シリブカガシ

シリブカガシ（尻深樫）

シリブカガシ（学名: Lithocarpus glaber）は、ブナ科マテバシイ属に分類される常緑高木です。日本では、同じ属のマテバシイと共に自生しています。和名の由来は、ドングリの底部分が凹んでいる形状からきており、「カーム」と呼ばれることもあります。

形態・生態

シリブカガシは、高さ10～15メートルに成長する常緑性の高木です。幹は直立し、枝分かれします。樹皮は灰褐色で滑らかで、若枝には短毛が密生しています。

葉は長さ8～15センチ[[メートル]]の長楕円形で、先端が鋭く尖っています。革質で厚みがあり、葉の縁は全縁ですが、上部に浅い鋸歯が見られることもあります。葉の表面は光沢のある緑色から濃緑色で、裏面は淡緑色で金または銀色の光沢を持つ鱗状の毛が密生しています。葉脈は6～8対です。葉の形や質感は、アカガシによく似ています。

雌雄同株で、9～10月頃に開花します。枝先や葉腋から、長さ5～10センチ[[メートル]]の淡黄色の雌雄の花穂を斜め上向きに出します。虫媒花であり、強い香りを放ちます。雄花序は長さ5～9センチ[[メートル]]で、黄褐色の短毛が密生しており、苞腋に3つずつ雄花が付きます。雌花序も長さ5～9センチ[[メートル]]で、円柱形の花柱が3つあります。

果実は翌年の秋に実ります。楕円形のドングリは濃褐色に熟して落下します。ドングリの長さは1.5～2.5センチ[[メートル]]で、下部20～30％は殻斗に覆われています。ドングリの表面には蝋状の物質が付着しており、磨くと漆器のような光沢が現れます。地面に落ちたドングリが発芽するのは、翌年の春になってからです。

分布

シリブカガシは、暖帯性の樹木で、本州（近畿地方以西）、四国、九州、沖縄の比較的海岸に近い標高500メートル以下の地域に分布しています。京都府の保津峡が分布の北限とされています。近畿地方での個体数は少ないです。日本国外では、中国南東部や台湾にも分布しています。日本では、マテバシイよりもさらに南の地域に分布します。

マテバシイ属の樹木は、世界全体で100種以上が知られていますが、日本に自生しているのはシリブカガシとマテバシイの2種のみです。これらの樹木は、主に東南アジアの熱帯・亜[[熱帯]]の山地に分布しています。シリブカガシとマテバシイは、マテバシイ属の中で最も北に進出した種の一つであり、日本のブナ科植物の中では寒さに弱い方です。

用途

シリブカガシは、街路樹、公園樹、庭木として利用されています。木材は堅く、建築材や器具材に使われます。中国では農具にも利用されています。果実であるドングリは、渋味が少ないため、渋抜きなしで炒って食べることができます。

類似種

シリブカガシは、同属のマテバシイとは葉の形が大きく異なります。マテバシイは葉が細長く、葉縁が滑らかです。シリブカガシは、コナラ属のアカガシに似ていますが、葉の長さがやや短いです。果実が付いていれば容易に区別できます。日本のブナ科植物は春から初夏に開花するものが多い中、シリブカガシは秋に開花するという特徴があります。

脚注

参考文献

茂木透, 勝山輝男, 太田和夫, 崎尾均, 高橋秀男, 石井英美, 城川四郎, 中川重年 (2003). 『樹に咲く花』 離弁花1. 山と渓谷社.
岡山理科大学 総合情報学部 生物地球システム学科 植物生態研究室「シリブカガシ」
Manos, P.S., Zhou, Z.K., & Cannon, C.H. (2001). Systematics of Fagaceae: Phylogenetic Tests of Reproductive Trait Evolution. Int. J. Plant Sci., 162(6), 1361–1379.
Flora of China. Lithocarpus glaber.
米倉浩司・梶田忠 (2003-). “BG Plants 和名−学名インデックス（YList）”

関連項目

マテバシイ
アラカシ
ブナ科
* ドングリ

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