジョウコウカンチョウ科（Cardinalidae）は、鳥類スズメ目に属する一群で、主に南北アメリカの熱帯から温帯にかけて分布しています。この科の鳥類は、ショウジョウコウカンチョウに見られるような鮮やかな色彩を持つ種が多く、オスの目立つ姿が特徴的です。

この科は、過去には「コウカンチョウ科」という名称で呼ばれていました。これは、かつてコウカンチョウ（Paroaria coronata）がこの科に含まれていたことに由来します。しかし、コウカンチョウ属（Paroaria）は分類上の位置が変更され、ホオジロ科を経て、現在は分子系統解析に基づきフウキンチョウ科に分類されています。したがって、現在のショウジョウコウカンチョウ科にはコウカンチョウは含まれていません。また、分類体系によっては、他の大きな科の一部として扱われ、「コウカンチョウ亜科（Cardinalinae）」や「コウカンチョウ族（Cardinalini）」といった名称が使われた時期もあります。伝統的な分類では、フウキンチョウ科、アトリ科、ホオジロ科などの中に含められたり、PyrrhuloxiinaeやRichmondeninaeといった亜科名が用いられたりするなど、その分類は歴史的に多様な見解が存在しました。

近年、DNAデータを用いた分子系統研究が鳥類の分類に革新をもたらしました。スズメ目の「nine-primaried oscines」と呼ばれる一群において、多くの属の系統関係が明らかになり、分類が見直されています。ショウジョウコウカンチョウ科もこの影響を大きく受け、複数の属の所属が変更されました。例えば、分子系統解析の結果、かつてこの科に含まれる可能性が指摘されたオナガシトド（Saltatricula）はフウキンチョウ科に分類されるべきであると結論づけられ、国際的な分類リストでそちらへ移されました。また、マミジロイカル属（Saltator）についても、一部の種でショウジョウコウカンチョウ科内のグループとの近縁性が示された例がありますが、属全体としてはフウキンチョウ科に分類するという研究結果が有力となり、現在ではフウキンチョウ科に含められることが多いグループです。これらの例のように、研究の進展に伴い、ショウジョウコウカンチョウ科に含まれる属の範囲は常に変動しています。

国際鳥類学会議（IOC）が採用する現在の分類体系では、ショウジョウコウカンチョウ科には以下のような属が含まれています。

Piranga属（フウキンチョウ属）：アカフウキンチョウやニシフウキンチョウなど、色彩豊かなフウキンチョウ類。
Habia属（アリフウキンチョウ属）：ズアカアリフウキンチョウなど、中南米に生息するアリフウキンチョウ類。
Chlorothraupis属（オリーブフウキンチョウ属）：オリーブフウキンチョウなど。
Spiza属：ムナグロノジコ（Spiza americana）1種。
Pheucticus属（ムネアカイカル属）：ムネアカイカルやチャバライカルなど、太いくちばしを持つイカル類。
Granatellus属（ムネアカアメリカムシクイ属）：ムネアカアメリカムシクイ類。
Cardinalis属（ショウジョウコウカンチョウ属）：ショウジョウコウカンチョウなど、科の名前の由来となった属。
Caryothraustes属（キミドリイカル属）：キミドリイカル類。
Parkerthraustes属：キガタイカル（Parkerthraustes）1種。
Rhodothraupis属：クロアカイカル（Rhodothraupis celaeno）1種。
Periporphyrus属：ズグロアカイカル（Periporphyrus erythromelas）1種。
Amaurospiza属（シコンコメワリ属）：シコンコメワリ類。
Saltator属（マミジロイカル属）：ズグロイカルなど多くの種を含みますが、この属は分類体系によってはフウキンチョウ科とされるなど、分類上の位置づけが流動的です。
Cyanoloxia属：ソライロノジコ（Cyanoloxia glaucocaerulea）1種。
Cyanocompsa属：クロルリノジコ類。
Passerina属（ルリノジコ属）：ルリノジコ、ゴシキノジコなど、美しいノジコ類。

ショウジョウコウカンチョウ科は、南北アメリカの熱帯を中心とする地域に分布する、色彩豊かな鳥類を含むグループです。その分類は歴史的にも近年の分子系統研究によっても常に変化しており、流動的な側面を持つ興味深い科と言えます。

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