シロアジサシ

シロアジサシ

シロアジサシ（白鯵刺、学名：Gygis alba）は、チドリ目カモメ科に分類される鳥類の一種で、その名の通り全身が純白の美しい海鳥です。熱帯・亜熱帯の島々で繁殖し、非繁殖期は外洋で生活を送ります。

形態

体長は約28cmで、雌雄同色です。成鳥は全身が白色で、まるで雪の妖精のような姿をしています。しかし、よく見ると、つぶらな瞳の先に小さな黒い斑点があり、これが可愛らしさを引き立てています。また、黒色の嘴は基部が青みを帯びており、白とのコントラストが印象的です。

幼鳥は、後頭部や背中、翼に茶褐色の斑が見られ、耳羽には黒い斑点があります。この斑模様は成長とともに消えていき、やがて純白の美しい成鳥へと姿を変えます。

分布

シロアジサシは、インド洋、太平洋、大西洋の熱帯・亜熱帯に位置する島嶼で繁殖します。非繁殖期には、繁殖地の周辺海域で生活します。

日本へは、ごく稀に迷鳥として小笠原諸島や南西諸島に渡来することがあります。また、台風などの影響で、北海道や本州に迷い込んだ個体の記録も残っています。かつては南鳥島で繁殖していた記録もありますが、近年は確認されていません。

生態

シロアジサシは、非繁殖期には外洋上で単独または少数の群れで生活することが多いです。巧みな飛翔能力を持ち、海面を滑るように飛びながら魚やイカなどを捕食します。

繁殖期になると、集団でコロニーを形成します。他のカモメ類のように岩場や地面に営巣することもありますが、シロアジサシの最大の特徴は、海岸近くの木の横枝に直接卵を産み付けることです。器用にバランスを取りながら、木の枝にちょこんと座って子育てをする姿は、なんとも微笑ましいものです。

通常、1腹1個の卵を産みます。卵は白色で、表面に褐色の斑点があります。抱卵期間は約30〜32日間で、雌雄交代で行います。ヒナは孵化後約2ヶ月で巣立ちます。

シロアジサシは、警戒心が強い鳥ですが、繁殖地では比較的観察しやすいです。樹上で休憩している姿や、空中を優雅に舞う姿を観察することができます。

シロアジサシは、美しい姿と独特な生態を持つ魅力的な海鳥です。いつか日本の空で、その白い姿を見られる日が来ることを願っています。

参考文献

『日本の鳥　550　水辺の鳥』、文一総合出版
真木広造他　『日本の野鳥590』　平凡社
マイケル・ウォルターズ著、山岸哲監修、『世界「鳥の卵」図鑑』、新樹社、2006年、116頁

関連項目

日本の野鳥一覧
* 迷鳥

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